医師になって、まだわかかりし頃に「動脈硬化」ってなんなの? と、他科の医師に聞かれたことがあり、すぐに答えられませんでした。 私の専門は循環器なのに、、、 それからは、「言葉」の定義にこだわっています。 医師も知りたいことなら、患者さんも知りたいことだろうし、よくよく考えたら、専門領域において、言葉の定義を言えないのは恥ずかしいものです。

「動脈硬化」とは、私はいろんな英語の論文のなかでもレヴューという、総説で、動脈硬化をいくつか調べて、私なりの説明ができるようになりました。 動脈硬化には3つの要素があり、まず動脈壁が硬くなり、そのため伸展性がなくなり、その結果いろんな臓器に血液が送りにくくなった状態のこと、です。 なので動脈硬化は怖いのです。 硬くなった状態は「治せます」。 伸展性もある程度「治せる」か、悪くならないように維持できますが、臓器不全になってしまうと元には戻りません。 治せない状態で、現状をできるだけ維持するしかないのです。 つまり動脈硬化の定義を知っていれば、わるくなった状態から治療に入るのは患者さんのためになりません。 お金の話になりますが、結局最後に損をすることになります。

「心不全」は、心不全の定義が今年かわり、よく分からない変な(私は馬鹿馬鹿しくてウロ覚えですが「徐々に心臓が悪くなっていく病気」…huh
私の定義は2つで、その定義にそうと、3つに分類されます。 肺に水が溜まって息苦しい状態、もしくは、肺に水が溜まろうが溜まってなかろうが多臓器に血液を送り出せない状態、の2つです。 3つの分類は、肺うっ血の心不全、多臓器不全の心不全、肺うっ血も多臓器不全もある最悪の心不全となります。 図に書いて説明もできます(これを世界初で図と線で書いたのが、私の著書「恋する心エコー」です。 2作目の実践編では、線が増え、漏れがないようになっています)

病気の理屈がわかってないと、治療などできる訳がありません。 とくに循環器内科は、悪くなった症例を大きな病院でみることが多く、地味な言葉の「動脈硬化」の定義などには興味がないかもしれませんし、開業医でもそういう方もいるでしょう。 しかし、私のような一町医者は、「動脈硬化」の早期から治療を始めること(薬だけでなく、栄養指導や、検査だけをして、その方の治療意欲を掻き立てるのも立派な治療だと思っています)が、10年後の臓器不全を防ぐことになります。

物忘れがひどくなり、認知症ではないか、認知症テストをうけても点数が低いので、認知症です、の診断は早計です。
治る「認知症」を、除外することが内科医では大事なことです。

一般的に、甲状腺というホルモンが欠乏していたり、頭部CT検査で硬膜外血腫(何かの拍子に頭を打って、頭蓋内に血の塊ができて、脳を圧迫している、という2つが有名ですが、その他にも、「治る」認知症があります。

まずは、「正常圧水頭症」です。 CT検査では、アルツハイマー型認知症とは、違った所見があり、Evans indexといって簡単な計測をCTの画面で行うことや、頭頂部のCT画像で特徴的な所見があるため、脳神経外科に紹介することで治る可能性があります。

また、これはCTをとれば分かりますが、脳腫瘍です。 なので、認知症を疑えば、採血検査や認知症テストだけでなく、CT検査(MRIも有用ですが、まずはCT 検査で十分だと思います。所見があれば、MRI検査をすれば良いからです。希望によっては最初からMRI検査を行いますが、診断基準でCT検査も推奨されています)が必須ということです。
その他には、かなり珍しいのですが、ずっと精神科病棟におられる方のなかに、「シーハン症候群」の方がいます。 10年精神科に入院していて、検査をし、投薬治療で劇的に治る病気です。

当院では、認知症を疑えば、認知症テスト、甲状腺機能の採血などに加え、CT検査を行います。 CT検査では、アルツハイマー型なのか、正常圧水頭症なのかを診断させていただきます。
認知症を決めつけないのが、第一歩だと思っています。

