それは、自分の専門が全く違う場合、です。 大きな病院内なら、他科の先生にかかるわけです。

先日、徳島県の精神科の先生の友人が「血圧が上がってきた。ケルロングでいいかな?」という相談があり、

「そんな薬はもう使われてない。 循環器内科にかかりよ」

ということで私の先輩の診療所にかかったところ、実は尿酸も高く、尿酸も低くするとされている、ニューロタンがだされ、

その後も測り方も指導してもらったみたいで、それだけでは血圧が下がらず、アムロジンが追加となり、尿酸も血圧も安定しているという。

私ならアバプロも尿酸値を下げるのでその薬なら、配合剤で2状飲まなくてすむけどな、と思いながらも、その辺は専門医の好みが出てくるところですが、ケルロング という発想は絶対に出てきません(ちなみに15年くらい前以上は流行ったこともある薬ですが、この薬を飲んでいて長生きできる、とか、臓器保護作用がある、だとかがないためすたれていったものと思います)

専門とするなら、その時代の最高の薬を提案できるのが常識だと思い、医学雑誌の購読や、論文を読んだり書いたりするわけです。 私自身は「書かないと、読めない、よって勉強にならない」という考えを教えられたので、あまり開業医ではしない論文を英文で書いています。 34歳で医学書を書いた、というのが私の自慢ではあるのですが、それ以降も論文を書き続けている、ということのほうが実は「継続は力なり」なのかな、と思っています。

これには3つの理由があります。1つ目は、利尿剤を夏に向けて減らした場合などに、心不全にならないか、をチェックするためです(または心不全治療を外来でしているときに、治療がうまくいっているかをみるには心エコー検査が必須だからです) 自分で治療をしていて、患者さんにも説明しやすいし、心エコー検査は決して安い検査ではない(米国では超音波専門医(私もです)がとるエコーは10万円で、それ以外の医師・技師がとる心エコーは1万円、と相当差がありますが、日本では技量が違っても一律です。1割負担の肩は880円ですが、3割負担の方には1週間後の治療経過をみるにはやや高い、と思っています)ということです。

もう一つは、大きな病院に紹介した後は、その大きな病院が3-6ヶ月毎に何かしらの検査をするために通う必要が患者さんにあり、その中に心エコー検査があると、実際に治療・投薬している私ども町医者としては治療がしにくい、ということがあります。 非常に言いにくいことですが、高知市内ではそういったことが多いと感じています。 香川の四国子供と大人の医療センターに勤めていたときは、カテーテル治療で入院中と、9ヶ月後の確認のカテーテル入院時にして、開業医の先生に治療を任せていました。 もちろんこれが全て良い、というわけではありません。 例えば非専門医、例えば消化器内科の開業医先生からの紹介で、心不全で入院となった後、治療が終わり患者さんをお任せする場合、再入院率が非常に高い(こういう風に採血、レントゲンで少しでも異常があればすぐ紹介を、としても、です)と感じており、その場しのぎの治療をする開業医の先生に関しては、半年に1回は医療センターに来てもらいチェックをさせていただくようにしていました(こちらからのアドバイスをあまり重要視せず、ずっと同じ薬を処方する場合などです)

最後は、大きな病院では分業制が当たり前になっており、毎回違う技師が心エコー検査をして、医師はそのレポートを見るだけ、ということがあるためです。 私は自分で患者さんの心臓の動き(難しい言葉でいうと、血行動態)をみるのと、又聞きの他院のレポート結果で治療するのは少し違和感を感じます。 もちろん、大病院での専門の医師や凄腕の技師がエコーすることによって、私だけが心エコーをみるのではなく、ダブルチェックの意味も大きいと思います。 ただ患者さんからしたら、その検査は○○病院ですることになっているし、この前した(紹介状でも、次回心エコー予定です、などがあります)などがあり、無料でしている、ということも理由の一つです。

紹介状で「次回は3ヶ月後採血と心電図です」という治療してもらって、2年以上(あるいは4年以上)安定しているにもよらず、3ヶ月(6ヶ月もあります)毎に、そういった検査をする意義があるのが疑問に思う患者さんがいることは事実です。 結果は問題ありませんでした、ということが「ほぼ」なのですが、骨粗鬆症があるかたの場合、アルブミンだけでなく、カルシウム値が必要だったり、甲状腺の治療中の場合、その項目が抜けていたりするので患者さんは再度検査をすることになります。

ペースメーカーのチェックに関しては、挿入した責任もあり(私もそうでした)、また安定化しない場合もあるため、しばらくは自施設でチェックするのは当然だと思いますが、特殊な除細動付きのペースメーカーでなければ(そうであっても)安定してくれば開業医でのチェックでも全くすることは変わりません。 もちろん、施設ごとの決まりごとはあると思いますし、それを全面否定するつもりなどありませんし、患者さんがが大きな病院と関わりをもっておきたい、という気持ちは非常に分かります。

