病院からのお知らせ

降圧薬について 「きつい」 「きつくない」

最初に断っておきますが、血圧の薬は大きく分けて2つに分けられるなどということは現代において絶対にありません。 様々な機序によって血圧を下げます。 細胞、分子、組織レベルでの降圧薬(血圧を下げる薬)の付加価値(血圧を下げる以外の人体にとって有益な効果)を詳しくしると、2つに分けられるという答えにはならないはずです。

血圧は心拍出量(1分間に心臓が拍出する血液量のことです) × 血管抵抗 で決定されます。

「きつい」というのが、「血圧を下げる力」、を指すなら簡単です。

常識的に日常臨床で使用するなら、「カルシウム拮抗薬(アムロジンなど)」が血管を拡張させる力が強いため「きつい」というか、「より確実な効果」が得られる、となります。 最も「きつくない」のは、尿にNaを排出する「サイアザイド系利尿剤(ナトリックスなど)」や、心拍数を少なくして血圧を下げる「β-blocker(メインテート」です。 中間にARBという「アンジオテンシンII受容体拮抗薬(〇〇サルタン」が入ります。

最初からサイアザイド系利尿薬やβ-blockerを使うことはまずないでしょう。 それは確実性がなく、副作用として、腎機能低下、尿酸高値、Ca高値、喘息の悪化、閉塞性動脈硬化症の悪化(医学生でもしっている副作用です)がありえるからです(全員に出るわけではありませんし頻度は少ないのですが、他の降圧薬に比べて副作用の頻度が高く血液検査などがより重要になってきます)。

心臓・腎保・血管護作用が最も強いARBで血圧が下がれば予後(長生きの度合い)が高くなることが証明されている(Ca拮抗薬でも証明されていますが、ARBには叶いません。ちなみに、高血圧だけを考えると利尿薬はあまり推奨されません)現在において、特別な事情を除いてARBかCa拮抗薬から開始するべきです。 論文を読むだけでなく米国留学時に基礎実験でARBのもつ動脈硬化(心臓を守る動脈や腎動脈も含む全ての動脈)を予防する効果を実際に「見て経験」したからより強くいえます。

「きつい」「きつくない」は副作用や臓器保護作用を考えると、ARBやCa拮抗薬を少量で使用するなどが「効果がありきつくない」と言えます。

ちなみに今後の降圧薬の主役は「エンレスト」という、ARB+サクビトル(心臓病で入院すると1週間は点滴する薬が飲み薬になったもの)になるでしょう。 これは心臓病の入院治療をより重症な患者さんで経験しないと使いこなせない薬だと思います。 またミネブロという薬もARBのような効果をもちつつ、コルチゾールという人間が自分でだすステロイドホルモンを介する血圧上昇を下げてくれます。

採血結果だけでなく、心エコー検査ができないと、昨今の降圧薬を使いこなせず、10年以上前の薬をずっと飲み続けることになるのではないかと危惧しています。

そういった選択肢を詳しく説明できる専門医がいないのが現状の問題だと思います。 まずは提案をできないと、患者さんも新しい情報がはいってこないからです。