この2年で私自身がかかげたスローガン「癌をおろそかにしない、専門的循環器診療」が、受診された患者様にとっては良かったことが多い、という印象です。 自分自身で癌検診をしている、癌検診は絶対にしない、という患者様は説明をした上で、その意志は尊重はもちろんさせていただきます。 声帯腫瘍、食道がん、胃がん、肝臓癌、膵嚢胞性疾患(膵癌になる可能性が高い)、腎臓癌など、ほぼ早期で見つけることができました。 将来は地域医療を、と思い、循環器内科疾患だけに固執せず、総合内科として「逆算して」最終拠点病院で診療に当たった結果が実を結んだ、と思っています。 膝関節注射で、劇的に膝のレントゲンが「手術適応」だったのが、改善した例もあります。
当初、消化器内科を目指していた私としては、循環器専門医として勤務しているときに思ったのは、循環器内科医は、本当に心臓や血管疾患に特化していて、腹痛に対処出来ない医師が多い、という印象をうけ、衝撃的でした。 これは大きな病院では、専門性が求められるので仕方ないというか、腹痛に関しては、消化器内科医を呼び、対応する、というのが当たり前になっているし、それが今の大病院では正しいと思います。
ただ、私が、「循環器診療、とくに心臓のエコーと心臓のリハビリテーションを専門としています」だけなら、救える命が救えなかった患者さんがたくさんいました。 大きな病院で循環器治療を終え、開業医のもとで普段の診療をするときに、消化器内科や総合内科(髄膜炎、がん治療、血液疾患など)、放射線のトレーニングがされてないと、循環器だけをする危険性を分かっていました。
ただ、全ての診療について、あまりにも浅い知識では駄目だと思って研鑽してきました。 今後も循環器以外だけでなく、他科のことに関しても研鑽していく所存です。

昔、四国こどもとおとなの医療センター(香川県)で、呼吸器内科の先輩医師に「風邪が最も難しい」と教えられました。

現在、「抗生剤は悪」という風潮があり、出来るだけ使わない医師が名医、とさえ言われています。 これは抗生剤の効果がなくなる耐性化の問題や、感染症で有名な岩田先生の本や講演をみた医師の意見だと思います。 そういったことも踏まえて、私の診断・治療にあたる姿勢は「逆から考えた方が」、患者さんの治療に最も適切ではないか、と思っています。 抗生剤を使うことを前提に考え、使う必要がない、と判断できる材料があれば、使用しない、というスタンスです。 有名な論文で、70歳以上、38℃以上、聴診で異常所見があれば、抗生剤投与という報告がありますが、私はこの論文、隙だらけだと思い、あまり信用していません。 65歳未満、平熱より1.3℃(私は1℃でも良いと思っています)未満、聴診の異常所見がなければ、抗生剤は不必要な可能性がある、という報告の方が実用的なのは自明の理ですが、ここにも落とし穴があります。 高齢者の風邪は、免疫力の低下や、長く生きてきてウイルス感染症(風邪ですね)にかかってきて治っているので、「喉」「鼻」「咳」の三大症状のうち、「咳」がメインで来られる方が非常に多いのです。 しかも免疫の関係で遅れて症状がでるので、風邪と思っていたら気管支炎だった、もしくは今後なる、ということを想像しなくてはいけません。 気管支炎は肺炎になり、死因の原因になるので、私ども町医者としての正しい初期治療が、その方の命を救う可能性もあります。 さて、抗生剤は風邪から気管支炎や肺炎の予防にはならない、と言う医師はいない、、、と思いますが、、、 そういう医師がいれば、若年者も含めた報告で、4000人に1人しかその恩恵にあたらない、という報告を英文で読まず、ダイジェストで聞いた内容で「予防にならない」と勘違いしているのだと思います。 肺疾患(これには40歳を越えると背中が曲がり、呼吸機能が低下するという、慢性肺疾患も含め、もちろん肺気腫や気管支喘息が主です)があったり、65歳以上の上記に当てはまる人は、39人に1人は抗生剤の内服で、肺炎の予防になります。 この数字、私は多いと思います。
しかし、効果のある、耐性がないと思われる抗生剤を使わないと、患者様にとっては意味のない内服になってしまうので、私は四国で初めて、一宮地域の抗生剤の「地域耐性化」について論文を英文で書きました。 高齢者にかぎり、4種類の薬は効果が明らかに弱い、という結果でした。 平熱を問診することも大事ですし、肺の音がきちんと聴取できるかが大事です。 私は心音について学んできましたが、心不全の時も、肺雑音が聴かれるので、雑踏とした外来の中では、肺雑音をちゃんと聴取出来る知識が必要だと思い、著書に音響学が専門の友人とディカッションして「理窟」を書いています。
患者さんは、「しんどくて」病院やクリニックに来る訳です。 市販の薬で良くなったり、安静だけで治っているなら、わざわざクリニックまで来ないでしょう。 その時点で、ウイルスが気管支の免疫を司る繊毛の力を弱らせているので、微生物や細菌感染にスイッチしていることをまずは疑うこと、が重要だと思います。 そういった患者様に市販の薬と同様かそれ以下の薬の処方で、果たして良くなるのでしょうか?
「偉い先生が言っているから」だけでは、その先生未満の治療しか出来ません。 自身で論文を吟味し、内科の重症例を大病院で経験しないと、偉い先生と同様か、それ以上の治療は出来ないと思っています。 私は高知県全域の治療はできません。 一宮地域の方の気管支炎、肺炎での重症化を必ず防ぐ、早い段階で治療することが非常に大事だと思っています。 異論がある方もいるかもしれませんが、気管支鏡や肺膿瘍、真菌(カビ)による肺炎などを、大病院で責任をもって「治してきた」ものとしては、初期治療が如何に重要かが身にしみています。