ただ、心電図だけ、に半年に1回大病院にかかるのは、正直意味がないことが多いということもあります。 85歳の患者さんが、1日かけて心電図だけのために病院に行くのは、医療費の無駄であり、「しんどい」という声も聞かれますが、大病院に言われると行かなくてはいけない、という気持ちになります。 しかし医療関係者からするとその心電図の目的は? という疑問も残る場合もあります。

紹介後、ある程度の期間を過ぎたら、疾患にもよりますが、こういったことに注意して、前兆があれば紹介してください、というシステムが良い場合もあると思う次第です。

ちなみに、高知市内の事情はわかりませんが、善通寺病院(源:四国こどもとおとなの医療センター)では、私が赴任したときは、「当院の地域での役割は救急外来であるため、安定している患者さんは地域の開業医に任せるように紹介を」という医局会での院長や事務方の意見だったのですが(当時はペースメーカー外来はまだ大病院か、植え込みをした施設でしかできない状態でした)、経営はうまく行っていましたが、5年後には「安定している患者さんでもより「こども病院との正式な合併をするために」経営状況を考えて、紹介は極力しないように、という医局会のはなしがありましたが、それを守っている医師は私の知る限り、ごく一部の幹部のみだったと思います。 私は前医長が開業したので、その先生なら安心できる、ということで、また今までの通り、開業医の先生に救急できた患者さんが安定したら紹介をしていました(はっきり言うと病院の方針に逆らっていました) しかし、どんどん紹介や、とつぜんくる初患の方を誰がみるのでしょう? と思っていたのでそうしていました。 そのため、他科で見えない人も「内科」として、「循環器内科」の外来で待たせずに見るようにすることができ、「腹痛」の方が動脈解離というすぐに手術が必要な場合があったりした経緯があります。

こういったことを書く、言う、町医者はいないと思います。 苦言ではなく、良い面も非常にあると思います。 ただ、「心電図だけ」で「問題なしで、また3ヶ月後に採血です」ということなら、半年毎に心電図と採血(持病を考えての項目をいれてもらう必要があると思います)でもいいのではないでしょうか?

尿酸の論文を書いたり、新型コロナウイルス の論文を読みながら、連休中は溜め込んでいた本を3冊よんでみました。 その中に、「ブランド力」というものがありました。 何かに一点集中した方が、経営は安定する。 ということも書かれていました。

ただこれは医療において、とくに「内科」に関しては全く意味ないな、と思いました。高知県では、マイナー科で特殊な名前で○○ならここ、みたいな「ブランド」があると思いますし、正しいと思います(患者さんにとっては分かりやすいので) ただ、循環器というのは、実は、外科と内科の中間のようなことをする上に、実際は心臓カテーテルだけだった、とか、心エコー検査はするけどもほかはしない、などと偏った医師がいる(最近は心臓カテーテルだけ、がどうしても多いのは仕方ないことですが)ことも事実です。 肺炎をみない循環器内科医もいましたし、腹痛は苦手だからみない、という循環器内科医もいました。 これは最終拠点病院や大学病院では「正しい」のです。 しかし私は開業したら、どういう患者さんがくるのか、が分かった上で研鑽していましたので、大学や病院のエコー室に泊まり込んで圧倒的な人数をみて来ました(もちろん最初の方は専門医と共診ですが、最後は血球貪食症候群(血液内科です)は私、など自分自身で詳しくなった病気は一人で最終拠点病院でも見ることができていました。 徳島ではよくある、「胃腸科・循環器科」などは高知では、福田心臓・消化器内科だけだと思います。 私は消化器内科学会と内視鏡学会、動脈硬化学会に入っていましたが、どちらも入るのが遅くて専門医は循環器専門医と、超音波専門医だけしかとれていません。 徳島大学では、ダブルライセンスといって、循環器専門医と消化器専門医をとる医師が多いのですが、維持するためだけに学会に他人に行ってもらったりする(今はそれは許されないようなシステムになっています)のをみて、専門医を絞ったのですが、今になって考えれば、維持するには論文をかけばいいので、「とっておけばよかったな」と思います。 ただ、それは患者さんを安心させるだけの免罪符みたいなものであり、私は心臓リハビリテーション指導士をとっていますが、「これって医者にとっては価値ないな」と思っています。 今までしたことがない人が、99%の確率で受かる試験(しかもほぼ勉強しなくても、医師なら99%受かるのです)の専門医みたいなものに意味があるでしょうか? きちんと研鑽したものにだけ与えられるのが専門医や指導士という資格だと思います。
さて、じゃあ当院のブランドは何か? それはもう決まっていて、いろんな事情(大腸カメラをする機械がない、心臓リハビリより栄養指導の方が地域医療には大事など)で、消化器科と心臓リハビリテーション科(高知市(高知県と言ってもいいと思います)で外来の心リハを始めたのは私です)はいれませんでしたが スローガンとして「がん検査を疎かにしない専門的循環器診療」としました。 循環器内科には癌がありません。 なので、他の内科だと見つけてくれる癌を循環器科(しかも一点集中などしていると)だけしかみないと、「悪くなってから紹介」という自分が最もされたくない(自分の身内がそうされました)医療をうけることになります。

