私は日本でもかなり珍しい医師としての経歴を持っています(月間血圧 2018年9月号のインタヴューでも答えています) 現在医師国家試験に合格すれば、マッチングシステムという、まずは医局に入らずに、自分で研修したい病院を選ぶことになります。 私のころはこのシムテムがない時代で、ほとんどの学生が医局に属する、という選択をしていましたが、優秀な親友がいろんな病院を回って、一番いいところで厳しく勉強したい、と言っているのに感化されました。 結局「京都第一赤十字病院」に入り研修することに。 そのままその病院で消化器内科か循環器内科で就職するつもりが、家の診療所の都合で半年間だけ帰ることになりましたが、なかなか私以外の医師がみつからず、2年以上も福田心臓・消化器内科とハートフル・クリニック(四国で初めての往診専門の診療所、今は福田内科と一緒になっています)で勤務しながら、実は同期や後輩がどんどんと成長するのを電話で聞いて焦っていました。 しかしこの経験が大きかったのです。 最前線で働いているのは実は開業医でもあり、開業医が困るポイントが分かりました。 どんな2代目の医師でも大きな病院を回って、最終的に実家に帰る、という手段をとりますが、私はその逆だったのです。 4年目になり、「医局」に入ろう、と思ったのは、「専門医」が重要視されていた時代でしたが、当時から「どうせ意味のない専門医制度にそのうちなる」と思っていたらまさにその通りでした。 専門医は患者さんを信用(時にはごまかす)させるだけのもの、また維持には点数がいるので、学会運営費になっているだけ、でした。 そこで「医学博士」という称号は決して消えない信用できるもの、だと思い、徳島大学の第二内科に入局をしました(実際は医学博士の中でも、自分で論文を書かなくても大学院に入ればなれることを知って(卑怯なやり方です)愕然としましたが、、、) 高知大学ではなく、徳島大学を選んだ理由は2つあり、当時の第二内科は47都道府県で唯一循環器と消化器が一緒になっている医局だからで、自分にあっている、というのと、今はだいぶ変わりましたが、循環器のジッツ(支配下病院)が、徳島大学と岡山大学が高知市内、市外が高知大学、という構図だったことです。 結局私は高知の大病院で働かずに開業することになりましたが、1年間だけ顔見せする働き方は小狡い感じがして嫌でした。

さて、大学の医局に入り、非常に細かなことが求められるようになりました。 結果はもちろんプロセス重視。 毎週の教授回診(その前の3時間くらいかかるプレゼンテーション)だけでなく、数チームある中でのミィーテングが厳しかったです。 木曜日に教授回診があるので、水曜日(もう木曜日になりますが)26時まで病院に残っていました。 この過程が苦しかったのですが、本当の大学病院での人を治すための仕組みがわかりました。

その後、2年毎に各地のジッツをまわるわけですが、私のオーベン(直属の上司)が務めていた、現:四国こどもとおとなの医療センターに行くことになりました。 4つ候補があったのですが、決め手は「循環器のすべてのスペシャリストがいること」「内科枠で最初はスタートすること」「徳島大学と共同研究をする架け橋の役割に任命されたこと」「臨床研究部があること」でした。 その選択は間違っていませんでした。 開業医の気持ちがわかる医師として大学病院、最終拠点病院で働いていると、開業医の先生の気持ちも分かるし、自分が開業したときにどんなことが出来るか、を逆算して研修しました。 2年間ではなく、循環器内科に昇格し、心臓リハビリテーションセンター長にもなり、臨床研究を、病院、大学病院、自分で組み立てた研究のすべてが、日本循環器学会の口述(当時はかなり厳しく、3割弱(口述だともっと低いと思います)通る)のが、3つとも採択され、忙しかったです。 私が指導、心エコーを撮ったものを、技師さんに指導して、心エコー図学会では、優秀賞もとりました。
結局、私自身も勉強になる、ということや、病院にとって「あらゆる面で使いやすい言うことを聞く」医師だったので、5年間働くことになりました。 大学病院から数えて7年弱は、バスタブに浸かったことはありません。 シャワーでPHS、携帯が聞こえるように半開きにしていました。 50歳で何の目標も持たず、医療をしているだけの医師よりも、30代でしたが、医療技術も優れていた面もあったと思います。

