心臓・血管の疾患

心不全治療における腎機能とのジレンマ

ジレンマがδί-λημμαというギリシャ語由来というのを徳島大学の先輩の講演から聞きました。 ちなみに、トリレンマ、テトラレンマ、ペンタレンマ という、言葉もあります。 ジ、が2つを表し、レンマ、が葛藤(どっちを選択しても悪い)という意味です。

さて、究極的にいうと、心臓は水が少ない方がいい、がその他の臓器は水が多い方がいい、という仮定をすると、心臓内や肺に水が溜まる「うっ血性心不全」では、利尿剤を使用し、体から水を引く、のですが、特に腎臓は水を欲しがる臓器なので、腎機能が悪くなることがあります。

とくに、一度心不全を起こすと、そのたびに心臓だけでなく、腎臓の機能も悪くなるため、治療がどんどん難しくなっていきます。 私はこれを、「心不全治療における腎機能とのジレンマ」と考えながら、最も適した治療を、心エコーを用いて決定しています。 ときに採血で腎機能を見ながら治療します。

さて、上記のジレンマだけでないのが、現代社会です。 患者様の生活状況、認知症の有無、介護者の疲れ、などがあり、まさにペンタレンマ状態になっている例が少なくありません。

6/8日、日本循環器学会で、循環器クリニックの開業医の代表で、このような問題について、多職種とディスカッションをして、さらに私の考えをスライドで講演することになっています。

大きな病院では、ジレンマですみ、その他のことは治療が終われば転院ということもあり、テトラレンマは開業医が考え、さらに得意分野でなくてはいけない、と思っています。