後から診る医者ほど、病状が悪化したりするので診断がつけやすい、という意味であり、最初に診た医師に責任はないのに、「見逃しだ」というのは医師としての資質にかける、と思っていました。

ただ、この言葉、最近は3つの意味で使われるようになったと思います。 前述の後出しじゃんけんの意味、2つ目は「最初の医師が、適切な診療をしていない」場合には、当然、見逃しにつながるのではないか? と思います。 最近、インフルエンザの流行で当院に初心となった患者様がいて、聴診でおかしな音が聞こえるのでレントゲンをとると肺がんがみつかりました。 普段は近隣の病院にかかり、2-3ヶ月の変わらない血圧の処方をバイトの先生が代わる代わる診ている状況で、「5年前に皮膚科主体でその病院にかかりだしたのだが、レントゲンは一回もとったことがない」とおっしゃっていました。 1日40本タバコを吸う方で、健診の有無を聴かず、レントゲンをとらず、後から見た私が「後医は名医」とはあまりにも患者さんに失礼な気がします。 名医などではなく、普通の診療をしていれば、もっと早く見つかっていたはずです。 血圧の薬を寒くなってくる時期に2〜3ヶ月も処方するのはあまりにもいい加減だと思います。 夏服と冬服がちがうように、血圧の薬も秋用、冬用、その上にコートを着る外行き用があり、春になったら、一枚ずつ脱いでいくように、血圧の薬も減薬する微調節が必要なのは循環器専門医としては当然のことです。
最後に3つ目の新しい「後医は名医」ですが、「もはや紹介状を書くだけのマシーンと化した、自分ではなにも出来ない医師」です。 これは実在する医師が何人もいますが、少しでも異常所見があると、大きな病院やその他の病院にところかまわず「治療をお願いします」という、最初から、「後医は名医」と言われないようにする、完全自己防衛医者のことです。 もちろん、開業医にそんな医師はいませんが、勤務医にひそんでいます。 あまり勉強する機会がなく40半ばになってしまったのか、師匠が悪かったのか、本人のやる気がなかったのか、、、同情するくらい医師としての能力に欠けます。 まぁ間違ったことはしていないと思いますが、人を助ける、治す、という医者の志は少ないのかな、と思ってしまいます。 そういう医者には、上の先生も教えたがらないものです。 だから、学ぶ機会も少なかったのかな、と思います。

開業医は研究会などや、製薬会社からの情報提供などで勉強し、新しくなった治療方針に沿って治療するのが基本です。 これは当然私もしています。 しかしこれは、野球のバッターでいうと、打率2割5分、ホームラン5本、打点20の技術にとどまると私見ですが思っています。

私は、一町医者ですが、大きな病院の医師とは同じ治療はできませんが、一町医者として、打率4割、ホームラン55本、打点120を目指しています。 具体的には、私の書いた論文で、新しくなる治療方針(ガイドライン)が変わる、糖尿病の新しい効果的な治療法の報告、インフルエンザの見方の改定に携わる論文、などを執筆することを心がけています。 地域医療に関しても、「なぜ、開業医がしないのだろう?」という、抗生剤の耐性化の地域性について、統計をとることで、「適切でない」抗生剤を処方することがないようにする努力をしています。 これって、実は当たり前のことですよね。

かつ、私の経験(心臓超音波、心臓リハビリテーション)について、新たな執筆依頼があり、自己満足の自費出版ではなく、初学者でも読めるような工夫を凝らした本を執筆中です。 ほぼ、毎日いろんなことをしていますが、それがたたって、風邪気味になったので、昨日は執筆活動を久しぶりにしませんでした。

患者様の思っている以上の、高い水準の医療ができなければ医師失格だと思いながら、治療に今後も当たりたいと思います。

現在は、5日間飲み続ける「タミフル」、同じく吸入し続ける「リレンザ」、1日(1回)だけ吸入する「イナビル」、1日(1回)点滴する「ラピアクタ」があります。 今後、1日(1回)の飲み薬がでる予定です。

リレンザを使う医師はいないと思いますし、飲み忘れがなく、一回ですみ効果も強い「イナビル」が主流で、「ラピアクタ」も使いこなせないといけません。 ただ注意して欲しいのは、「喘息」の方は、「イナビル」(と「リレンザ」)は使用してはいけません。 吸入した粒子が気道を刺激して、ぜんそく発作を誘発してしまいます。

なので、「タミフル」も必要となってきます。 「喘息」の有無を聴かれない場合は、ちょっと待てよ、と思って頂いて構わないと思います。 患者さんからすると、自己防衛になるからです。 知っておいて欲しい必須の知識だと思います。

本日、勉強会にて大分からお越しの斉藤先生のご講演を拝聴し、その後質問攻めをさせていただきました。 それというのも、当院では、ビスホスホネートは基本的に勧めていませんが、顎骨壊死という副作用が、注射薬だとより怖いという方に処方をしています。 そのなかで、当院で新しい薬「プラリア」で半年の治療をして、骨密度が上昇しなかった方がいて、ご家族の方が心配されて、とある整形外科に連れて行ったところ「これでは駄目だ。 本格的な治療をしましょう」と言って、プラリアをやめて、ビスホスホネートの静脈注射に変え、ビビアントよりも効果のおとるエビスタ(私は処方しません)に変更されていました。 ご家族は納得されていますが、ビスホスホネートは諸外国では3年あたりで効果が頭打ちになることも報告されており(日本では7年とされている)、その方の骨折のリスクが高まってしまったかもしれません。

骨の強さ、骨強度は、骨密度だけでなく、骨代謝も大事です。 プラリアは骨密度だけでなく、骨代謝を良くするため、副作用も少なく、効果も続ければ期待できる最新の薬であることを理解していただければ幸いです。

開業医をしていると、自分がしている医療が正しいかどうかの判断ができません。 せいぜい、医学雑誌の特集を読む程度でしょう。 しかしこれは誰もがしていることです。 していない医師もどうもいるようで、糖尿病の治療をみているとよくわかります。 また、最新の質の良い論文を日本語に略したものでなく英語で読むことが大事です。 最後に、学会にいって他人の発表を聴講するのも大事ですが、自身で発表し、第三者にチェックしてもらうことが大事ですが、発表時間は4-5分で質疑応答も1-2分ですから、これも自分の鍛錬には十分とは言えません(海外発表は価値があります) さらにタチのわるいのが、聴講もせず、学会員としての点数を稼ぐために学会にいって、聴講をせず帰ってくるパターンです。 四国こどもとおとなの医療センター(香川県)や徳島大学病院では、発表しないのに学会に出席することは許されませんでした。
最後に最も自身の鍛錬になるのは、論文を英文で書くことです。 日本語でも最低構いませんが、英文で書くことで、その論文を書くために英語の論文をかなり読み込まなければいけないからで、さらに論文は書いたから医学雑誌に必ず掲載されるわけではなく、厳しい審査があって掲載されます。 有名雑誌であるほど、rejectといって掲載されないことも多々あります。 そこでどんなことが駄目だったのかを検証することで勉強になります。

開業医こそ、大きな病院で経験ができないため、こういった行為をするべきだと思いますが、県内ではそういった開業医はかなり限られているようです。 心臓リハビリテーションについては、県内の医師では、私だけが発表、論文掲載をしているようです。