①きちんと所見がとれること(胸部レントゲンほど難しいものはなく、胸部CT検査を放射線科医のもとで最低1年は研鑽しないと、みれないと、思っています)

②一宮地域在住の方の抗生剤の耐性化を知ること(地域性も個人性も。地域性についての知識は今の所私しか知らない事でしょう、知っていれば地域耐性化や、未だに4種類の抗生剤が一宮地域で圧倒的に処方されていないはずですが、現時点でも他の地域とくらべて処方数が多い事が知られています)

③「偉い先生、の言いなり、の治療に凝り固まらない事」

④「抗生剤は肺炎の予防になる、という当たり前の知識と、使うべき時は内服をしていただく」

ことが重要です。 「私は抗生剤をできるだけ出しません」という医師の言葉は耳障りが良いのですが、断言しますが、「間違い」です。 医療に絶対はないとされていますが、これは「絶対に間違い」です。

循環器内科医のなかには、おおきな病院でカテーテルだけ、エコー(しかも心臓だけ)、心不全の治療だけで糖尿病も他科の医師にまかせる場合も大病院ではあるのです。 大きな病院で偉くなったからといっても、そういった状態になると、より専門だけ、となります。 私はそれが怖かったので、循環器はカテーテル治療、心臓を含む、ほぼ全てのエコー検査、循環器内科医が嫌がる肺炎を経験してきました。 積極的に担当医として診る事は、その科の医師も協力して治療に当たってくれます。 そこで得る知識や治療法で治しきると、今度は自分自身でどのように考えればいいかが分かります。 最初から自分のテリトリーを決めているのは良い事ですが、泥にまみれて、内科疾患をみてきた医師が開業するべきだと思っています。 専門に特化した医師もまた泥にまみれているのです、そういった医師は大病院で、まさに人の命を救う、という治療をされているのです。 中途半端な志で医師になってほしくない、と思います。 自分達の世代が20年後は患者になる訳ですから。