なので、中小企業には「ブランド力」が大事、という趣旨の本は面白かったですが、医療においては、とくに内科を標榜するなら、それは間違いである、と思います。
奇しくも、昨年、私の世界初の論文である、心臓病後に心臓リハビリテーションを受けている患者さんに癌検査(検診)をすると、22%の人が5年で癌が早期で見つかるという、ことが報告できました(今までは講演会で喋っているだけでした) 循環器は当然心エコーと心臓リハビリなら県内トップクラスであり、内視鏡検査(研修会に今でも行っています)やレントゲン・CTの読影(これは徳島大学とタイアップしています、勉強する機会を同時に作っています)も最終拠点病院でしていた腕を落とさず、より高い次元で行うようにできるクリニックがいい、と思っています。

日々、本当に新しい知見などがでてきて、前の報告が否定されたりしているのが現状なのが、新型コロナウイルス です。

ただ原理原則として、持病(基礎疾患)は必ずコントロールしておかないといけない、ということは重要です。

新型コロナウイルス が出てくる前も、風邪をひいて心不全、気管支炎を発症して心不全(これは集中治療室に入って治療になる確率がより高い)、という方は、血圧が高めの方に多い、というのが医学の常識です。 体がピンチになると、central volume shiftが起こって、心不全ということがあります。 これは体の中心に血液を集める、という防御機構が働き、処理しきれない心臓に血液が入っていかず、肺に水が溜まってしまうことです。 新型コロナウイルスの出現で、2009年の新型インウルエンザが今や定着しているように、今後定着する可能性がある、また定着しなくても今現在猛威を振るっているため、心不全になる要因が増えた、という状況です。

何が重要かというと、高血圧、心臓病、肺疾患、糖尿病などの持病をきちんと治療しておくことが、万が一(コロナウイルス にかかった有名人のセリフからすると「まさか自分が」と言っています)新型コロナウイルス (そうではない感染症でも)にかかった場合に、その感染症だけでなく、心不全、腎不全、心・脳梗塞を防ぐ可能性が高い、ということです。

最近わかってきたことは、サイトカイン(体内で産生される様々な機能をもったタンパク質、免疫にも関与)・ストーム(免疫系の暴走)が、新型コロナウイルス感染症では重症化の原因とされています。 このサイトカイン・ストームにも急性に起こってしまう場合と、ある程度時間が経ってから起こる場合があると報告されています。 後者の場合に持病の管理、が非常に重要です。

私自身は実際の患者さんを診ておらず、座学でしかレントゲンやCTのパターンなどを勉強してはいないのですが、濃厚接触の定義が変わったりと、国としても忙しい月(4月)だったと思います。

さて、微熱で相談センターに電話してもかかりつけ医に、と言われた方ですが、私からしてみたら多種多様な人と会って話す職業であり、嗅覚異常もありませんが、レントゲンではコロナウイルス を否定できないパターンでした。 患者さん自身もコロナウイルス ではないか?と思う節があったようで、私から電話をするとなんと「それはコロナウイルス かもしれないので、PCR検査をしないといけないですね」となった人もいました(結果は陰性)

3月末までに3人私の方から電話をすると「今日(もしくは明日)PCR検査に来てください」ということがあり、ホームページを変更したりしています(全員陰性でした) 自宅安静を県から指示されている方からも何人か電話で、「コロナと違うと思うから一応みてほしい」という方がいましたが、私が全員に顔をあわせて、また電話での対応ができないこともあり、申し訳ありませんが、自宅待機と言われている方に関しては、今すぐ診るわけにはいきませんので、「相談窓口に電話をしてみてください」という対応しかとれません。

また、意外と患者様が電話したら自宅待機したほうがいいです、と言われた人からの電話が多く、理由も熱だけではない場合もあります。 相談窓口が完璧でもなく、私どもではコロナウイルス かどうかは診断・治療ができず、またPCR検査自体も100%の検査ではありまんせん。 ただ、当院としては念のために、自分では問題ない、と思っていても、私や相談窓口からしたら、自宅待機、もしくはPCR検査がいい、ということが、全員や10人に1人ではありませんが、必ずいるという経験から、まずは相談窓口に電話をしてもらって、その結果を当院に、という手順をとらせてもらっています。 当院の判断に納得がいかない人もいるかもしれませんが、その手順だけをお願いしています。 本当にわずかな手間ではありますが、面倒で煩わしいと感じたり、嫌な思いをさせることもあるかもしれませんが、何卒当院での現時点での中にいる患者さんや職員を守るための、決まりごととして、考えていただければ幸いです。 局面は毎日変わっていっています。 何卒ご理解、ご協力のほど、お願い申し上げます。