例えば、血圧ですが、年齢とともに血管も硬くなり、血圧が高くなる傾向になるため、降圧薬が増えていきます。 それを防ぐには年に1回の栄養指導をうけることが大事とされています。

その他、糖尿病についても私の論文内にて、糖尿病の薬を飲みだすときに「栄養指導をうけると」その薬本来のHbA1c低下効果が認められ、受けないと、ほとんど効かない場合もある、と報告しています。 つまり薬だけだすのが医師ではない、と言いたい訳です(ちなみに、適切な運動療法(この論文では心臓リハビリテーション)に参加すると、より効果が高まることも判明しました)

その他、市販の栄養剤などの相談も可能です。

もちろん栄養士も医師も完璧ではありませんが、自分自身がもつデータにて、「栄養指導は受けたほうがいい」と、他人の論文をみて判断している訳ではないのが、一宮きずなクリニック院長としての、私の考えです。

当院では、やせ薬の処方も行っています。

現在、米国では、「満腹中枢」を刺激して痩せる薬を「エーザイ」が昨年より処方を開始しています。 日本でも「治験」が始まっており、近い将来日本でも処方できる可能性がでてきました。 その理由に、米国などでは、肥満が「疾患」として認める方向で進んでいるからです。
では現在日本ではどのような「やせ薬」があるのでしょうか?
一つ目はサノレックスです。 この薬はBMIという肥満の指標が35以上だと保険が効きます。 他には脂肪分をカットすることができる、「ゼニカル」という薬ですがこれは保険が通りません。 どちらも副作用もあるため、医師の管理下での内服が望まれます。

私自身はサノレックスの方が副作用のコントロールがしやすい、と思っています。
糖尿病の「尿に糖をだす」薬も、レアチーズケーキを食べなかったことにするので、2型糖尿病であれば、保険が効きます。 肥満の方は3-4kg痩せるでしょうし、肥満でない方でも心配されていた筋肉が落ちる、ことはないようです(私自身の処方による、統計結果でも筋力低下は見られていません。 日本人が論文ではないのですが、英文で、とある雑誌に、「逆に握力が上がった、2ヶ月で」と書かれているものを発見しましたが、眉唾です。 とりあえず筋力は落ちない、ということでいいと思います。

副作用も嫌だ、薬は飲みたくない、ならば栄養指導を聞いてもらうことですね。 (栄養指導も、何か疾患がないと聞けません)

肝腎要ともされ、最も重要なこと、という意味です。 脳も肺も腸も大事じゃないか、と思っていますが、とりあえずは肝臓、心臓、腎臓が重要視されている臓器のようです。 略して「肝心なのは〜」ということがありますが、実は私は使い分けています。 物事を大きく捉えるときは「肝心なのは〜」といい、物事を掘り下げて詳しく言いたいときは、「肝心要なのは〜」と言うようにしています。 理由は、要は扇子の付け根の部分をさし、特定の部位・部分をさしているからです。 そして、要をつけるときの臓器は肝臓と心臓にしています。 理由は、要にすでに腎臓の意味が含まれている、と私は感じるからです。
腎臓の傍糸球体細胞という細胞にたどり着く血流の多さで、ホルモンが調節され、血圧が決定されます。 つまり、要には腎臓の要素も入っているので、肝腎要は臓器がだぶってしまうな、と感じてしまうからです(恐らく私だけでしょうが)
循環器診療で肝心なものを、心機能とすると、それを知るための肝心要のツールは、「心エコー検査」だと思います。

