ビジネス本では、「何でもトライしてみて、上手くいけばノウハウが分かってくる」という意見があります。
イチロー選手や三浦知良選手のような、一つのことだけをするのは、限られた天才のみ、という意見でした。

これは企業の企画ではいいかもしれません。 ただ、医師という職業は、「職人芸」だと私は思っています。

見切り発車で、したこともないことを「専門です」は論外で、ノウハウを学ぶ、、、患者さんを実験台としか思っていないように感じます。

医師にはその人の歴史があります。 さぼった医師が開業しても、何もできないので、流行りのものに手をだして、研鑽もしてないのに「専門です」といって、続けて行けばいずれ専門になる、という考えには賛成しかねます。

病院などで、多くの他の医師や重症例を経験しないと、応用がきかないからです。

心臓リハビリテーションは、循環器内科を開業するときに、実に簡単に「専門」と標榜することができる流行りの治療法ですが、本当にその医師が、開業する前に専門としていたかどうかが今後は問われると思います。 いくら期間がながくなっても、本当に軽症の人しか治療してはならないと思いますし(経験がないから)、軽症の人のなかにも重症が潜んでいる事に気づかないからです。

お花をいただいた方、有り難うございました。 高知新聞社さんからも2面の広告欄に無料で載せて頂き有り難うございます。
さて、新聞にも書いたのですが、私どもの「癌検査(検診)を疎かにしない専門的循環器診療」は変わっていません。

私が循環器だけをみていたら、自分でがん検査をしない人もいて、腎癌、胃がん、食道がん、声帯腫瘍、肺癌などはそのままになっていて、寿命は短くなっていたと思います。 一宮地域、またきずなクリニックにかかっていただいた患者様の健康寿命を高知県一にすることが私に課せられた使命だと思っています。 他には認知症(専門をうたっている先生のなかにはご家族に起こりだすエキセントリックな方もいて、内部事情を知っているとそこには紹介しないのですが、患者様から紹介希望があればしています)、また糖尿病の治療では、中規模病院の専門外来で良くならなかった方が当院では今の所「必ず」良くなっています。 大規模病院と比較しても、腎機能や心機能を悪くしない、脳梗塞にならない治療は勝っている部分もあると思います(もちろん競い合う訳ではなく、頼る部分が多く、きめ細やかな対応が、医師が私一人なのでできる、ということもあるということです) とくに「ある大規模病院」と比べて、明らかに心機能を改善する治療は、考え方からして婚本的に違うので、その大規模病院には紹介しないようにしています。 私自身が紹介されるレベルにいないといけないな、と思い研鑽していますが、大規模病院でも一人一人が勝手な治療で、組織ではなくなっている病院では、患者さんの心機能を個別に把握できてないのでは? と思い、その病院への積極的な紹介は辞めています。 私自身が、信用出来る医師、に紹介する事は、当然患者様の利益に繋がると思っています。

人間みな、医師も含めて、経験や、エビデンス(論文など)から、過去の失敗を後悔し、また過去に「何もしなかった場合と治療した場合、の論文で、治療した方が良かった」という報告のエビデンスで治療を行います。

しかし、これは所謂「後悔先に立たず」となってしまいます。 しかし現状は、「サベージ基準」の考え方、「後悔を先にしておく」つまり、想定される後悔を考えておく必要があると思います。 私が他の医師と同じように、ガイドラインに沿って、自身の統計や、過去の症例から学んだ事だけで治療するなら、医者はみな同じロボット、となってしまいます。

私はそれは「嫌」で、考え方自体をスイッチすることが大事だと思います。 それも、意識しながら、です。

10年後後悔するのは、今何もしないことだろう、という考え方、もしくは、今何かすることが1年後に悪い事になるかもしれない、と、後悔というか、想定をする考え方です。 患者さんが得られる利益を最高に(これを「マックスミン基準と言い、多くの人・医師が考えている事だと思います」)、損をする確率を低く、そういう考え方を「最大機会損失・最小化基準」と言います。
後悔を先にすることで、想定することが増え、それは「予知」に繋がると私は思っています。

心機能が悪い患者さんや、腎機能が悪い患者さんに、何もせず、経過を1年見る、のは、また痛い目を患者さんにあわせて、「あー、やっぱり悪くなりましたね。 では治療しましょう」という考え方で、私は承服しかねます。 医学だけでなく、医学の考え方、を変えないと、ロボット医師の完成、となってしまうのが私は嫌なのです。