医師は、記憶力、つまり学歴社会でなることができます。 しかし、その後も同じような勉強法では全く意味はありません。 私は「判断力」を鍛えることを、今も重要視しています。 そのために生涯勉強が必要なのです。

 

私は今まで私だけが執筆した医学専門書を医学出版社が売る、とう形態で、2冊だしています。 2013年と2015年です。 自分自身はある程度予測はしていましたが、実際に驚いているのは、未だに生き残って出版社が絶版としてないこと、です。 1冊の本を書いて出版までかかる時間は私の場合2年です。 3.11の未曾有の大震災時、私の大学時代の友人、後輩が東北地方にいたことや実際に震災と直面していることから、なにが出来るか? と思ったことと、自分自身の考えをまとめてみたい、と思った2つの思いで出版に漕ぎ着けました。 未だに売ってくださっているのは、「日本のグラフィック・メディスンの走り」かもしれない、という再評価だけでなはく、自分が書いたにもよらず、自分で読み返すと、「間違いがないこと」、「なるほど」と思ってしまう全く新しい勉強法が書かれているからかな、と自画自賛してしまいます。

今年の8月に違う会社からまた本が出る予定ですが、この本を書くのに、お話をいただいてから3年かかることになりそうです。 私が出す本は、医学書であれなんであれ、推理小説調で、恋愛要素が入り、犯人当てや、観光しているかのような感覚におちいるように書くようにしています。 そのため時間が非常にかかってしまいます。

ただ、なによりも本を書いていて思うのが、「相当勉強しないとな」ということです。 「間違いがないこと」は当たり前で、「新しい発見」がないと、売れないから、です。 今回もすべて本の売り上げは寄付とさせていただくつもりですが、それも自分に課したルールです。 一つのことばかり考えないと、本など絶対に出版できない、と自分自身では思っています。 なんでも出来てしまう人、がたまにいると思いますが、そういった人こそ勉強しているのを隠している、と思っています(稀に本当の天才、がいますが) それを本にすると、自分の考えがバレてしまう、ということもあると思うのですが、34歳の当時は、自分のように医者になるのがゴールで、医者になったらその仕事の大変さに驚愕した、という人が読んだら、より質の高い医療への近道になるだろうな、とできるだけ基本中の基本から書いたつもりです。

次回の本は第1章がまるまる、「あいさつ」の重要性だけ書いています。 心エコー検査をする前の挨拶の重要性などを書いています。 私自身が教わってきて、そういうことを教える医師がすごい! と感心したからです。 技術だけを教えるのではなく、医療人としての心構えが重要だと思ったことを書きたい、と思ったことでした。

「風邪症状で来院された場合が一番難しい」ということを教えられて来ました。

もちろんその場で隠れている病気を見つけ出すことは難しく、経過を見ることも必要です。

つまり、風邪(感冒)と「決めつけ」ることがまずは前段階として間違っているのです。

さらに、抗生物質(抗菌薬)をださないことが前提、という誘導的な考え方にさせる、治療のフローチャートが「謎」です。 その中に、肺の音を聴く、という内容がないのです。 つまり聴診しない医師がつくったものか、聴診は意味がない、という根拠があって(ないと思いますが)作られたもの、です。

実は抗生剤を使わないようにする国の方針は、他国からの圧力で、政府がやっと重い腰を上げて作ったもの、です。 なので、あまり良いものではない、と思っています。 実際に学会でも、意見が真っ二つに分かれます。

