当院でもすでに使用されている方もおられます。 ボルタレンとジクトルテープの成分は同じで、ジクロフェナクナトリウムです。
主な違いは ボルタレンは内服薬で、ジクトルテープは貼る製剤 ということです。

ボルタレンは当院では使用するとなると、25mg製剤1錠を食後3回で1日量が75mgになります。 ジクトルテープは1日貼って同様の75mgになります。
(両者150mgも可能です。なのでジクトルテープは1日2枚でも問題ありません)

副作用ですが、胃腸障害と腎障害について例えると、

胃腸障害は「スマホの保護フィルム」に例えてみます。

内服薬は直接胃に到達して、スマホの保護フィルムを研磨剤のように剥がしてしまい、スマホ画面に傷をつけるように、胃酸によって粘膜が剥がれた部分に胃潰瘍や胃腸障害の原因になりますが、ジクトルテープだと胃を介さないため、胃の保護フィルムを剥がすことはありません。 内服薬は血液中の濃度が高まる時間帯があるため、胃への血流も悪くなってしまいますが、ジクトルテープはそのような副作用が少ない利点もあります。

腎障害については、「温泉」で例えてみます。
ボルタレンはNASIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs:非ステロイド性抗炎症薬、ロキソニンも同じです)という薬剤です。 温泉で例えると、排水ポンプがキュッとしまってしまい、濾過されにくくなり、老廃物が温泉内に溜まってしまい腎障害が起こりやすくなります。 さらに新たに給湯もされないためより濁ってしまいます。 ジクトルテープは排水ポンプを閉めない濃度なので濾過に問題なく、また外部から温泉が少し入るイメージで濁りがなく、血流(綺麗なお湯)が足されるので、腎障害が起こりにくい、ということになります(わかりにくいかもしれません、申し訳ありません)

最後に内服剤では、胃薬が必要になります。 一緒に内服しないと胃腸障害が起こる報告もあります(Primary gastroduodenal prophylaxis with omeprazole for nonsteroidal anti-inflammatory drug users(1998年の古い論文ですが、ガスターやムコスタよりもNASIDsを内服するときの第一選択となったガイドラインの根拠となった論文です。 これ以外にもガスターやムコスタではなく、PPI(ネキシウム、パリエット)の方がいい、という報告があります))
ちなみに私の調べた範囲では、Vonoprazan(タケキャブ) prevents ulcer recurrence during long-term NSAID therapy: randomized, lansoprazole-controlled non-inferiority and single-blind extension study(2018年)という報告があり、ネキシウム、パリエットとタケキャブはNASIDsと併用して胃腸障害と同様に抑制した、という報告もあります。

完璧に薬ではないものの、痛み止め=内服薬 の イメージが変わってくる時代になってきそうな薬剤です。

わかりにくければ、また当院で聞いてください。

ロトリガは商品名で、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(イコサペンタエン酸)と言うω-3系多価不飽和脂肪酸が合わさった薬剤で、エパデールはEPAのみのω-3系多価不飽和脂肪酸です。 サプリメントとしても一般的に売られていますが、保険が効かない、有効成分が少ない、などで高額になってしまいます。

頸動脈エコーでは、動脈硬化を示す、内膜中膜複合体(血管血液と接するの一番内側の部分の厚さ)を6ヶ月内服することで厚みを減らすことが報告されています(2015年の論文です)。
Does Omega-3 supplementation decrease carotid intima-media thickening in hemodialysis patients?
上記は透析患者さんを対象としており、動脈硬化の進行にとっては不利な対象であるにもよらず、平均0.14mm厚みを減らしています。 つまり頸動脈エコーをするときに内服をしていれば、厚みが増えている、と言うのは検査者の測定の仕方が悪い、可能性が高いと言えます。 当院でも6ヶ月後に測定してみると大体0.1mmは改善しています(ただ元々年齢不相応な厚みであった人が多く、年齢相応まで改善すれば、それが維持できていると言う感じです)

さて、EPAと違ってDHAは心臓にも親和性があり、不整脈を防いだり、心拍数を安定化(心拍数を下げる)させることがわかっています。 ちなみに心臓リハビリテーション中、つまり運動中の心拍数を下げる、報告は2015年に世界で初めて私が論文にしています。 また2018年には運動中でも心室性期外収縮を減らしたことを世界初で発表しています。

どちらがいいか、は患者さんによって違いますが、心臓を専門とする私にとってはEPA単独製剤よりも、DHAも配分されているロトリガを説明した上で処方する機会が多い結果になっています。

※当院のブログは引用厳禁です

現在尿酸を下げるには食事、水分摂取などを改善することが重要ですが、内服薬について私なりに説明したいと思います。

現在、昔からあるフェブリク、と、トピロリック(ウリアデック)が主な薬剤です。 ユリスという薬もありますが、2番手の薬だと考えています(効果を示す場所が違うからです)

どちらも、Xanthine Oxidoreductase(XOR:キサンチンオキシレダクターゼ)という酵素を抑制し、尿酸を下げます。
(酵素とレセプターの違いですが、酵素は家庭なら原材料を変更するミキサー、レセプターは刺激が加わって細胞内に伝える、自動式電子レンジのボタン という感じです)

