花便りが各地から届くこのごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

さて、最近は「脳卒中」という言葉を使う人は少なくなって来たと感じます。ちなみに、脳卒中とは脳梗塞と脳出血をあわせた言葉です。また「卒中」とは、突然起こること、の意味です。

当然、脳出血と脳梗塞とは全く違う病気です。血管が破れる事を脳出血と言い、血管が詰まる事を脳梗塞と言います。

昔は高血圧の基準があまく、いい薬もなかったので、脳出血が多かったのですが、最近は長生きの時代になり、脳出血にならない人が、動脈硬化を起こし、脳梗塞を起こす時代になってきました。

 

脳梗塞を起こす原因は「4つ」あります。3つという教科書もあるかもしれませんが、実臨床(救急医療の現場では)では4つです。

実際に3つだけを考えて、治療にあたる医師はいないと思います。

下記の①②③だけを脳梗塞の原因と思っている医師は、古い教科書を見ただけの知識を持っている可能性、実臨床に乏しい医師である可能性があると思います。自戒の念を込めて、2017年の私が考える脳梗塞は、

 

①脳内の細い血管が詰まる症状もないことがある、ラクナ梗塞(中高年の方でMRIをとると見つかる場合もあります。(CTでもわかる場合もあります。ラクナとはラクナ梗塞の時にしか使わない事が多い言葉です)

 

②脳内の太い血管が詰まる、アテローム血栓性梗塞。アテローム型粥腫が原因でその部分に血栓ができ、詰まった部分によって症状がでますが、分かりやすい症状としては、右手・右足が動かない、などです。アテロームには、皮膚に出来る粉瘤という良性のできものと、姿形が似ているということから、血管内ではコレステロールが主成分で血管にできる、“できもの”(中身がぐちゃぐちゃで柔らかいことが多いとされています)のことです。 ちなみに、粥腫から飛んだ血栓が他の部位に「塞栓」として詰まる場合もあります。頸動脈エコー(当院で検査できます)をすることで動脈硬化がわかりますし、MRIをしたほうが良いのかどうかの判断もできます。

 

③心房細動が原因で、心臓の中に血栓ができ、脳に血の塊が飛んで行ってしまう、心原性脳梗塞。症状は②と似ていますが、非常に重症になってしまうことが多いので注意が必要です。なぜなら②の場合はある程度、脳内の血管が、危険を察知していて、いざ詰まった時のための準備をしていることが多いのですが、心原性脳梗塞の場合はその準備が出来ないためです。 発作時の心電図や24時間心電図(当院で検査可能です)で見つかる場合もあります。時には心エコー検査で心房の機能がわかりますので、より注意して経過(心房細動が発症しないかどうか)を診ていくことがあります。

 

④脳梗塞発症時は原因がはっきりしないもの、もしくは後からわかるもの。例えば、心房中隔(心臓の4つの部屋のうち上2つの部屋の仕切り)にある、卵円孔開存が原因であったり、大動脈にできていた動脈硬化が脳の血管に飛んでいって詰まったり、血管炎(血管のリウマチのようなものです。実際に私は肥厚性硬膜炎というかなり珍しい病気で発症した、脳梗塞を診断し治療に当たったことがあります)などで起こる脳梗塞です。

 

 

正式な分類は、脳神経外科や神経内科の先生が詳しいと思いますが、循環器内科医でも④が鑑別診断に挙がらない場合、いろんな意味で「まずい」と思う次第です。普段の聴診や心エコー検査で意識をしてない、ということになるからです。

自分自身、いろんな論文をみたり、学会へ参加したりして、今後も勉強を続けていく必要があると思います。

 

 

多くの無床診療所では、高齢や疾患の進行で通えなくなった患者さんは診られないということが多いとおもいます。

 

当院は、私が理事を務めている上記のグループの診療所です。

そのため、通えなくなった患者さまに対して、介護保険を利用して、往診(訪問診療)や、施設への入所など「はい、さようなら」ではなく、シームレス(途切れのない)な医療、介護、福祉が可能で、その方のその時だけでなく、その後のことも責任を持って診ることができます。

 

ご高齢の方で、将来のことが心配な方は、当院で診療をされていれば、病状把握が詳細に分かるので、介護保険、適した施設へのプランが立てやすい利点があります。

 

