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基礎研究の大切さ

論文を書く際、どうしてもdiscusstion(考察)のところで上手く書けずに、良い雑誌にのらない、と思った私は基礎の知識や経験がないから、基礎論文を読んでもあまり頭に入ってないのでは? と思い、留学は臨床(基礎の方が行きやすい、というのはあるのですが)ではなく、基礎研究でと思い一時日本を離れました。

やはり思ったのは、「基礎分野は非常に大事」ということです。 何事も経験が大事、と思っている私にとっては、アンジオテンシンIIという物質が悪いから、ARBという降圧薬がいい、というのはピンと来てませんでしたが、実験のマウスで、自分でアンジオテンシンIIをポンプで埋め込んで、動脈硬化を生理食塩水を埋め込んだマウスと比べたり、腎臓の大きさ、心臓の大きさを比べると、「めちゃくちゃ悪い物質だ」とわかります。 そこで血管平滑筋細胞の増殖をノックアウトさせた遺伝子操作されたマウスを交配させ、同じ実験を行うと、有意差がでることも、自分の手で操作し、目で確認しました。
マウスのエコーは結構誰でも出来るようになるのですが、その解釈に、循環器内科である私以外は肥大か動きが悪くなる、という判断をしていたようですが、私自身は自分のために、血流パターンや心臓の筋肉の動きを解析していましたが、明らかに悪さをしているのがわかります。

私の私見ですが、0と1は全く違う。 1と10はそんなに変わらない。 1と千は雲泥の差である、と思います。 私の基礎研究がたとえ、1だとか10も行ってないレベルだとしても、最終の難しいレベルまで経験をしました。 これは大きな財産となっています。 患者さんに投薬するときに、「本に書いてあるから」という理由や、機序はこうなっているから、という座学で説明するのは誰でもできますが、実際の経験があると、投薬にこだわりがでてきます。

なかなか海外留学や、基礎研究だけに没頭する機会はないのが忙しい医師にはあると思いますが、留学して良かったな、と思えることでした。
ちなみに、当初は、心臓リハビリテーションの、臨床➕基礎研究での留学を希望していましたが、残念ながら面接や実績などで落ちてしまったことも記載しておきます。 しかし、生粋の基礎研究をしていれば、問題ないこともわかりました。