昨年ごろより言われてきたことであるが、Lancet誌がいろんな報告をまとめたreview(論文をまとめたもの)をだしました。 日本ではなぜか、あたかも治療がある、かのように言う方もおられますが、「病態が良くなる対症療法がある」というのが間違いがないと思っています。
今までは、アミロイド蛋白が脳の中で増えることによって、老人斑というものを形成し、それが脳神経細胞の一塊である、ニューロン、を破壊していると考えられていました。 私もそういう風に習いました。 しかし、アルツハイマー病の患者さんに前向きな気持ちになれる音楽、運動、介護をすることで、患者さんの欲求不満や不安を減らすことはできても、病気の進行は止められない、とされています。

動物実験ができないことが病気の解明に遅れている、とされてもいるようです。 現在、薬剤としては、神経を保護したり、脳内で減っているアセチルコリンを増やす薬しか認可が降りていません。 私が留学から帰ってきた時に「画期的な薬ができるかもしれない! 脳内のアミロイド蛋白を減らすことができる注射薬だ」という論文をみましたが「失敗」という結果で、患者さんは、病気を遅らせる可能性があるかもしれない薬を飲んでいる状態です(ちなみに日本が最多だそうです) さて一番今注目を集めているのが、ウイルス(しかもヘルペスウイルス(といってもいろんな種類があり、そのなかの2種類))が、以前から言われていた、脳内の神経のつがなりを絡ませるタウ蛋白を炎症によって作らせる、という説です。 アミロイド説が間違っているわけではなく、良い報告もあり、効果はあまりないという報告もあります。 つまり、アミロイドを減らし(これはもうできている)、タウ蛋白も減らし、脳の中の炎症をとり、さらにウイルス薬を混ぜた薬がいいということだそうです。 しかし、Lance誌のreviewの中で報告している、NEJMという雑誌の昨年の報告では、発症するかなり前の段階から、何かしら脳に障害を受けている可能性が高い、とも書かれています。
つまり薬ができても、いつ投与されれば良いのかの検証もできていない状態です(もっと言えば薬もできていません)
よって私は、非常に効果がある方もいます(実際脳内のアセチルコリンが少なくなっているのは確かなので)ので、内服のアリセプトか貼るイクセロンパッチ(=リバスタッチパッチ)を使い分けるようにしています。 1日2回内服のレミニールは神経保護作用がある、とされていますが、否定的な論文を散見するため、効果が実感できる2種類をメインで使用していますが、患者さんが薬はちょっと、という方には無理に進めていません。 ただ、悪くなるようならご家族にも言って、「決め手となる、野球でいうとストッパーのような薬ができるまで、中継ぎピッチャーのような感覚で内服してみてもいいでしょう」と言っています。 運動や音楽、趣味を作ることは非常に大事ですが、病気の進行は遅らせてくれません。 不安感がなくなるので、「良くなったかのように見えるだけ」、というのが現在の見解です。
もちろん、甲状腺のこと、脳の器質的な疾患の除外、ホルモンバランス、うつ状態、などを除外しないと病気として扱うことはしてはいけません。 10年以上も精神科で統合失調症と言われた方が、四国こどもとおとなの医療センターで、検査を先輩の内科医師がしたところ、月経時にともなう脳の障害であり、ステロイドをのむことで、全く症状がなくなった、シーハン症候群などを目の当たりにしているからです。

県や市町村は、ことことを踏まえ、認知症に対する考え方を改め、介護の力が必要なのはわかっていることであり、病気の進行を遅らせないとしても、普段の対処療法になると考え、介護度を上げるようにするべきでしょう。 もっと言えば、要支援にするような人はすでに、認知症がかなり進んでいる、と論文をみると考えるべきで、要介護にするべきでしょう。 一度論文を見て診たら良いと思うのですがそんなことをする役人をしりません。 役所仕事と悪い意味で言われても仕方ない、税金泥棒の方がいるのも事実なのです。

6月も終わりですね。 JAMA (Journal of the American Medical Association:米国医師会が出版する権威ある医学雑誌)に、アスピリンは今まで当たり前のように飲むのが当然、となっていたが、こと明らかな病気をまだ発症していない人などについては、慎重に決めることが今後重要になってくるだろう、という論文を出しました。 内容はやや複雑になるので割愛しますが、簡単にいうと、患者さんのメリット・デメリット(出血)と、忍容性(飲むことが可能かどうか)などを考えること、また今後の疫学研究が大事ということです。