今は体調に自信があっても、将来に備えることが重要と思います。いざその時になって、かかりつけ医が適切な施設との関連がないと、本人だけでなく、ご家族も困ることがあると思います。

 

そういったことも踏まえて、不安に思う方は、当院への診察をご検討ください。認知症に関しても、当院で診療ができます。(私は、認知症の相談医「オレンジドクター」の認定を持っています)

 

 

 

 

皆様は漢方薬というと、一般的な薬と違い効果があるのか?副作用は少ないかもしれない、粉薬で飲みにくい、などのイメージがあるかもしれません。

 

実際に漢方薬は、医師の経験をもとに使われていた経緯があります。現代でも機序は分かってないが、“とにかく効くから”という処方があることは否めません。

 

ただ最近、「サイエンス漢方」という考え方が出てきました。

 

漢方薬は、近年、科学的根拠(エビデンス)が集積されつつあり、腹部の手術をした後は、腸閉塞(ちょうへいそく:腸の動きが止まってしまい、嘔気・嘔吐がみられる)予防に「大建中湯(だいけんちゅうとう)」、食欲がない方にグレリンという食欲を亢進させるホルモンを上昇させることが実証されている「六君子湯(りっくんしとう)」、など、西洋医学ではカバーできない分野の薬として、東洋医学としての漢方薬というより、一般的な西洋医学の薬として内服していただく考え方を、サイエンス漢方と名付けた研究会が報告しています。

 

 

私自身、講演会を聴講したり書物で勉強し、またトップの方から、現在解明されている、疾患に対しての処方の根拠を解説したUSBをいただくことができました。

 

私が面白いな、と興味を惹かれたのは、今までは漢方医学専門の先生が、例えば舌を上にだして、その部分の静脈が怒張しているのを、漢方薬を処方して、「怒張が改善してますね」という流れや、脈圧や腹部の触診などで、処方を決めることが、「サイエンス漢方」では、「漢方薬の処方の敷居を高めているだけの行為の可能性がある」としている点です。(真っ向から否定しているわけではないのですが)

 

 

私自身も、漢方薬を西洋医学のの考え方で処方することは、非常に重要だと思います。例えば、「腸炎」に対して、従来の西洋医学では、点滴、整腸剤などの対症療法だったのですが、「桂枝人参湯(けいしにんじんとう)」は、腸の炎症を抑え、免疫力を高めることがわかってきています。これは非常に医師としては処方の引き出しが増えることにつながり、粉薬が飲めれば、患者さまにとっても良いことだと思っています。

 

 

一宮きずなクリニックでは、漢方薬を処方する場合は、経験に基づいた奇抜でない漢方の処方だけでなく、主には、科学的根拠に基づいた漢方薬を処方しています。

 

ただ、まだまだエビデンスが漢方薬には足りない部分もあるかと思います。

今後の課題が漢方薬にはあると思っています。

 

 

 

 

 

私は、京都第一赤十字病院で研修医をしているときに、「循環器は癌がない。癌と戦おう」と言われ、一時は消化器内科の研修をうけ、その後の研修施設でも胃カメラや腹部エコーを研鑽していました。(日本消化器学会、日本消化器内視鏡学会に所属し、現在でも内視鏡のトレーニングに本州に出張しています)

心臓病を患った方は、どうしても心臓のことが気になり、癌検診んが疎かになる傾向を危惧しています。

 

例えば、大きな病院で心臓病の治療をして、6-12ヶ月毎に治療をした病院で心臓の検査をして、私どもの診療所でも同じく、循環器の内服薬や検査、心臓リハビリテーション(心リハ)をし、「血圧イイネ、血糖イイネ、心電図イイネ、心エコー、そして心リハに参加して完璧ですね」は、人体のほんの一部(心臓、血管)だけを診ていることになり、もはや罪であるとさえ思っています。それは心リハをしていて、心リハ参加中の患者様が、癌を患う可能性が高く、早期発見できた経験を通しての私見です。

 

そのため私は、「癌検診はしていますか?」と時に患者様に問うことがあります。以前に胃炎があった人や、肝機能障害がある人、大腸癌検診で引っかかった人には、胃カメラや腹部エコー、大腸カメラ(香川の四国こどもとおとなの医療センターではしていましたが、現在私はしていませんので)、をしている福田心臓・消化器内科や、他の施設に紹介させていただくようにしています。ちなみに、大腸CTというCT検査で、あたかも大腸カメラをうけたかのような画像を福田心臓・消化器内科では、H29現在では唯一、受けることができます。大腸CTの良いところは、大腸の中だけでなく、CT検査ですので、膵臓や腎臓、肝臓も同時に見ることができることが利点です(私はこの検査で、検診で見逃されていた腎臓嚢胞(水たまりの袋)が見つかりました。ただし大腸に大きなポリープなどの疑いがあれば、大腸カメラを受けていただくことになります。)

