帯状疱疹ワクチンには、(弱毒化)生ワクチンのゾスタバックスと、不活化ワクチン(厳密には組み替えサブユニットワクチンです。季節性のインフルエンザワクチンが不活化ワクチンです)のシングリットの2つがあります。

どちらがいいか? の問いに対する私の意見ですが、シングリット1択です。なので当院ではゾスタバックスは置いていません。

理由としては、「有効性」「持続性」「推奨度(ACPI(米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病対策センター)傘下の 「予防接種実践諮問委員会」(Advisory Committee on Immunization Practices)の略称です)などで第一選択となっています)」の3点があるからです。 デメリットは金額が高め、ということや、間隔をあけて2回打つこと、となります。 以下に表にまとめたものを示します。

生ワクチン 組換えサブユニットワクチン
ゾスタバックス シングリット
接種回数 1回 2回(0ヶ月と2~6ヶ月後)
リアルワールド(市販後の結果) 10年後には 発症リスクは15% 2年後で発症リスクは70%
帯状疱疹発症予防 効果 51%低減 50–59歳で96.6%低減、≥70歳で91.3%低減
PHN(帯状疱疹後神経痛)予防効果 66.5%低減 88.8%低減
持続性 3~4年で効果減弱 4年以上高い有効性が持続(7年までデータあり)
安全性/忍容性 接種部位反応少ない 接種部位疼痛・発熱など反応性高め(70%以上)だが一過性
推奨度 ACIPで「第一選択」

肺炎球菌ワクチンと同日に接種してもいいか? ですが、基本問題はありません。 同じ場所に注射をしないことが前提です。 しかし、やや副反応が強くでる可能性は示唆されています。

同日に2つのワクチンを打つのに抵抗がある場合は1-2週間明けて打つのがいいでしょう。

当院では頸動脈エコーも甲状腺エコーもどちらもしますが、頸動脈エコー時に偶然甲状腺が見え、経過を見た方がいいような場合があります。 エコー機器の設定を変えなければいけないので別の時に甲状腺のエコーをすることになることもあります。

ただ、頸動脈エコー時に見えた甲状腺結節は機器の設定を変えてもサイズは同じだった、という報告もあるため(The significance of incidental thyroid abnormalities identified during carotid duplex ultrasonography, 2005年の論文です)、小さな結節なら次回の頸動脈エコー時に「ついでに」甲状腺も見ておきましょう、ということもあります。

偶然見える確率についても論文が私が調べた範囲では少数ですが複数あり、1%から45%まで幅が大きなものでした。傾向としては多施設(大きな病院が持ち寄ったデータ)の研究や人間DOCでの報告では低め(Prevalence of Thyroid Incidentalomas from 1995 to 2016: A Single-Center, Retrospective Cohort Study, 2019年の論文で0.84%の指摘率)、単施設(1つの病院でした研究結果)では見つかる可能性が高い傾向(The Significance of Incidental Thyroid Abnormalities Identified during Carotid Duplex Ultrasonography, 2005年の論文で9.4%で偶然甲状腺結節が指摘された結果)があります。 この理由についてまとめた報告はありませんでしたが、おそらく大きな病院で血管を見ている検査なので甲状腺までは見ない決まりがあったり、DOCなどでは評価項目に入っていないのでレポートに書く欄がない可能性があると思います。 大体まとめると10-15%で頸動脈エコー時に甲状腺結節が見つかる可能性があるようです(CT検査などはもっと高確率)

頸動脈エコー時では甲状腺結節の大きさは甲状腺エコーと同じ精度、とされていますが、悪精度(癌の疑いがある所見)は大きさだけではないため、頸動脈エコーやCT検査で「偶然」見つかった甲状腺の疾患は甲状腺エコーをした方が良さそうです(偶然見つかった甲状腺結節について経過をみた結果10%未満で組織をとる検査をすることになった、という報告もあるからです)

循環器内科医であれば、心臓や腎臓の保護効果がある、フォシーガ(ただし10mgという高容量)、ジャディアンスを選択し、そして糖尿病があればカナグルも視野に入れて処方というところだと思います。 逆にフォシーガ高容量とジャディアンス以外は循環器内科医としては使いにくい、というわけです。

