当院では頸動脈エコーも甲状腺エコーもどちらもしますが、頸動脈エコー時に偶然甲状腺が見え、経過を見た方がいいような場合があります。 エコー機器の設定を変えなければいけないので別の時に甲状腺のエコーをすることになることもあります。
ただ、頸動脈エコー時に見えた甲状腺結節は機器の設定を変えてもサイズは同じだった、という報告もあるため(The significance of incidental thyroid abnormalities identified during carotid duplex ultrasonography, 2005年の論文です)、小さな結節なら次回の頸動脈エコー時に「ついでに」甲状腺も見ておきましょう、ということもあります。
偶然見える確率についても論文が私が調べた範囲では少数ですが複数あり、1%から45%まで幅が大きなものでした。傾向としては多施設(大きな病院が持ち寄ったデータ)の研究や人間DOCでの報告では低め(Prevalence of Thyroid Incidentalomas from 1995 to 2016: A Single-Center, Retrospective Cohort Study, 2019年の論文で0.84%の指摘率)、単施設(1つの病院でした研究結果)では見つかる可能性が高い傾向(The Significance of Incidental Thyroid Abnormalities Identified during Carotid Duplex Ultrasonography, 2005年の論文で9.4%で偶然甲状腺結節が指摘された結果)があります。 この理由についてまとめた報告はありませんでしたが、おそらく大きな病院で血管を見ている検査なので甲状腺までは見ない決まりがあったり、DOCなどでは評価項目に入っていないのでレポートに書く欄がない可能性があると思います。 大体まとめると10-15%で頸動脈エコー時に甲状腺結節が見つかる可能性があるようです(CT検査などはもっと高確率)
頸動脈エコー時では甲状腺結節の大きさは甲状腺エコーと同じ精度、とされていますが、悪精度(癌の疑いがある所見)は大きさだけではないため、頸動脈エコーやCT検査で「偶然」見つかった甲状腺の疾患は甲状腺エコーをした方が良さそうです(偶然見つかった甲状腺結節について経過をみた結果10%未満で組織をとる検査をすることになった、という報告もあるからです)