 

 

しかし、患者様によっては、説明をさせていただいても、絶対に受けたくない、と言われる方もおられるので、決して無理強いはしません(当たり前のことですが)私に言われて、その場で「受けます」と言ってしまった方は、キャンセルしてもらっても全然かまいません。ただ、血圧だけ、心臓だけ、を管理していることの危うさはご理解いただければと思います。

 

一宮きずなクリニックでは、最新の内視鏡、エコー装置を取り入れ、胃カメラ、腹部エコーができます。大腸ガン検診、前立腺癌検診も可能です。

症状がない方でも、がん検診は必要だと思っています。当院は循環器内科だけでなく、「内科」を標榜しています。この内科には、風邪をみる、だけではなく、そういった思いが込められています。

 

 

特別講演は、心臓超音波検査と心臓カテーテルを同時にしている(た)先生にとっては、まさに「神ってる」講演をされる、桜橋渡辺病院の岩倉克臣先生で、私はその前に一般講演をさせていただきました(3月24日)。

 

私の講演内容は、最も新しい糖尿病の内服薬、SGLT-2阻害薬は、①どのような人に効果があるのかの予測 ②その薬によって筋力が衰えないかどうか、という内容です。SGLT-2阻害薬は実は糖尿病学会や老年病学会で、まだ根拠(エビデンス)となる論文はないが、筋力が衰える「フレイル(またの機会にご説明します)」を起こす可能性がある人には投与を控えるように、というお触れがでており、糖尿病専門の先生ほどあまり使われていないのが現状だと思います。

 

このSGLT-2阻害薬は「尿に糖をだす効果がある」という全く新しいコンセプトを日本人が考え、アメリカで最初に販売された薬です。またその後の研究で、既存の糖尿病薬ではなかった、心不全による入院だけでなく、内服している人の総死亡数が減ったというエビデンスがあり、私のような循環器内科医が多く使う傾向があります。
講演の結果ですが、①については、一日の総カロリー摂取のうち蛋白質の割合が多い(適切)な人ほど効きやすい。私の執筆した論文では、簡単な採血検査でPIM(: protein intake markerの略、SGLT-2阻害薬を内服する前の平均赤血球容積のことで、何もその日に採血する必要はありません)が高い人ほど効果が得られやすい、内服開始時に管理栄養士による栄養指導を受けること、適切な運動療法を始めること、結婚していること(おそらく外食が少ないためだと思います)、そして握力が高い人ほど効果が得られやすいという結果でした。

 

②については、適切な使用をすれば筋力は衰えない、という私の論文を報告しました。昨年には、日本人の開業医の先生が、むしろ握力は増大するかもしれないという報告もあり、今後詳しく論文を見ていく必要があると感じています。
講演会のあとは、岩倉先生を囲む会を、高知赤十字病院の循環器内科部長の近藤先生が開催され(近藤先生、お呼びいただき有難うございました)、浜田循環器内科の院長先生である、濱田富雄先生と私の4人で、循環器病の今後の展望に関してだけではなく、日々私が疑問に思っていることなどをご教授頂き、医療以外の楽しい話で盛り上がりました。

 

講演会のあとは、岩倉先生を囲む会を、高知赤十字病院の循環器内科部長の近藤先生が開催され(近藤先生、お呼びいただき有難うございました)、浜田循環器内科の院長先生である、濱田富雄先生と私の4人で、循環器病の今後の展望に関してだけではなく、日々私が疑問に思っていることなどをご教授頂き、医療以外の楽しい話で盛り上がりました。

 

さて、講演会は4月にもあります。また9月にも予定が入り、早速今日から勉強しています。

医療は日々進歩しています。町医者になったから、といって腕がおちる、ということがないように、今後も努力していく所存です。

 

 

※写真左:岩倉先生との2ショットです。

※写真右:その後の食事会の様子です。鹿児島の幻の芋焼酎「森伊蔵」が飲めるお店でした。