心臓リハビリテーションで肝心なものは。心機能の維持・もしくは改善、とすると肝心要なのは、どのようにするのかを決定する医師を含めたチームですが、やはり最終責任者である医師ではないでしょうか? なので、私は医師が超重症例までを心臓リハビリの経験がないと出来ない、と危惧していましたが、紹介した先でそういう事態が起こっており、「やはりな」と思っています。 「全身が弱っているから心リハはしない」これはあまりいい傾向ではないと思います。 そういった方が対象患者様なのが心臓リハビリだからです。
あとは香川、徳島、愛媛を見てきましたが、開業医の先生が心臓リハビリを開始しているのが、10年以上前で、高知では私が、香川の善通寺病院(現:四国こどもとおとなの医療センター)で、心臓リハビリのセンター長として、責任をもって入院・外来の心臓リハビリを開設し、高知県では始めて外来(入院もですが)心臓リハビリを7年前に開始しました(もちろん高知ではあまり知らない先生や心臓リハビリに従事している方は知らないことでしょうが、事実です) この大きな病院、診療所での開設からした経験をもつ医師は非常にすくないと思われ、今まで私が知る中では私だけのようです(2018年現在)

診療所では、「要」なのは、いろんな職種がいないので、医師が最重要になってくる感は否めません(もちろん、関わっている職種全員が要でないといけないのですが) さて、ここ数年、高知県でも大病院が、入院患者さんだけでなく、外来でも心臓リハビリをするようになり、福田内科にも見学に来ていただきました。 「高知県では診療所でするところが少ないのが弱点です」という、診療所での心臓リハビリの経験のない方の学会での発言があり、悲しくなりましたが(せめて、しているところもある、くらいは言って欲しかったものですが(頑張ってしているなどのお世辞は抜きでも))、当院が開業時にしなかったのは、心臓リハビリテーション学会の規制が大病院では簡単にクリアできても、診療所ではクリア出来ないので開設しにくいことをしならいのかな? と思っています。
そのため、その学会では、まさに東西奔走した、坂本龍馬のごとく、ガイドラインや規制を変えるべき、と訴え続けた発表をした後の発言だっただけに、残念でなりませんでした。 義憤心があれば、医療者に投資する人がいるので、出資してもらい「心臓リハビリテーション専門クリニック」を立ち上げれば良いと思います(実際にそういう人がいます(責任をもって経験をしたか、見切り発車なのかは置いておいて)) しかし、数だけ「心リハ専門」が増えても意味はありません。 きちんと重症例を数年責任をもって経験しないと意味がありません。 そういった開業をしているところもあり、上記のような悲劇が生まれてしまいます。 なのでこの「高知の心リハ弱点発言」、私は大きな意味も持っていると思います。 まさに裏を返せば「高知の心リハは10年遅れている」と言っている発言であり、その方もそういう意味も込めてのメッセージだったのかもしれません。  しかし、私は外来の心臓リハビリには次のステップがあると思っており、開業医の先生が「見切り発車」でする外来心臓リハビリが「意味もなく増えるだけ増えて」、結局経験不足で患者さんのためになっていないことも分かっているので、質の高い、先を行っている心リハをしている自負があります。 なので、福田心臓・消化器内科での外来心リハは、決して10年遅れではなく、香川で私が勉強したことを持ち帰っているので、10年遅れ発言には当てはまらないので、先の発言は誰に向けて言ったのか… 「意味なく見切り発車で増えても意味がないんだぞ」という趣旨で言ったのなら、とても頭の良い発言で、先を見ているな、と感心させられます。
最後に、医師として心臓リハビリに関わってきて、恐らく世界初の発表となったはずですが、心臓リハビリを受けている人のなかで、検診などをうけてない方は、5年以内に悪性腫瘍が早期で見つかります、見つけてきました。 最近「腫瘍循環器学」といって悪性腫瘍になったあとの心機能はどうか、血管はどうか、という分野がでてきましたが、私の発想は全く逆です。 心臓病があるなら、糖尿病に近い体質になりやすく、免疫能がおちてしまい、癌になりやすい、もしくは既にもっていて、心臓病になった、と考えています。 「癌検診・検査をおろそかにしない、専門的循環器診療」が私の信条ですが、私の心臓リハビリテーションの「肝心なこと」は、心臓病ばかりに固執しないこと、です。 そういった意味で、医師が、心臓リハビリの「要」と言えると思います。