原発性胆汁性胆管炎(PBC)について
原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis:PBC)は、中年以降の女性に多い自己免疫性肝疾患です。小葉間胆管が慢性的に破壊され、胆汁の流れが障害されることにより、肝内胆汁うっ滞から徐々に肝硬変へと進行します。
遺伝と環境因子
PBCはメンデル遺伝(必ず親から子へ受け継がれる形式の遺伝)ではありません。ただし「なりやすい体質」が遺伝的に関与しており、家族内発症や一卵性双生児での一致率の高さが報告されています。発症には環境因子(喫煙、感染、化学物質など)が関わると考えられていますが、はっきりとした原因は不明です。
診断
診断の決め手は**抗ミトコンドリア抗体(AMA)**です。肝機能検査ではALPやγ-GTPの上昇が特徴的ですが、症状が乏しいため健診で偶然発見される例も少なくありません。AMAを測定しなければ診断に至らないこともあり、医師の気づきが重要です。そのため当院では肝障害の場合に必ず抗ミトコンドリア抗体の測定を念頭に起き、説明をさせてもらっています。
経過観察
病態の進行や合併症を早期に把握するため、半年ごとの採血と腹部エコー(もしくはCT検査)が推奨されます。採血では肝機能検査に加え、肝がんマーカーや肝硬変関連の検査を組み合わせるとより安心です。
治療
第一選択薬は**ウルソデオキシコール酸(UDCA, ウルソ)**です。多くの患者さんで有効とされ、日本では特に効果が高い印象があります。UDCAで十分な効果が得られない場合には、**オベチコール酸(OCA)**が追加選択肢となります(ただ私の経験上、ウルソが効かない方にまだ出会ったことがありません。日本人にはウルソが効果が強く出る印象です)。
UDCAの作用機序
胆汁酸は脂肪の消化吸収に不可欠な物質ですが、濃度が高すぎると肝細胞や胆管上皮を障害する「毒」として働きます。UDCAは毒性が弱い胆汁酸で、内服により体内の強い胆汁酸を置き換えて濃度を薄め、細胞障害を抑制します。