もうバリウム検査をすることに疑問を持つ人もいると思いますが(私が最初習ったのは、早期の食道癌を見つけようとするなら、粘稠度の違うバリウムで衝動は2回みる、というものでしたが、そういったことをしている医師に今まで出会ったことがありません)、バリウムでも、胃カメラでも、「検査が陰性でも、これは以前ピロリ菌がいたに違いない」という、胃の粘膜が萎縮している人が多くいます。 原因は、風邪で抗生剤を飲むことが多かったり、肺炎や腸炎、手術などで入院し、治療に抗生剤が必要だったりすることが多かったりで、自然に除菌された方が非常に多い、と胃カメラをしていると思います。

胃カメラの説明時に、腸上皮化生、という言葉がひとつのキーワードですが、もはや胃の複雑な粘膜をつくれずに、腸の粘膜になってしまった中心に、癌ができやすい、とされています。 きっとそういった胃の粘膜をもっているかたは、1年毎の胃カメラ(少なくとも2年ですが、1年が確率的に癌が見つかった時に、お腹をあける手術をしなくていい可能性が高いのです)が望ましいとされています。

以前にも書きましたが、胃カメラという名前がいけません。 食道も十二指腸の一部も、私は声帯も喉頭もみています。 鼻からして、鼻腔内に悪性腫瘍が見つかった人もいました。 これは、通常右の鼻からするのですが、右の鼻にできていたので、ラッキーとしか言いようがありません。 かなり確率としては低い病気なのですが、早期であり患者さんはご存命です。

バセドウ病を薬でなおすことはできない、というものです。 治す、というより、「長期再発がない」状態にする、という考えがないと、甲状腺ホルモンを治療して10年経っている、ということが分かっていれば、測定するのに、ひょっとしたら一手、二手遅れる可能性があります。 循環器内科だけをしていては分からないことでしょう。

1/3が治療によって甲状腺機能低下症になり、1/3が治療に反応せず、外科的治療や放射線治療に回る、という感覚も大事です。

エコー検査では、まさに「再発したな」というエコー所見がわかります。

現在治療中が終わった方でも、「治った」という意識を持たず、動機などがあれば、来院してください。 その時に、総合内科医でなくては、循環器内科では、対応に遅れることがある可能性があります。

徳島大学循環器内科の佐田教授の名刺の裏には「我々は患者さんを断りません」と書かれています。 大きく徳島の医療を変えたすごい偉人です。 本州からも徳島大学の循環器内科には研究や研修でこれれる若手医師が非常に多いのも事実です。

医師国家試験になってから、誰を目標にするか、もしくは自分に対しての厳しい規律をつくるか、の2つのうちどちらかがないと、必ずドロップ・アウトする、と思っています。 私の父親である、福田善晴医師が、素晴らしい人格者であったので、私は医師に憧れ、その考え方に近づこうと努力しています。 父親がそこそこの医師であれば、私も勉強もしなければ、さぼることばかり考えていたと思います。

頭が良いから医学部に入った、だけ、の人は、そのうち、医師・医者ではなく、医療技術者になり、その技術の向上も元々なく、上がることはないだろうな、というイメージです。

自戒の念を込めて。

大野病院事件、加古川心筋梗塞事件、杏林大学割り箸事件が有名ですが、それ以前の1990年代から医療訴訟は多くなっており、救急患者を断る、命に関わる治療はしない方針の医師、が増えて来ました。 上記3つは、その引き金になった、という感じです。 もう大野病院事件から10年以上が経つのですが、この事件以降、お産をする産婦人科医が激減し、婦人科のみしたり、そもそも産婦人科医になる人が少なくなりました。 私は専門外ですが、この手術自体に問題がない、と判例ではでていますし、いわゆる常識的な手術が行われた結果、としか言いようがありません。 加古川心筋梗塞事件後は、循環器内科医で緊急カテーテル治療ができない病院では胸痛の患者さんを受け入れない病院が激増しました。 この事例から、ドクターズ・ディレイといって、適切に処置をしても、違う病院まで搬送するための時間がかかることから、最初から断った方が患者さんのためにもなる、という考えを医師全員(?)が持つようになりました。 割り箸事件後は、頭痛の患者さんにはCTが必須、MRIもとったうえで、放射線科の専門医が読影を緊急でしないといけない、という異様な雰囲気に医者の考えがなりました。 どの事例も、失われた命に関しては、本人はもとより、ご家族にとっては耐えられない事実であり、「こうしておけば大丈夫だったんじゃないか」という意見もあるでしょうし、私も思うところはあります。 どうしても私自身が医師ですので、医師をかばうような書き方になってしまっているのですが。
昔は、小児に頭部のCT検査は被曝の問題で、あまりしすぎるのはよくない、と教えられてきましたが、今の時代は「専門外は断る」「意味のない検査も含めてありとあらゆる検査をする」という、萎縮・防衛医療が主体です。 いい意味でも、悪い意味でも、医療がそうなった、とう事実は変えられませんし、今後もそういう流れになっていくでしょう。
私が医師になったときは、断ることが許されない病院ばかりを回っていたので(3大事件前後も関係なく)、私がとった手段は、専門外でも基本断らず、ありとあらゆる検査をして、その専門家と一緒に診る、という手段をとっていました。 例えば善通寺病院が断れば、違う病院まで30分以上かかるし、善通寺病院は全ての科が揃っているので、「断る理由」が逆にないのです。 放射線科の医師にも援護してもらいながら、自分でも専門外や画像を勉強することができました。 今の若い医師のなかには、現場で専門だけでなく総合的にみる医師は減って来ていると思います。

ガイドラインが大きく変わり、高齢者についてはかなり、高い値でもいい場合があるのが現状です。 この高齢者とは65歳以上を指すのですが、私個人的には寝たきりに近い方や認知症がひどい方もいれば、かなり元気な方もおられますので、一概に、64歳から65歳になったので、HbA1cは高くても良いです、とはならないと思っています。

低血糖が高血糖よりも怖い、とうことでガイドラインは大きく変わっていますが、HbA1cが8.0%以上が続いた方の心臓カテーテル検査の結果を見れば、ガイドラインも変わるのでは? と思う次第です。