心臓・血管の疾患

高血圧のガイドライン(治療目標)

8月29日に正式に発表された、2025年の高血圧ガイドライン(JSH2025)では、年齢や合併症にかかわらず「家庭では125未満、診察室では130未満」と一律の目標に統一されました(Verdecchia P, Angeli F, Reboldi G. The lowest well tolerated blood pressure: A personalized target for all? Eur J Intern Med. 2024)。

私は以前から家庭血圧を重視し、「110台であっても問題ない」「夜間には90台が出ても症状がなければ心配はいらない」と伝えてきましたが、これは今回の基準と矛盾するものではありません。むしろ「家庭での測定を大切にしよう」という方向性は同じです。ちなみに、夜間の血圧については「90台が出ても問題ない」と考えられています(Hermida RC, et al. Bedtime hypertension treatment improves cardiovascular risk reduction: the Hygia Chronotherapy Trial. Eur Heart J. 2019)。

ただ、この数字だけを見ると「もっともっと下げればいい」と思う方もいるかもしれません。そうではありません。体調、超高齢の方、腎機能が悪化してきている方では“下げ過ぎ注意”の姿勢は従来通り変わりません(SPRINT Research Group. A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control. N Engl J Med. 2015)。

ちなみに、アメリカの基準では収縮期が120を超えると“高血圧”に分類されます(これは降圧目標ではなく、正常血圧の上限としての定義です)。一方、日本では今も125以上が高血圧とされています。つまり、同じ124でもアメリカでは「すでに上昇域」、日本では「まだ正常」と扱いが分かれるのです。

結局のところ大切なのは、「家庭血圧を日々チェックし、125未満を目指しながらも、体調や腎臓の状態を見て柔軟に調整すること」です。