その他の疾患

ステレオタイプと認知症

ステレオタイプとは、和製英語ならぬ仏製英語であり、フランス語が語源の英語です。「決まりごと」のように使われたり、「固定概念」「思い込み」という意味でも使われます。国外、特に欧米など白人が多い地域に住んだことがある人は「差別は今現在もある」ということは理解いただけると思います。私自身も米国留学時に感じたことでした。近年、ステレオタイプという言葉は、「偏見」「差別」を生み出す考え方としても使用されるようになっています。

このステレオタイプは加齢に関しても認知機能をはじめとする、老年者のパフォーマンス低下をもたらすことが海外だけでなく、国内でも数多く報告されています。例えば、「加齢によって、今からするペーパーテストは点数がおちます」という提示を先にしめすことによって、実際に点数がおちることが証明されています。年をとることに関してネガティブなステレオタイプを持つことで記憶課題、認知課題、身体課題、スキル獲得など広範な領域で本来の能力以下の力しか発揮できない現象を、加齢ステレオタイプへの行動的同化(Behavioral assimilation to age stereotype;BAAS)と呼びます。逆に「老い」対して自己知覚がポジティブな人ほどBAASの影響を受けにくいという報告もあります。社会の風潮として、確かに車のアクセルとブレーキの踏み間違いなど、問題点もあることはあるのは分かります。ただそういった事件で、全国一律に「もう年をとったのだから」で全てを片付けてしまって、認知症がない方に本人が楽しくないと感じているのに、小学生がするようなドリル、脳トレを半ば強制的にさせることが全ての人にいいとは限りません。もちろん過信は禁物ですが、認知機能を落としたくない、という前向きな姿勢を持つことが、まず根源に大事なことではないでしょうか。