よく医師は、医療関係者しか周囲にいない、と言われることがあり、先輩医師にアドバイスされるのが「違った職種の方との付き合いが大事」と言われます。 これは全くその通りだと思います。 私自身もそういった他の職種の方と話すことで刺激をもらえるからです。
では、医師同士の人脈はどうなのでしょうか? 私は基本がそこだと思っています。 私の専門は心臓のエコー検査ですが、困った症例があった場合は、もちろん患者さまのプライバシーは守ることは当然で、県内の先生はもちろん、他県の教授を含め、あらゆる心エコー検査を極めた先生方からアドバイスを聞くことができます。 もちろん高知県内の大病院に紹介するわけですが、帰って来た返事が腑に落ちないときなどが、アドバイスを聞くことが多い。 そういったこともあり、「一宮きずなクリニック」は心エコーが専門、とも言えます。 バックに多くの心エコーを極めた医師がいるからです。 さらに画像診断で迷ったり、心電図で新しい所見があったときも、人脈を活かして謎をときます。 整形外科でもそうです。 糖尿病治療についてもそうです。

迷わないように研鑽してきていても、どうしても自分ひとりでは解決できず、県内の基幹病院でも、私が考えている所見とずれている場合などに県内外の先生方の力を借りて対処できるようにしています。

県内はもちろん、他県も含めて、多くの先生方に支えられて普段の診療をしています。

私が、徳島大学病院、四国こどもとおとなの医療センター、で勤務している時は、非常に急変のリスクが高い方はそのまま私の外来に通院していただいていましたが、安定している方は原則近くの、信頼できる開業医の先生に紹介をして、何かあったらすぐに紹介(夜ならそのまま来てください、と患者さまに言って)、という形をとっていました。
これにはいくつかの理由があります。 まず開業医の先生は、大きな病院で、責任をもって治療をしていた経験があり、私どもの見立てと遜色ないか、それ以上の診断力をもっていること。 また、大病院では専門科だけの治療になってしまうので、総合的に患者さまをみれないこと、また、私の外来は週に2回だけで土曜日は大きな病院は救急外来しかしていませんので、何かあった時に、違う医師がみることになり、シームレスな治療ができないこと、などです。

そして大病院の事情もあるのですが、3次救急までしている病院では、外来をセーブしないと、入院患者さま(他科も含めて)の治療、救急外来での治療(循環器はよくあります)が出来なくなってしまうことも、実際はありました。 そのため、高知県でも、大病院では治療がすみ、安定している患者さまを当院で見させていただくことがあります。

そのために、私は、循環器以外のことも診れるようにしています。 患者さまは、「大きな病院で、今後も診て欲しい」と思われる方もおられると思いますが、実際は、治療などは変わらず、同じ医師が担当することがないことも考えると、小回りのきく、診療所がいい、と思っています(思っていました)

しかし患者さまの希望が一番だと思います。 小さな診療所でみてもらうのは不安だ、と思う方もおられるかもしれません。 私としては、そういった不安を解消するために、普段から研鑽をすることが、地道ではありますが、最も大事なことだと思っています。 診させていただいている患者さまには120%の力で見ていく所存です(当たり前のことですが)

今年は四国では、2/10ころから飛散するとされており、敏感な方は2月初旬からアレルギーの薬を内服開始しています。 花粉が飛ぶ約2週間前から内服を開始していると、症状が出にくい、といったデータもあります。 スギ花粉は4月終わりまで、ヒノキは5月末までが一般的です。 当院では、アレルギー体質かどうかのIgE検査に加え、viewという、花粉だけだなく、近年子供だけでなく、大人でも問題となっている、食物に対するアレルギーがあるかどうかの検査(いずれも血液検査です)ができるようにしています。 もう既に、アレルギー性鼻炎の方に処方をしている状態です。 鼻腔鏡を私は診ることができますので(喉を見るようなものです、加えて10分程度の血液検査で炎症反応もみることができます)、風邪かアレルギーかの鑑別も可能です。

アレルギーの薬は、点鼻薬で良いものが処方できるようになったこと、また、内服薬でも鼻がつまる、症状の方に処方する薬もあります。 眠気がすくないもの(飛行機のパイロットが飲んでもいい薬)を処方することもできます。