ただ、絶対に飲まないと、心筋梗塞や脳梗塞を起こす(すでに知らない間に起こしている場合もある)方は飲んだ方がいいでしょう。 次に発症するときは、命に関わるからです。

医師がしている仕事は、理系だけでなく、文系の能力も必要です。 飛び抜けた医師はどちらかが、もしくは理系が飛び抜けて文系はそこそこ、という3パターンです。

まぁまずは理系の能力がないと、医師にはなれないし、なっては駄目だとも思います。

私が一番嫌なのは、理系の能力がほぼないのに、世渡りだけで世の中のためになってない医師がいること、です。
四国の医療は10年遅れていると言われることがありますが(実際に国内留学で四国に来る医師は非常に少ない)、私は働いた病院でどれだけ考えて働いたか、良い上司(戦友)に巡り会えたか、自分の目標を明確にしているか、が分かっていれば、四国内でも全く問題はありません。

※ただ、私が研修をしていた京都第一日赤の救急外来の作りは非常に良くできていて、それが今の高知の建物では見たことがないのも事実です。 基本的な考えが違うのかもしれません。 周囲の厳しい環境、患者さんの肥えた目など、一流病院で働くことは重要です。 その辺の適当な病院でダラダラするなら、開業して自分で勉強した方が世の中のためになるのも事実です。 ちなみに、ダラダラしていた医師が開業する理由は本当にくだらないもので、必要とされてないだけ、の一点です。 つまり追い出され開業というわけです。

全てのスポーツの中で唯一審判がいないのが「ゴルフ」です。 自分に厳しくないと駄目、ということで、医師向きです。 勝負する相手は「地球」ということもみりょくですよね。 私は留学中やその前後にしていたこともありますが、上手でないのでしませんが、スポーツ全般において、自分との勝負と思ってしまうとその時点で負けが決定すると思っています。 あくまで「自分は味方」です。 自分との勝負といっている時点で楽な方向に向かっているように感じるからです。

ゴルフが趣味だけど、心臓病を持っているから、といってしない方もいますが、ゴルフは途中で飲むビールをやめ(ひかえ)、水分をとれば、非常にいい心臓リハビリにもなります。 どのくらいしたらいいか、を決めるのが、心リハです。 例えば、ハーフに今はしてください。 移動はカートにしていください、脈を測定しながらプレーしてください、など具体的なことが言えます。

そのためにゴルフを経験した(これからもするつもりですが、やや時間がありません)のです(留学中は18ホール回るのに1500円(日本だと1万円以上かかりますよね)だったので、結構色んなところにいっていました。

私たちは、相手の立場に立って物事を考えるように、と教えられて来たと思います。

それも正しいけども、人によっては基準も違うでしょう。

私は3つの原則に基づいて行動することにしています。

自分の中で正義なのかどうか。 現時点か少し未来での社会で最適かどうか、相手の立場にたつ

の順番です。 なので、心臓リハビリテーション学会が作った、訳のわからない「医者が最初にみて、最後にみる」のが望ましい、は無視しています(高知県で唯一の学会の評議員医師なのに、です)。 自分はリハビリテーション中に診るのが一番良い、と思っていますし、安全だと思っています(ちなみに学会は、リハビリ中はどんな大きな建物でも医者が建物内にいれば行って良い、としています) 治療においても現時点ではもちろん、少し先を見据えた治療を心がけ、温故知新も忘れずに治療すると、抜けがなくなる、と思っています。

医療の現場において相手の立場に立つ、というのは説明が上手かどうか、メリットばかりを話してないか、デメリットを話したうえで、それを大きく超えるメリットを提示でき、その上で、患者さんの意思を尊重しています。 私がいくら胃のバリウム検査は全く意味がない、と言ったところで、患者さんが意味がある、と思って入れば胃カメラはしないほうがいいでしょう。 ただ、胃カメラで超早期の食道がんを先月指摘でき、癌がなかったことにできる治療が受けれる人がいるのも事実です。 最初から「うちは循環器だから、検診は自分でしてね」は私の中の正義ではありません。 なので、当初消化器内科医だった経験でずっと胃カメラ(大腸カメラも)、腹部エコー(これも私が考えた膵臓の尾部を診る方法が最新のエコーの一種ではなんと取り入れられています。 私は7年以上前からこのことをマニュアルでしていました。

押し付けがましい文章になってしまいましたが、私の「現時点」での行動原則です。 医療以外でもなにかしら、自分の行動原則を持つことは、誰かの影響、書物を読み漁る、経験、で身につけることができると思っています。