プロ野球選手にはなれなくても、医者は掃いて捨てるほどいますし、よっぽどなりやすいでしょう。 しかもサラリーマンのように(勤務医はサラリーマンですが)、いつリストラにあうかわからないわけではありません。

では医師にとって最も大事なのは? 人格(道徳心)、経験と研究心(医師の環境として厳しいほどいい)、技術(圧倒的で、県で2−3人いれば済む、というレベル) です。

技術は、ある程度のことは誰でもできることを医師はしています。 ある一定以上のことは経験がないとさせてもらえないでしょうし、ある一定以上の人格者でなければ、私は下の医師にさせていませんでした。 しかし、ある一定以上の、それこそ県に10人もいらない医療技術にかんしては、そういった一点集中の方に任せればいいし、そういう医者は他の医療技術もなんだかんだで詳しいものです。

経験は、循環器内科であれば、だらだらと救急を断り、カテをせず、エコーも人任せ、心リハは誰でもとれる資格だけを持つ、では経験とはよべません。 いかに自分を厳しい環境に追い込むか、またそういった期間がどれくらいか、が経験です。 5年間ぶらぶらしていた医者と、2年間夜も寝れない環境にいた医者では、全く腕が違って来ますし、その後、どうやって勉強や研究をすればいいのかにも差が出てくると思っています。

人格については、「医者は自分が泳げなくても、川で溺れている人がいたら、躊躇なく飛び込む人しかなってはいけない」と過去言っていた人がいます。 こういった医師と、なんとなく医師をしています、では大きな違いがあるのかな、と思います。

私は大学では良い友人に出会え、「医局に入らない」という選択肢(昔はどこかの大学の医局にはいるのが普通だったのです)を選び、一流病院に見学しに行き、そこの病院の過去問をなんとか取り寄せ、勉強していました。 4年生あたりからです。 しかしよく遊びもしました。 授業もサボり(試験に受かって、6年生時に学校で10番くらいにいればいいだろ、と思って逆算して勉強していました) 京都日赤では2日に1度副直(3年目から当直はでき、研修医の2年目までは副直といって誰かに教えてもらいながらでないと泊まれません) 消化器内科を回っていた時も、上の先生が病院で寝る、といえば自分も従い、循環器内科では2日に1度呼び出しに駆けつけていて、1度2時間遅れてしまい(もちろん、研修医にはそこまでしなくても良いのですが、私が私に課した「毎日呼んでください」に反した行動に対し、恥ずかしく思ったこともあります)

バスケットボールの部活でもそうですが、上手くなるためには、練習しかありません。 そこに、研究心がなければ意味もありません。 先輩も一生懸命している後輩に教えたくなる、と思い、誰よりも練習しました。 同級生の日本中の医学生で、バスケットボールの練習(ランニング、筋トレ)を最もしていたのは、自分だと思えるほどです。

UCGは和製英語で、英語圏では通じません。 Echocardiography と書くのが常識となっています。

さて、心エコー法も通常は使いません。 これも上記と同じく学会で、心エコー図、と決まったからです。
最近は、海外で、quick look echo といって、日本では、「ちょいあてエコー」という、あまりいいネーミングではない言葉から、point of care echoという、「ポイントを絞った、時間の短いエコー」のことを「POC」と呼ぶようになりました。

さらに最近では、心エコー図をPOCで行なった場合、非専門医がする場合、focused point of echocardiographyと呼び、専門医の場合はlimited point of echocardiography ということいなっています。

循環器内科全員が、心エコー図の専門ではありません。 きちんと研鑽と研究をかさねた人が専門であるべきです。

米国では、循環器内科医でも、専門と非専門では、そのエコーの価値が変わってきます。 日本では、「誰がやっても患者さんが支払うお金は一緒」です。 もちろん、その後の説明にも大きく変わってきます。
開業医で超音波検査をしましょう、と言われても、本当に専門かどうかは、エコーの機種と、説明がきちんとされるか、でわかります。 持ち運べる、アンチョコの心エコー機器で、私は心エコーも腹部エコーも頸動脈エコーも撮られたくありません。

近頃の風邪は、治るだろう、とほっておいて、1週間たつと気管支炎になっている場合があります。

採血や痰の検査で、そうなる方は、マイコプラズマ感染症、百日咳などの可能性もあります。

3日目で改善がなく増悪するような風邪は、聴診してもらった方がいい。 どう考えても、蓄膿症の増悪なのに、抗生剤が出されておらず、治ってない方もいました。 もちろん私は耳鼻科ではありませんが、私が診ても、明らかに抗生剤が必要な時期だったりします。

鼻腔鏡をみれば、ある程度わかる場合があるし、レントゲンで分かります。

老衰がいろんな因子で第3位となっていますが、肺炎になると高齢者の場合命に関わってきます。

重症の肺炎、そのなかでも、肺真菌症(カビが肺に生えている場合)、肺膿瘍(膿が肺に溜まっている場合)、など、集中治療室で、治し切りました。 これは、大きな病院で循環器兼内科をしているころの話です。 循環器をしているので、滅菌の心臓カテーテルに穴を開けて、外から膿瘍めがけてカテーテルを刺し、膿を吸い出したりして治療したのです。
開業医からの紹介でした。 あとから診たら、の話になりますが、そうなる前に治療をしたい、と常に思っています。 医学に100%はありませんが、気管支炎から、肺炎にさせないために、きちんと研究を開業医でもして、治療にあたるのは常識です。 救急外来で1日だけ処方をして、明日かかりつけ医にかかりなさい、という決まりごとを私は無視していました。 困っているから救急外来に来ているのです。 もちろん、夜間の外来を通常の診察として使うのは論外ですが、夜間の救急外来ほど、頭を悩ませるものはありませんでした。
腹痛で、CT検査をすると、破裂しかかっている大動脈瘤があり、すぐに手術、となった方もいました。
38度の熱がある若い男性、1日解熱剤(しかも相当軽いもの)を処方して、「明日かかりつけ医に」と言われても、持病もないのにかかりつけ医もないし、仕事もあるので、次の日に私の外来にきて、レントゲンをとると、胸膜炎を起こしていたので、その胸水を抜き結局入院になった方もいます。 これは、後から診たからではなく、前日の夜でも、丁寧に診ていればわかっていたことです。

何事も、浅く広く、よりも、一芸に秀でる、ことが難しい。

医療の世界も同じです。

日本で10本の指に入る、のではなく、世界で10本の指に入る、というくらい秀でた診療技術は、科をまたいで、いろんな疾患にも詳しくなります。

例えば、心エコー検査で、肺高血圧があった時にはいろんな疾患を考えなければなりません。

心臓リハビリでは、栄養状態に関して膵臓の病態に詳しくなるはずです。

本日も開催される循環器学会、エキスパートの先生たちだけでなく、レジェンドと呼ばれる先生ともお話しでき、大変参考になりました。

土曜日はパネリストとして(アマゾンのカードと、記念品をいただきました)壇上で話をする機会があり、クリニックを休診させていただきました。
土曜日は朝の8:30から、夕方18時まで。 日曜日は8時から15時まで。

徳島大学のエコーグループで、日本の教科書はこれしかない、という医学書を執筆された先生をはじめ、一緒に働いた先輩、同僚、後輩、技師さん、MR(薬剤情報提供者)さんにもあえ楽しく過ごせました。
ただし、全てのセッションの中から、自分が今まではしていて、今後しないであろう、ステント治療の分野も含め、出来るだけ幅広く時間を惜しんで聴講しました。

長かったようで、終われた短く感じました。
本日はゆっくり休むこととします。