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内科医と外科医の違い〜内科医の頭の中では〜

手塚治虫氏の「ブラック・ジャック」は非常に面白い漫画です。 医療漫画やドラマはだいたいが、外科医が主人公です。 例外として、海外の「Dr. HOUSE」が内科医として、専門が恐らく、感染症だと思いますが、画像診断などにも全てに精通した内科医のドラマです。 私にCTの読影を教えてくださった放射線科医はこのドラマを英語で聞いて、一旦止めて、自分で答えを考えていたという医師の中でもそこまではしないだろう、というツワモノでした(私は、通しで観てました笑 ただ非常に面白く、医者じゃないと楽しめないんじゃないのかな? というくらい裏付けが取れていました)
さて、皆様は外科医が主体の漫画やドラマ、映画の媒体を通して医師像が出来上がっていると思います。 そんな外科医の漫画の中でも語られているのが「外科は診断が決まった後の技術が勝負だが、内科医は難しい診断をして、時には診断がつかずに治療をすることもある」と描かれていました、これは的を得ています、監修した外科の偉い先生は内科のことにもかなり精通しているし、内科を軽んじてない、と感じた次第でした。 「神の手」は重要だと思いますが、まずは診断が大事だと思います。
そこで、内科医として、一町医者になった私と、医療センターや大学病院で働いていた昔の私では、診断方法が大分違うのですが、ここで内科医のお仕事を書こうと思います。
まずは、共通してるのは、コモン(common)な病気は同じ(風邪などですね)です(しかし私はインフルエンザはキットも使いますが、喉の奥の所見を重要視しています)。 少し診断に難しいのはキーワードですぐに診断がつくことがあります。 胸痛、心電図異常、片足の腫れ、心エコーで右心室の異常は、肺塞栓、というわけです。 ここでは内科医の「知っているか知ってないか」が問われる事が多い所です。「掌蹠膿疱症」などは、胸痛、手のひらと得意的なレントゲンで一発診断がつきますが、知らない医師だと、狭心症などを疑ってしまう事でしょう。 さらに難しくなってくると、「診断的治療」なども行う事があります。 まずはお薬を点滴、または内服してもらって、効果があればその薬が効く病気、というわけです。 「ニトロペン」という薬を胸が痛い時に舌下してもらってすぐに効果があるようだと狭心症の診断が強く疑われる、というものです。
では、それでも診断がつかない場合は? 私が教えられたのが「診断学」の本を開いて、症状から出てくる疾患を、一つずつ消して行く方法、つまり消去法で診断していく方法です。 これは大きな病院で行われることも多い診断方法です。 私は大きな病院で、救急ではこの方法は良くない場合がある、と思っています。 大前提で、「症状」が間違っていて、最初っから消す対象に本当の病名が入ってないとき、この消去法は全く意味をなしません。
じゃあどうするか。 私の方法は3通りでした。 1つ目は、検査を疑い、経過をみること。 入院時に腹部CTをした時は問題ないと判断されても、1週間後の腹部エコー検査では脾臓に異常があり、「脾膿瘍(脾臓にバイ菌が住み着く)」と診断出来ました。 遡って入院時のCT検査をみてみると、本当に僅かですが、脾膿瘍が育つ前段階の病変がありました(後医は名医、という諺があり、後からみる医者ほど、経過をみれるので名医になる、という医者を戒める諺です(後からなら、なんとでも言えるので)この時点では診断をつけるのは絶対に無理、という訳です) 2つ目は、前医でつけられた病名を一旦はずして考える事、です。 開業医で胃腸炎と言われて救急に来た患者さん。 普段は高血圧で診られていましたが、あまり血圧のコントロールも上手くいってない。 確かに下痢もしているのですが、腹部エコーをすると「大動脈瘤の切迫破裂」で、緊急手術になりました(助かりました。ただこれも開業医の先生を責める事は出来ません。 もし、同じ時間に開業医の先生が大病院にいて、腹部エコーが出来る先生なら「あれっ、胃腸炎じゃないのかな’」で診断はついただでしょうから) 3つ目は、患者さんやご家族の症状をもう一度洗い直す、聞き直すことです。 「庭でおじいちゃんが炎天下のなか転倒した。 数日前から下痢をしていた。 倒れる前から動きが鈍かった」 という救急患者さん。 劇症型ギランバレー症候群まで考え、髄液を採取したりしましたが、どうもちがう。 そこで救急外来で再度詳しく訪ねると、「そういえば、フラフラして倒れたときに頭から倒れた」という新たな情報があり、急いで首のMRIをとると、脊髄損傷でした。 すぐに手術できたのですが、残念ながら完治は出来なかった症例です。
長文になってしまいましたが、私の今の内科の診断方法は上記のような流れです。 症状を聞いて、思いつく疾患を頭に全て詰め込み、絞っていく作業を毎日しています。 違和感を感じる場合、上記の考え方で、漏れがないように診断していきますが、大病院で大きな検査も出来ない場合は、ある程度の絞り込みをして適切な病院に紹介するようにさせていただいています。 緊急の場合はその日に紹介するようにしています。 患者さん第一なので、遅れがあってはいけないので、開業医としてはその点を一番に気をつけて診療しています。