心臓・血管の疾患

心音図学

私が恩師と呼べる医師のなかでも最もお世話になったのが、心音の世界では日本で1番と言っても過言ではない、福田信夫先生です。心音と心エコーはかなり似ていて、徳島大学では心音図学の班のトップが福田信夫先生、心エコー図班のトップが大木崇先生です。大木崇先生は日本の心エコーの教科書2つのうち「通」が好む方の教科書を書いた方です。東大、阪大、徳大はその当時心エコーでは世界を相手に戦っていたのが論文でも分かります。大木先生が初めて本を出版されたのが大学院生のときで、30歳頃だと聞きました。その本は絶版になっていますが、コピーしたものが残っていて、それを製本化している医師もいるほどです。さて本格的に教科書を書き、改訂版がでたときに、私も教科書を選ぶ際に徳大だからという理由ではなく、「この本は一生使うな」と思い書いました。 ちなみに、今も昔もE/e`という値が心エコーでは大事ですが、e`はもとはEwで大木先生が世界にだした数値です。米国の先生がEをeで割る数値、E/e`がバズったのです。この時に大木先生に海外から手紙が来たそうです。心エコーで心機能だけをみるなら、EFとE/eだけでも構わないくらいです。EFは一つの値ですし、E, e`もそれぞれ一つの値とすれば、日本で1つの値を編み出しているのです。 その人が書いた本が面白くないわけがない、と感じた次第です。

大木先生と福田先生は大木先生の方が先輩になりますが、非常に仲が良く福田信夫先生の名著「心疾患の視診・触診・聴診」の監修を大木先生がされています。私が京都日赤の時に最初に買った本が、つまり医師になって最初に買った本でもあります。月間「血圧」にも掲載されましたが、ボロボロになるまで読み込んで、善通寺病院派遣となり、まさかそこでその本の著者の先生から直接指導をいただけるとは思いませんでした(めちゃくちゃ読み込んで、ページが落ちてしまい、テープで止めたりしていたのを見た福田先生が、新しい本を着任日に下さいました)
心音図は今や習うことはできません。しかし私は習うことができました。リモートの社会になってきました。患者さんが離れていても、聴診で心音をだす機械は私が作ろうとして失敗したのをベンチャー企業がもうすでに出していますが、心音図はすぐに出せるでしょう。今までの技術があるから。そうすると、聴診ではわからなかった、聞き逃した音が、記録に残るので、病気がわかります。肺塞栓、心不全、大動脈弁狭窄症や僧帽弁逆流症(は悪さの程度まで)です。
何事も経験、そして、きちんと教えてもらい、きちんと勉強すること、ですね。 独学ほど危険なものは医療においてありません。