「不適切な抗菌薬の使用は控えよう」は当たり前ですが、どうも、「抗菌薬をださないことが前提」として、ガイドラインが作られています。

私はそのガイドラインは練って練って作られたものとはとても思えないので、そのガイドライン通りが正しいともおもいませんので、ガイドラインの「先入観」にとらわれず、逆転の発想で物事を考えています。

感冒症状で来られた方に、具体的に「○日後に良くなってなければ再診して採血、レントゲンが必要かもしれません」という一言は重要です。

さらに、逆転の発想とは、極論(感染症だとして)「抗菌薬をだすことを前提」として、根拠が揃えば、ださない、とした方が、医師も勉強するでしょうし、なにより大事な、「適切な時期に、適切な抗菌薬を遅れずに処方すること」に繋がると思います。

90%がウイルス性だから抗菌薬は必要ない、の根拠も不明ですが、逆にいえば、10人に一人、感冒症状で来られた方は細菌性ともとれます。 基礎疾患の有無にも注意が必要ですが、あまり重要視されてないのが現在のガイドラインです。

英国でインフルエンザウイルスに感染、もしくはライノウイルスをはじめとする一般的な感冒を引き起こすウイルスの同時感染は少ないことが報告されました(Nickbakhsh S, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019 Dec 16.

ただ論文では機序までは不明としており、考察では「ウイルスも人体で生きていく以上、栄養源をとりあう可能性がある」とされています。

ただこれは以前から言われていたことであり、機序がわからないと、本当かどうか不明であるし、感冒中ならインフルエンザにかからないということではありません。

本日は新年になって初めての診療となりました。 予約を制限していたのですが、緊急の方がこられ、予約していたにもよらず、お待たせして本当にすいませんでした。

今年の検討課題とさせていただきます。

※ただ、仕事をしていて土曜日しかこれない方が予約をせず来院されることが多いことや(当院は予約なしでも自由に来院できるようにしています。 予約優先、は必ず守っていますので、予約の方は早く呼ばせていただきます。また予約外の方は先にきたのに後から呼ばれた、ということが大変申し訳ありませんがあります)、緊急の方は土曜日に多いことなどから、「待たせない」ということは難しい問題、課題です。

抗生剤は普段使われるものでは主に、β-ラクタム系(ペニシリンやセフェム系:サワシリン、フロモックス)、マクロライド系(クラリス、ジスロマック)、キノロン系(クラビット、グレースビット)がある。 他にもあるがここでは割愛させてもらいます。 ホスミシンは割愛した抗生剤とも、上記3種類にも、どこにも属さない抗生物質で、その歴史は長いのですが、耐性菌ができにくく、抗生剤だけの作用ではない多面的な効果があります。

主に腸炎で使うことが多いのですが、腸管内では嫌気(酸素が少ない)状態であり、細菌が耐性を作りにくいことがあげられ、また、β-ラクタムと構造が似ており、ヒトと菌へ作用する選択制が非常に高く、安全性も高いのです。

またIL-2(インターロイキン2)をはじめとする体に悪い物質を抑え、白血球の役割を強め、炎症反応そのものを抑える作用が認められています。 そういったことから、ホスミシンを点滴(もしくは内服)して、その後に違う抗生物質を投与する方法もあります。 ホスミシンの時間差攻撃とは、1度ホスミシンを投薬していれば、細菌の殺菌作用があるだけでなく、増殖を抑え、炎症反応を抑えることができるので、ある種の病気や細菌以外では長期に使わなくてもその効果が発揮できます。

実は抗アレルギー作用もあるくらいであり、薬疹などの副作用もでにくいのです。

腸炎がひどい時は、ホスミシンの点滴をすることは理にかなっていますが、ケース・バイ・ケースです。

腸炎の原因や、よりひどい時は入院して違う薬の方がいい場合もあります。 ただ最初にホスミシンの点滴をしていても、それが他の抗生剤の邪魔をすることはありません。