いずれにしても、早めの対処が症状を軽くするため、気になれば来院してください。

医師は、generalistという総合医、つまり色んな科を視れる医師と、specialistという専門医、一つの科の一つの技術だけを磨く医師の2つに分かれる、とされていますが、、、 私の意見は違います。 医者の技術力、能力が医師みんなが100あるとは限りませんよね、50しかない医師もいれば、500や1000の医師もいる。 10の医師もいる。 その能力のdistribution(配分)をどのようにするか、です。 また能力値を100から150にあげるか、の2つだと思います。
ちなみに、私はspecialistが「格好いい」と思い、「心臓の超音波検査」に能力を当てました。 何人もの良い師匠とも出会い、その病院の最終的なチェッカーとなりました。 手術適応を心臓外科の先生と決めたり、心臓手術中のエコーも担当しました。 また他科の先生から手術が可能かどうかの「エコーの依頼」は私が責任者でした(エコーの技術のために、心臓カテール治療に関しても、自分の判断で緊急性もある患者様にも判断をしていました。 私の私見ですが、カテーテル治療が出来ない医師、汚れ仕事をしない医師はエコーの技術は伸びにくい(たまに能力値が高く、そのようなことをしない医師もいますが)) しかし、generalistになることも、医師になった瞬間から考えていました。 それは開業するために、どこまでの能力を循環器科以外で診れるようになっておくか、非常に大事なことでした。 また、generalistになるためには、give and takeな部分が医師間にはあり、教えてもらうなら、その対価として、自分の技術も相手に教えるくらいのspecialistにならなくてはいけません。 研修医ならなにも出来ないはずなので、言われたことを文句を言わずにこなす、労働力がその対価になる事実は否めません。 つまり、わがままな後輩は損をする世界が医師の世界です(どの世界でも一緒だと思います) 普通に仕事をしていれば、70しかない私の能力は伸びないので、論文を読むだけでなく、英文で書く、海外での英語での発表、救急科や放射線科での研修を、あいている時間は「しなくてはいけなかった」し、「率先して」していました。 医師になった頃は10しかなかった能力値も、そのあとの研鑽で、また海外留学で、能力値は200程度にはなったかな、と思います。 能力値向上には、まさに、自己犠牲の精神がなくてはなりません。 町医者、開業医を「なにもできないgeneralist」だと思われる方もおられるかもしれません。 しかし実際は、大きな病院での責任者であることが多いのです。 私の心臓超音波の検査は、大きな病院の判断、診断と遜色ないと思っています(実際に、大病院でそういう立場にいましたので)

最後に、敢えて自分の経験から言うなら「最初に総合医になってから、専門医になるべし」は、間違っていると思います。 「専門医を目指しつつ、総合医の能力を同時に高めていくべき」だと思います。 専門性ありき、ですね。 「これだけは、自分の病院内では他の医師には負けない」という能力・技術がないと、医師としては、器用貧乏になってしまいます。

医師は(少なくとも私は)、最悪のケースを考える慎重さが重要と考えています。 そのため、私は循環器内科だけでなく、消化器内科、一般内科などを研鑽し、お腹のエコーをして、胃がん、食道癌、胆嚢癌や腎臓癌の指摘(いずれも転移もせず早期発見)してまいりました。 ただこういった検査には個人がだす医療費もかかります。

また、糖尿病などは長く付き合っていく必要もある病気ですので、患者様が支払う、薬代も含めたことを、患者様にお聞きしながら、最善の薬を処方しています。

ただ、胃カメラ、腹部エコー、大腸がん検査は非常に重要です。 アメリカなどは、「検査を勧めてくれなかった」という訴訟もあるくらい、一般市民(その陰には弁護士がいるのですが)が声をあげるほどです。

その重要性と医療費のことを考え、最終的には「命あっての物種」だと原則、思って診察・治療しています。

「検診で特になにも言われなかった」「前の病院でレントゲンは1年前にとった」「前の診療所でいつも心エコーはしていた」、いずれも腹部大動脈瘤、腎癌、肺がん、肥大型心筋症が見つかり、頸部のエコーをしたところ、動脈硬化がひどく、手術をいつするか、を専門の高次医療期間で(当院で処方をしながら)半年に1回検査をするようになっている方もいます。

月刊「血圧」の取材が昨年あり、全国誌にインタヴューを掲載されましたが、そこでも、検診を否定するわけではないけども、かかりつけ医は同じ検査をするにあたって、今後の治療方針を決めるために、検診とは全く違った視点で検査をしていることを考えていただけると幸いです(たとえば、検診では「血圧が高値です」「逆流性食道炎があるので胃カメラで精査してください」「胆嚢ポリープがあります」などですが、私であれば「血圧が高いので、栄養指導をうけていただき、自宅での血圧の測り方を教えさせていただき、その上で薬剤治療をその場で開始するかどうか」を話し、「逆流性食道炎の程度によっては、食道癌のリスクや胃がんの見落としがないかどうかをチェックし、次回の検査をどうするか」を説明し、「胆嚢ポリープは今の所、経過観察で構いませんが、大きさから次は1年後でいい、半年後でないと危ない」という説明をすることができるメリットがあります。 これが、検診とかかりつけ医で検査する違いです。

患者様の考え方もありますし、検診の全身をみるメリット(オプションで)もあると思いますので、それを否定するわけではありません。 ただ、分業制で、責任をもって医師みずからが検査をするわけではないことも事実なのです。 優れた検査技師さんのエコーと、経験不足の方がするエコー検査や、バリウム検査では大きく差がでます。
医療費のことは十分考えた上で、患者様が納得される医療を提供したいと思っています。

ちなみに、もう大腸のバリウム検査(実はバリウムではないのですが)はなくなります。 大腸カメラか、高知県では、福田心臓・消化器内科だけでうけられる、大腸CT検査だけになります。 理由はいろいろあると思いますが、検査の煩雑性や、受ける人が少なくなって材料を売っている会社が材料を生産しなくなったこと、です。 医療は進歩しています。
血圧だけをみていると、足元をすくわれる可能性が高いことを、医療センターでみてきました。 心臓病、癌、肺炎 に対して、当院では総合的に診断・治療を行なっていきたいと思っています。 結局のところ、個人の医療費も安く済むことが多いのも事実です(頭部のMRI検査も必要があれば紹介させていただくと、医療保険がききますので、検診より安く、それでかつ、治療の必要性や、どんな薬を使えばいいのかが分かる、といった具合です)