これは留学中にラボ(研究室)のボス(責任者)から言われた事です。 日本では、起こった事象を上司に報告して、そのことについて今後の方針を考えます。 しかし私の所属していたラボでは、「まず、私(ボス)とdiscussion(相談ということ)しろ。 でないと、result(結果)を先に持ってこられても、修正のしようがない」、という非常に合理的で、実験のミスも減るし、責任の所在が明らかになる(ボスということです)になる(つまり所属者は守られます)し、ボスが把握することが非常に大事なことだと学んだので、一宮きずなクリニックでは取り入れています。 何事も相談せずに、「こういう結果になりました」と院長である私に話すことは駄目だ、と。 その代わり、必ず迷ったら、私に相談をするように、「前にも言ったよね」は絶対に言わないように私(も、相談された人もそういう決まりにしています)は心掛けていますので、修正が患者さんの不利益にならないし、ミスはなくなります。
相談しにくい雰囲気の職場って嫌ですよね、私はそうはしたくありません。 逆に、誰もが勝手に動き回る職場を私は嫌います。 それは私が院長でも、働いていても、です。 そういった組織をたびたび見ます。 おそらくそうなっているんだろうな、と感じる事があります。
最高責任者、またはそれに準じる方に相談し、そのことがaccept(責任者のOK)されて始めて、物事を進めるべきです。 「お前に任せた」という上司がいたとしても、優れた部下は、必ず何事をするいしても先に相談するべきです。 そのことを「うざい」「面倒だ」という上司なら辞めた方が良いでしょう。 責任を取らされますよ。 前提に、「相談」→「報告」としておけば、「お前に任せた」には、先に相談がはいっているのです。 それが良い組織だと確信しています。
勝手なことを相談なしにする一定のえらい立場にある人がいた場合、その組織は崩壊するでしょう。 また、相談してこず、こうしてください、と言ってくる部下に対して私は話を聞いたり、注意しますが、注意しても聞き入れない人は、「なぜ、あなたは働いているんでしょうか?」と聴きたくなります。 これは、きずなクリニックの話ではないのですが。 話にもならない人物がいることも世の中で、上記全て私のいうとおりにことが進めばいうことはないのですが、そうは問屋がおろさないですね。
「自分の仕事さえキチンとしていればいいでしょ」という人もいるでしょう(実際に、私の話を聞かない人もいたことがあり、困る事も多々ありました) そういった方は企業・転職すれば良いと思います。 組織には迷惑をかけず、ひっそりと独立してほしいと思います。 優れた能力があるのだから。 何も組織に属する事はなく、自分の思った事ができる環境に身を置くべきでしょう。 組織に迷惑をかける辞め方は、業界では有名になるので、お勧め致しません。 これも広い、米国でも、その世界では有名なことです。 狭い日本、とくに高知では当たり前ですよね。

休み時間にスタッフもよく頑張ってくれています。 その頑張りに答える為に、私は明日最も看護師が期待する「心電図の見方」がテーマのスライドを作っています。 この作業は大変自分の勉強にもなります。 さて、心電図、、、「デンプスター・シェーファーのアップデイティング」を織り交ぜよう、など考えます。
医療は不確実なことが多いため、どうしても用心深い判断を、医師は求められます。 そんな時にこの法則をしっていれば、相手が考えている内容や、「あっ、この人ってなにも考えずに提案するし、場当たり的だな」と判断する事もできます。 例えば、 win – win の押しつけをしてくる場合は、相手側(私ども)が lose – win になるのかも、との考えがまわらず、no deal の選択が出来るのは、デンプスターの考え方から導きだすことができます。

さて、前置きが長くなりましたが、心電図においても、他の検査においても、分からない部分、がどうしても出てきます。 「統計学」を駆使して過去にあった同じような疾患群ではどう診断したか、でいいじゃないか、という医師もおられるし、経験則で診断・決断を下す医師もいると思います。 非常に優れた医師で、私が分からない部分についての見識を持っている場合ならそれで良いのですが、だいたいが分かってないけども、今までの経験上大丈夫だろう、という自己の統計や多くの経験から診断がされているように感じますが、私は、この患者さんにとって、過去の統計と同じことが原因で起こっているならその考え方もあり、だと思いますが、そうではなさそうだ、と思ったら、用心深い決断、具体的にいうと、1年後になにもせずに様子をみる、などではなく、最低でも3ヶ月以内に経過を見ます。 その場合、最悪のケースを想定して、薬のリスクも考え、副作用がでないようにして、投薬して経過をみて、分からない部分が、判明した時に初めて、診断します。

大きな論文で、6分以内の心房細動は無視してもいい?とか、12時間以内なら心臓内に血栓は出来る確率は少ない、などがありますが、それこそ、その人のもつ個別の他の疾患などを考えて、話し合いの結果、最も患者さんがリスクが少なく、えられる効果が非常に良いものである、と判断すれば治療をすることとしています。 何度も高価な検査は出来ないし、しても構いませんがえられる結果が月に20回しても、残りの11日で発生していれば、と考えることも大事だと思っています。 そのために、心電図だけでなく、心臓超音波検査など、他の検査をおりまぜて、不確実か確率を高めていく訳です。
心電図は大体が分かっているパターンが多いのですが、明日のレクチャーでは、「私はこう心電図を3秒でみている、がしかし、絶対に悪い疾患を落とさないように心掛けていること、その場合は3秒ではなく、1 -3ヶ月、もしくは数年の経過をみることも大事」という内容にしようと思っています。