放射線科の友人が言っていましたが「ラジエーション・ハウス」には放射線科医として困る描写や、ありえない描写がある、と。 なるほどな、と思うこともある面白い番組ですが、その筋の専門家からの視点は厳しいですね。

その放射線科医と話していて、「心臓のエコーだけは放射線科医はできない」とのことでした。

確かに、放射線科医で心エコー検査をしている人を見たことがありません。 しかし放射線科医は2種類いて、一般的なイメージの「診断医」と、カテーテルまでこなす「治療医」です。 さて循環器のなかでも、どの専門かは医師によって決まります。 全部専門だ、という医師は多分いないでしょうし、「言う」だけの「嘘」か、「本当の努力」だと思います。 ただし私の感覚で循環器内科の全ての領域を極めるなら、他の内科は捨てないと時間が足りないでしょう。

私の循環器の専門は、「心臓エコー検査」です。 これが私の医療の根幹です。 広く、感染症、癌、膠原病、甲状腺疾患、CT検査の読影、など色々してきた異色な存在だと私自身思いますが、心エコーの専門家は、エコーの数値から心機能が「何歳か」を言えないといけません。 それが言えないなら、心不全 stage A (症状のない心不全。治療が必要)を見逃すことになります。

自分の心臓が何歳か、知りたい人は来院されてください。 私の経験上、血圧、糖尿、肥満、運動不足、脂質異常症など、心臓や血管に負担がかかっている方は、実年齢より、心臓が年をとっています。

頸動脈で血管年齢もエコーをする医師は、わからないといけません。

悪くなる順番としては、血管年齢→心臓年齢、のような感じですね。

血管年齢は、EPA/DHA製剤で改善し、心臓年齢もEPA/DHA製剤や、RAS阻害剤(心臓を悪くするホルモンであるアルドステロン・アンジオテンシンII などをブロックするものです)、β-blocker(のなかで2種類が、交感神経の異常興奮を抑え、心機能を改善します)で治療します。

心臓年齢が悪い、と言うだけの技術なら、医師以外の技師でも言える人はいるでしょう。 ただ、その時に治療をどのようにするか、は「医師が知っていないと」その技師の能力は無駄になります。

心臓が悪くないか、腎臓が悪くないか、肝臓が悪くないか、甲状腺が悪くないか、(その他にもありますが)そして、降圧剤の1種である、Ca拮抗剤を飲んでないか、の順番に考えます。

どの部分が浮腫むかで悪い臓器はわかるのですが、原因がわからない浮腫みは、結構、薬剤性のことがあります。

Ca拮抗薬はアムロジンが有名ですが、長時間(24時間)型がこの世にでて、日本人の脳出血を減らした薬で、長生きには欠かせない薬となっています。

この Ca拮抗薬は、動脈は拡張させるも、静脈は拡張させないので、心臓から行ったきりの血液が、戻ってきにくい状態、となっているのです。 可能なら他剤に変更して、Ca拮抗薬を中止してみないとわかりません。

常に、薬が悪さをしていないか、を考えながら処方することが大事と思っています。

基本的に、「この薬では絶対にありえない」ということはないと思っていますが、もちろん例外もあり、例えば「ビオフェルミン」を飲み出したら血圧が上がった、というのは、「それは間違いでしょう」となります。 ただし、ビオフェルミンを飲んで、腸内環境がよくなり、食欲がでて、塩分を取りすぎて高血圧、という壮大な間接的なこともありえるかもしれませんが、直接的な因果関係医は否定しなければ、ならない場合もあります。

だいたい医学書は学会の時に本屋がくるのでそこで済ますのですが、この前の心リハ学会では本屋が全く来なかったので、街の本屋にいったというわけです。

しばらく怠っていた、CT検査の読影について、本を新たに書いました。

私が執筆した医学書が近くに2冊あり、置いてくれているんだ、と著者ならではの感覚で、嬉しく思います。

どの本も、裏技的な「実はね…」がないように思います。 なんで書かないんだろう、ということもあります。 まだまだ現役の人は手の内を明かしたくないのかな? とすら思います。 なんでそういうふうに思ったか、どこからの情報か、を書いたりしていると、非常にわかりやすく腑に落ちるんですが、、、

癌がない科、それが循環器内科です。 「癌をみたくないから」という理由で循環器内科を志望する医師も多くいるのが事実ですが、人それぞれで開業しないならそれもいいと思いますが、私には全く理解できません。 以前も書きましたが、徳島県では、「胃腸科内科・循環器科」というクリニックが多く存在します。 高知県ではあまりありませんよね? それは、徳島大学医学部では、以前の第二内科という医局が、日本の医局で「唯一」循環器内科と消化器内科をする医局だったからです。 今は分かれていますが、私が入局したときはまだ第二内科だったので、消化器内科の先生とも一緒に仕事をするのが普通でした(ちなみに当時の医局の教授も消化器内科が専門でした)

もともと京都で研修をしていて消化器内科を目指していて、循環器内科に興味がうつった私にはうってつけの医局だったわけです。

そんなわけで、学会で発表はしていますが、論文にはまだ出来ていない内容の、「40歳以上の糖尿病か境界型糖尿病があるかたで、検診をうけていない場合、初発の大病(虫垂炎とかではなく)が心臓病だった場合、5年間追跡調査すると、胃がんや大腸癌、胆嚢癌などが20%程度みつかる」という報告を、先月香川で行なった時に、とあるご高名な循環器内科の先生からメールで、「素晴らしい内容だった」というメッセージをいただき、非常に嬉しく思いました。

私自身は、治療方針の「ガイドライン」は非常に優れており、それにそった治療をすることを必ず心がけていますが、そもそも人間が作ったものであり、しかも循環器ガイドラインなので、「癌」については全く触れられていません。
土佐からガイドラインを変える、という意気込みで、一町医者から「自分の考え」を発信(output)できる医師が私の理想の町医者像です。

日本には6月以外には必ず祝日があるも、アメリカには建国記念日以外はありません。 土日が完全に休みであることなどで、解消されているのでしょうか? 留学中は大変つらかったです。 夏休暇で7日間、冬休暇は暮れから明けで5日間の休みをもらいました。 研究で行ったせいもあり、クラスが上の人や研修生ほど早く帰っていました。 例えばボスは朝8時に来て、15時過ぎには居なくなっています。 米国人の研修生も15時になったら「うずうず」しだします。 どうしたの?と聞くと、「あなたは怖くないんですか? 僕は電車移動なので17時までなんかいられません」 と趣味がキックボクシングな奴がいうほどです。 私は実際20時まで仕事していたこともあるし、1年で結果をだすには、結果をだすというよりは、頑張っているアピールの方が大事だろうと思い、土日のどちらかに来ていました。 そのせいで、AHAというアメリカ循環器学会で口述発表をしてもいい権利が発生し、論文にも載らない、という約束で了承していたのですが、名前もきちんとのせてくれています。

もうここまで来たから根性しかない、という留学の先輩の言葉には毎日助けられました。