心臓・血管の疾患

ARNI(アーニー)とSGLT-2阻害薬

ARNIとはエンレストという薬です。もともとあったARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)とサクビトリルの配合剤です。 サクビトリルは血液中のANP, BNPという人体にとって非常に重要な働きをするタンパク質の分解を防ぐ薬です。 この薬を私は「飲むhANP(ハンプ)」と言う題名で講演しています。 hANPは注射薬で心臓病で入院すると1週間は点滴する薬剤です(病気にもよりますが)。 以前から飲み薬があれば良いのにね、と循環器内科医の中では言われていました。 それが海外では日本より早く、日本でも3年目になりました。 山下先生という医学書を多く執筆される先生が題名の本を出しています。 それくらい両者の薬が循環器内科医にとって非常に患者さんの生命予後を高めることが証明されています。 SGLT-2阻害薬は尿に糖をだす糖尿病に使う薬なのですが、そのうちの限定された薬は心不全や腎不全も改善することが証明されています。この背景には糖尿病学会が発売されて1-2年間は使用を控えるように、となり、循環器内科医が使うことが多かったことがあげられます(糖尿病がひどいと心臓カテーテル治療をするときに非常に難渋するため、少しでも糖尿病のコントロールを良くしたい、ということがあるのです)
さて、以前ARNIの著名な先生の講演を聞いていると「腎機能が悪くてもなぜか通常容量以上に使用できる、理由は不明です」ということをおっしゃっていました。1年前です。 理由はhANPに詳しいと実はわかります。 私の執筆した医学書にその理由を書いています。2013年に発刊され、今も発売されています。
高血圧で医師の深層心理で「無難に」血圧を下げるならカルシウム拮抗薬だけ、ということがあります。 ただ、それでは心臓、腎臓、血管の保護効果がたりません。 エンレストは通常容量の200mgでもARBをジェネリックで買ってない人だとほぼ値段は変わりません。 また100mgの少ない容量(これでもかなり降圧効果は期待できます)だと薬の値段は安くなることになります。
エンレストやSGLT-2阻害薬を使いこなせるかどうかの時代になってきました。 既存の降圧薬だけなら従来と寿命は変わらないでしょう。 健康寿命を延ばす提案ができる、そして患者さんとの相談のうえ、薬剤を決定するのがこれからの時代だと思います。 決して従来治療が悪いわけではありません。 ただ、題名の2つの薬剤を使えない、もしくは使うときに理解が少ないのでは良くない、と思っています。
講演会を聞くだけではなく、論文を読むことが大事です。 勤務医は当然ですが、開業医もそれが当然だと私は思っています。