消化器疾患について

腹痛で最もこわいのは心筋梗塞や血管疾患という認識をもちつつ、腹部の検査をするのが一番です。

実は心臓を栄養する冠動脈という血管は、横隔膜に接していてその血管が詰まると腹痛という症状がでることがあります。 心筋梗塞でも、胸の痛みではないのです。 また、腹部大動脈瘤(人間ドッグ協会での腹部エコーでは大動脈はみない決まりになっているのが問題視されています)の切迫破裂(破裂寸前)、血栓が腸を栄養する太い血管を詰まらせた場合、また細い血管動脈硬化で腸に血液を運べない虚血性腸炎などがあります。 心臓に関しては心電図や、心エコー、その場で15分程度で分かる血液検査での心筋の痛み度合いのキット検査などで心臓疾患を否定し、腹部エコーで動脈と静脈の大きさの比(通常は静脈の方が大きいのですが、血栓で詰まると動脈が大きくなります)をみたり、虚血性腸炎なら血便などで疑います。 そういったことも考えながら、腹痛の検査として、虫垂炎(いわゆる盲腸)や胃潰瘍、腸管破裂(十二指腸潰瘍が最も多く、憩室穿孔、癌による腸の穿孔)を触診やレントゲンでみて、死に直結するものから「除外」していくのが、内科の診療です。

よって、循環器内科が腹痛に弱い、という謂れは、大きな病院では分担制なので、心臓の動脈は大丈夫ですよ、といって立ち去り、あとは消化器内科の医師がみるので、循環器内科医は腹痛を最後まで完結して診断・治療に当たらないので、開業後にも、「大事な心臓は大丈夫ですが、腹痛に関しては、、、紹介します」としか言えない場合もあるかと思います。 もちろんオールラウンダーの医師(私もどちらもみれるようにしています)もいます。

しかし最近はますます分業が研修するはずの大学病院、大きな病院、最終拠点病院ほど自分のテリトリーしか出来ないようになっているのが現状であり、2010年の、日本心エコー図学会総会で、カテーテルと心エコーをする医師のシンポジストとして話した内容は、「若い医師が、心カテだけ、心エコーだけ、にならないような研修システムが大事なので、各病院が工夫するべき」と発言しました。 昔は、心エコーは敷居が腹部エコーより高く、技師さんはとることが少なかったのですが、今は技師さんと限られた医師が心エコーをし、カテーテルをする医師はそのレポートをみるだけ、となっています。 中規模病院ではとんでもない病気に出会うとより高次(大きな)病院にすぐ紹介することになるので、研修ができない、ということになります。

今後の医療における、医師の分業と、誰にもまけない専門性(最低2つ)と、内科全ての診療を研修することは、ますます難しくなってくるでしょう。