フェブリクとトピロリックはXORを抑制してプリン体が尿酸に変わるのを防ぐ薬剤です。 大きな違いはフェブリクは1日1回、トピロリックは1日2回という違いです。

これはどちらも血中内で少なくなる時間は同じですが、タンパク質と結合してより長く効果を発揮するのがフェブリクですが、XORに対しての結合はトピロリックの方が強い、という違いがあります。 尿酸を下げる効果はほぼ同じですが、トピロリックは高容量で腎臓からでる蛋白を減らす効果が示されています(Efficacy of topiroxostat on albuminuria in hyperuricemic patients with diabetic nephropathy (ETUDE study): a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. 2014年) また動脈硬化を予防する効果が示されています(基礎研究ではEffects of Xanthine Oxidoreductase Inhibitors on Reactive Oxygen Species Produced In Vitro from Xanthine Oxidase. 2019. と 実際の人間のデータでは、The Effects of Topiroxostat, a Selective Xanthine Oxidoreductase Inhibitor, on Arterial Stiffness in Hyperuricemic Patients with Liver Dysfunction: A Sub-Analysis of the BEYOND-UA Study .2022)
これはフェブリクにはない効果です。 しかしフェブリクは1日一回で24時間後のXORとの結合率がトピロリックよりも高い、という利点があります。

このような違いは、XORに対する両者の結合の違いから生じるものだとされています。 ものすごく噛み砕いて言うと、フェブリクは マグネットシート、トピロリックは強力なステッカー と言う違いです。 24時間経った時に、フェブリクは磁石で緩くくっついているので、少ししか剥がれない。 トピロリックは強力にくっつくけども、剥がれるともう一度張り付きにくい、と言う例えになります。

理論上は尿酸が低く安定している人には動脈硬化予防が証明されているトピロリックがいいとされています(現在のところ1日1回での研究がされていないのですが、逆に1日1回で不利益を被る結果も出ていません。今後1日1回で尿酸が低値安定している場合に動脈硬化予防が理論上ではなく、エビデンスとして確立されることが期待されます)  フェブリクは何せ1日1回で尿酸値を十分下げることができる、と言う飲み忘れなどの煩雑さがないことがいい面です。

すでに1日2回の薬を飲んでいて、動脈硬化が強い患者さんにはトピロリック。 飲み忘れが多い方や尿酸値が高い方には即効性があるフェブリク。 といった使い分けも一つの手段です。

(当院のブログは転用禁止です)

#尿酸 #動脈硬化

私は常々、医師の説明が不十分で患者さんが本当に納得しないまま治療が進むと、思うように成果が出ないと感じてきました。だからこそ、「医学の勉強」は、知識だけでなく、分かりやすい説明をするために日々研鑽を続けています。患者さんが「納得できた」と感じてくださったときには、診療がスムーズに進み、治療の効果も実感しやすい──そんな手応えがあるからです。 逆に自分が治療を受ける側になった時も、説明されずに何をされているのか分からないままだと治療がうまくいかない感じもしています。

この実感を裏付けるエビデンスとして、2015年に発表された『Impact of Shared Decision Making on Patient Outcomes: A Systematic Review』では、患者さん自身が治療の意思決定に参加したと感じられる共有意思決定(SDM:Shared Decision Making)の介入が、治療満足度や自己効力感の向上、服薬遵守や生活習慣の改善、さらに血圧・血糖コントロールなどの臨床指標改善にもつながることが報告されています。

さらに、2023年に報告された『Exploring Critical Components of Physician-Patient Communication』は、医師が患者さんの疑問や不安を適切に聞き出し、専門用語を平易に伝えることで、患者さんの理解度と満足度を著しく高め、セルフマネジメント行動や臨床アウトカム(治療の結果)の向上にも寄与することを示しています。

こうした知見を踏まえ、やはり私は診療に置いては、何よりも患者さんが納得する説明します。説明後には「ここまでで分からないことはありませんか?」と確認し、「次回までに分からなければまた質問してくださいね」と声かけすることも重要だと思っています。 時間がある時には、今現在の私が理解している患者さんの全身の状態を人間の模式図の紙を用意して、どの部分を見ているか、今後どういうふうに治療をしていくのか、などをしていますが、なかなか時間が取れず渡しきれていないのが現状で、今後の課題でもあると思っています。

肺炎球菌ワクチンには、従来のニューモバックスと、近年接種ができるようになったプレベナーの2種類があります。

プレベナーは一回接種すれば再度摂取しなくてもいい、とされていますが、その理由はニューモバックスと違い、強い免疫を作る効果があるからです。

プレベナーについては1回摂取したらもう一度プレベナーを摂取しなくてもいいという報告があります(What is the new recommendation for 13-valent pneumococcal vaccine in elderly adults? 2020年の論文です。この論文ではニューモバックスを摂取していた人は同じくニューモバックスを続けることを推奨しています)

どちらがいいか? これは非常に難しいことですが、強く免疫が作れることから、プレベナーを以前ニューモバックスを摂取していても選択した方がいいように思われますが、様々な報告があるため明確な正解はありません。 私見ですが、プレベナーを摂取し、次(5年後)はニューモバックスを摂取するのが免疫が強くなるのでいいと思われます これは補助金を使って摂取する場合の話になります。