市の健診で、胃がん検診、があると思いますが、恐らく「バリウム」検査でしょう(高知では)。 私も昔は希望者にバリウム検査をしていて、胃にポリープがあり、位置的にも問題ないけども、健診で引っかかった場合、胃カメラで組織をとる必要もあるので、その病院でしましたが、、、 やはり胃のポリープは胃底腺ポリープで問題ありませんでしたが、、、 早期の食道がんが見つかりました。 私の造語ですが、ちゃんと胃カメラをすると、「咽頭・喉頭・声帯・食道・胃・十二指腸カメラ」となり、見落としの確率は相当低くなります。 上記以外でも、胃にポリープがあった、という方、食道がんや、声帯癌がみつかっています。 市の取り組みを真っ向から否定するわけではありませんが、他県ではすでに、バリウムか胃カメラを選択出来ます。 ちなみに、大腸のバリウム(実際にはバリウムではないのですが、似たような検査です)検査はなくなりました。 もう胃のバリウム検査もなくなる可能性が高いと思っています。 胃に不安があり症状があれば、当院で保険診療で、「咽頭・喉頭・声帯・食道・胃・十二指腸カメラ」を鼻からでもできます(現状もっとも新しく、最も細く、柔らかく、超早期の食道がんや胃がんを見逃さないように「三」色でみるカメラが誰にでも当たるように不公平感をなくし、うとうと点滴しながらすることも出来ます。
また、大腸がん検診は便の検査ですが、弱点があります。 これを「私は痔があるから」や「陰性」なので大丈夫、となってしまうのが怖いと思っています。 痔があっても同時に奥に大腸癌がある可能性、また大腸癌があっても陰性になる可能性があるので、「大腸癌や治療しなければならない大腸ポリープは確率的な存在は少ない」検査であることを説明が必要です。 通知の紙だけでは不十分でしょう。
さて、健診<検診で、より詳しくみるのが検診なのですが、腹部超音波で、人間ドック学会にそった検査をするので、腹部エコーは大動脈、膀胱、前立腺はみないことになっています。 これは非常に恐ろしいことです。 年に一回しているから、、、 高血圧がある場合、大動脈をみないことはナンセンスです。 また膀胱は半分が壁浸潤型といってエコ—ではポリープの形をしてないので、「大丈夫」といえないから、学会でしない方針でそのガイドラインにそっているから、という言い訳にしか私には聴こえません。 半分は分かる訳ですから見るべきですよね。 その上で、注意点を話すべきだと思っています。 さて前立腺はエコーでは癌が分かりませんが、PSAという前立腺癌をみつける血液検査をするときに、前立腺の大きさが非常に大事になってきます。 当院では全例にサイズを測定していますが、「小さいのにPSAが高い」のは癌の可能性が高いのです。
こういったことでトータルでみなければ、いくら無料でも、命にかかわることなので危惧しています。
※その検診の病院やクリニックでは、エコーやカメラ、バリウム検査を、担当医がしていますか? 他人がした検査の報告書だけで「(多分)大丈夫」っておかしいと思いませんか? しかも自分がおしえた仕方でした場合なら分かるのですが、大きな所では統一性にかけると思います。 実際にほっておくと、俗っぽい言い方ですが「ヤバいかも」という所見を紹介したときに、見逃されていました。 医師はその検査をしていませんでした(有能な技師にあたらなかった悲劇です)。 実際は再度無料でみていただくようにお願いし、経過観察となったのですが。
医療は確率の学問です。 ○か×ではありません。 どちらかの可能性を高めていって、最終的に○の可能性がほぼ100%というのが医療だと思っています。 心臓の治療でもそうです(なので、紹介する医師、医療機関は、患者さんに「どこどこ」でどこがいいですか?と聞いています。それ以外を患者様がせんたくすればもちろんそこに紹介しますが、レベルが高く、信用性がおける医師に紹介したいと思っています)
少し違和感を感じながら覚えながら、私自身は全力で取り組んでいます。

これは日本のガイドラインにはのっていません。 私自身、四国こどもとおとなの医療センターで、心臓超音波検査のチェッカー(他人がしたエコー検査を「もう一度」とりなおす)をしたり、自分自身がしたりしていて、論文を調べていて海外の論文でみつけた疾患です。
これは日本でも当然以外と多いのです、が、あまり語られることはありません。 はっきりとした定義も論文によって様々です。

大きな病院でも、上記の診断(日本語訳がないのですが、軽症拡張型心筋症、でしょうか)を私以外がつけているのを、現時点ではありません。 正常範囲、という結果で帰ってきます。
しかし、最新の論文では、適切な治療をしないと、不整脈死がおこるなど、予後(長生き度)に差が出る、と報告されています。

何より、「知らないと治療も、経過観察すらしない」という結果になってしまいます。 これを私は危惧しています。

私自身が治療し、心臓の働きが戻る症例がほとんどですが、開業後、とある病院では、「治療は必要ありません。 1年後に経過をみます」ということがあり、患者様の不利益になる可能性があるな、と思うことがありました。
10年20年、もしくは50年以上先のことを考えて治療に当たらないといけないはずです。 「ほったらかし」の医療は、その分野が苦手な医師にみられることが多い様子です。
すぐに治療を、という訳ではなくとも、1年後ではなく、半年後に経過をみる、もしくは、半年間、薬を飲んで経過をみる、大きな病院では、なぜそういった心機能がわるくなったかの原因を調べるのが常識だと私は今まで思っていたので、不思議に思うことがあります。
「少し悪いけど、いいでしょう」といわれた方は、一度当院を来院してみてください。 本当に「いいでしょう」かどうかを、専門である心エコーを私自身がして、ご説明させていただきます(大きな病院では、ほとんどが技師が心エコーをして、チェックをせずに、レポートだけをみている場合が多いのです。 徳島大学ではそれは許されない行為でしたので、少しカルチャーショックを受けています)

聞きなれい言葉だと思いますが、「drug effect(ドラッグ・エフェクト)」というのは、似たような種類の薬で、このカテゴリー別の作用を示します。 細かいのが「class effect(クラス・エフェクト)」で、同じカテゴリーの薬でも、作用が違う、という点です。

私は当然「ドラッグ・エフェクト」は意識し、さらに「クラス・エフェクト」を日々、論文や研究会、自身の研究結果などを意識して処方するようにしています。 というか、これは当然のことです。

例えば、ARBという血圧をさげる薬のカテゴリーがありますが、腎機能が低下している例には「アバプロ(イルべサルタン)」を使うようにしています。 他のARBよりも腎機能保護作用の論文が多いのです。 全てARBは同じだ、という考えは間違っています。

Case by caseで、その人にあった処方をするのが、当然だと思い、日々精進しています。 ただ、患者さまの考えも尊重しながら、はいうまでもないことです。