ただ、フィルムで内服しなくてもいい、ルセフィは皮膚への移行性が他剤と比べて有意に低く、安全に使えるため使用することがあります。

しかしスーグラは皮膚への移行性だけでなく、停滞性が有意に認められ、重篤な粘膜・皮膚障害を起こすことが証明されている報告もあるので、私は使用しません。

薬剤名 調整後ROR(95%CI) 有意性
イプラグリフロジン 1.667 (1.415–1.963) 有意(CI下限 >1)
ダパグリフロジン 0.514 (0.317–0.835) 非有意(CI下限 <1)
トホグリフロジン 0.149 (0.048–0.465) 非有意
ルセオグリフロジン 0.624 (0.331–1.177) 非有意
カナグリフロジン 0.590 (0.277–1.257) 非有意
エンパグリフロジン 0.293 (0.073–1.187) 非有意

Susceptibility to serious skin and subcutaneous tissue disorders and skin tissue distribution of sodium-dependent glucose co-transporter type 2 (SGLT2) inhibitors (2018年の論文です、イプラグリフロジンがスーグラです)

さらに、2018年の論文ですが、24時間後の皮膚停滞率がスーグラだけが有意にあり、他の薬剤では皮膚移行性はあっても停滞はほぼないとされ、ルセフィだけは皮膚移行性すらほぼない、という結果がでています(動物実験ではなく、ヒトでの研究です)
Susceptibility to serious skin and subcutaneous tissue disorders and skin tissue distribution of SGLT2 inhibitors

一般的な健診では、肝臓の数値(GOT(AST))とその正常上限、また血小板の値が記されていることが多いと思います。

APRI(エープリと呼びます)は、AST to Platelet Ratio Index の略で、これを用いて、肝臓の繊維化度合い(肝障害)や、肝硬変になっていないかを自分で健診結果から算出できます。

(APRIは2003年に初めて論文で報告されています(A simple noninvasive index can predict both significant fibrosis and cirrhosis in patients with chronic hepatitis C.)

APRIは自分のASTの値を、その健診のASTの正常上限値で割り算します。 そして血小板数が20となっていれば、200と10倍にして、上記の数値をさらに割り算し、最終的に100を掛けた数値です。

この値が0.5未満なら肝障害(肝臓の繊維化)の可能性は低く、0.5から1.5未満なら肝臓の繊維化(肝障害)が強く示唆されるため、医療機関で追加の検査がを検討するべきで、1.5以上は高度の肝臓繊維化(高度肝障害)や肝硬変の可能性(感度約70%、特異度約80%)が強く示唆されますので医療機関を受診することが必須です。(ちなみに2.0以上は肝硬変の可能性が極めて高い数値です(感度46%、特異度約91%))

P.S(追記) 感度、特異度は聞き慣れない言葉だと思うので、参考にしてください。

感度(Sensitivity)
 病気の人を見逃さずに陽性と判定できる割合。たとえば、100人の病気の方が検査を受けたとき、感度80%の検査なら80人を正しく「陽性」と判断し、20人をうっかり「陰性」としてしまうイメージです。
病気を見逃すリスク(偽陰性)をどれだけ減らせるかを示す指標ということになります。

特異度(Specificity)
 病気でない人を正しく陰性と判定できる割合。
100人の健康な方に検査をした場合、特異度90%の検査なら90人を「陰性」と判断し、10人を誤って「陽性」としてしまうイメージです。
健康な方を誤って病気と判断してしまうリスク(偽陽性)をどれだけ減らせるかを示す指標となります。

私自身は自分の経験から「強い痛みに耐え抜く修行と思うしかない」から麻酔で「寝て起きたら終わっていた」ということからも、麻酔をして大腸カメラをすることを推奨しています。 これは自分の経験からでなく、盲腸までの到達率、ポリープの見逃しにくさが麻酔をして大腸カメラをすることで上昇することも論文として出されています。 なので基本的には麻酔を進めていますが、起きておきたい、車にその日どうしても乗る、などの場合は選択できるようにしています。

私は大腸カメラを福田心臓・消化器内科で火曜日午後にしています。 私以外にも大学病院から久米先生が金曜日午後に来ているので、久米先生は基本的に麻酔をかけないので、そういう選び方もできます。

私は、私自身が考案した患者さんのお腹を介助者(看護師)が押さない方法、でしています。 お腹を押される不快感がない、介助者も押す力が必要なく、また介助者の技量に左右されない、という利点があります。 統計なども取り、従来の方法でしていた頃よりもいい結果がでています。