一時期(今も一部では)、「投薬」は、患者さんに薬を投げる、「投棄」のようなイメージで、失礼にあたる、と言う先生もいました。 そこで「与薬」と言う言葉がいい、となった時期があります。
しかし、私は「投薬」は悪い言葉ではないと思います。 「投票」のように、「投(な)げる」イメージではなく、「投(とう)ずる」と考えれば、患者さんの病気に対して、立ち向かう積極的な治療姿勢だと思います。

「投ずる」とき、医者がピッチャーだとしたら、病気がバッターだとすると、そのバッターの弱点をしっておかないといけません。 医師の「知識量」が投球スピードで、「経験」がコントロールだと思います(分かりにくい表現ですね、すみません) 「医師自身の解析結果」や、「患者さんの背景を知ること」は良い変化球を投げることができることにつながると思います。

患者さんの置かれている生活状況もしらず(聞かず)、経験もしたことがない、となれば、本や研究会への出席だけの「知識量」だけとなります。 いくら球が速くてもノーコン・ピッチャーでは、病気を三振にはうちとれません。 押し出し四球で、じわじわと患者さんの病気が悪くなってしまうと懸念します。
例えば、糖尿病の治療薬を「投薬」するとき、薬の知識は当然もっていて、経験も豊富で、自身がその薬の解析を行っていて、さらに、どういった食事携帯なのか、などをしっていると、朝昼夕の3回の薬は難しい、とわかり、教科書通りの直球だけでなく、朝夕、もしくは夕だけ、朝だけ、などの変化球も使えるわけです。 心臓リハビリテーションを「経験」し、「自身の解析」をしていると、運動処方を、「無理のない程度に」とだけではなく、大きな機械をつかわなくても、具体的に「脈拍110回の運動を、20分」と言えるようになります。

当院では高知市で届け出している中では、無床診療所では唯一「管理栄養士」が常勤でいるクリニックです。 糖尿病専門のクリニックでもそういうところはないようです(パートで月の○日に、などで対応しているものだと思います。もしくは届け出をしていないか) つまり、来院された日に、栄養指導を受けることができます(からなずではありません) 糖尿病は一人の問題ではなく、家族の問題でもあるので、食事を見直すことは一家繁栄につながると思っているので、そういう雇用を考えました。 これは心臓病でも、コレステロールのことでも同じです。 薬よりも食事療法が基本です。
運動については、私は重症の心不全の方の「心リハ」をしていた経験から、心エコーをすることで、どの程度の運動が良いのかが分かります。 心エコーだけではなく、運動の内容や時間も「処方」することができます。 「歩いていますが、血糖がさがりません」これは過負荷といって、運動のしすぎの可能性があります。 難度の高い心リハをした医師はこういったことを見抜けるのだな、と自分の経験を通して思いました。 この方は歩く速度を遅くして、血糖値が下がりました。

また、糖尿病治療薬の最新の「尿に糖を出す」薬は、循環器内科医が最も使用経験が今の所多いのが現状です。 それは糖尿病学会が「処方するのを控えるように」と1年以上「御触れ」を出したからです。 私自身はこの薬剤での論文を3枚書いています。 良い点、悪い点についてです。 その論文の1枚は、薬剤のパンフレットに載っています。 海外ではこの薬は心臓病に良い、とされているくらいです。 使い方を間違えなければ非常に良い薬ですが、運動療法を変更したほうが良い、と発表し論文にしているのは世界で私だけのようです(論文とはそういうものです)
インスリン治療は3(−5)日の外来通院で入院することなく自分で打つことができ、血糖も測定することができるようになります。 疲れた膵臓を休ませるためにインスリン治療を外来で行うことができる技術は必須です。 その際に低血糖に絶対にならないように細心の注意を払っています。 インスリンが必要になれば、患者さんに「ここではみれないよ」では話にならないと思い、糖尿病専門医のもと研鑽してきました。 今でも糖尿病学会に参加することもあります(過去には発表歴もありますし、最近の私の論文は糖尿病に関するものが多いのも事実です) インスリンを導入した70代の女性が、半年間で内服薬に切り替えることができました。
最後に、糖尿病性心筋症をはじめ、糖尿病と心臓は切っても切り離せません。 また、当院では癌検査ができます。 糖尿病が癌になる確率を約2倍にすることから、糖尿病の治療だけではダメと思っています。
総合的に診る、ことが大事です。 専門医に私が紹介する糖尿病患者様は、インスリンに抗体ができている方、妊娠中の方、だけです。

当院では、一宮地域での診療所では恐らくですが唯一予約制を導入しています。 これは予約している方を優先的に診させていただく、ということで、「完全」予約制ではありません(歯医者さんなどでは「完全」予約制のところが多いですよね。また大きな病院も「完全」予約制以外は恐らくない、と思います)
ただ、緊急性があったりする場合もあるので、予約にはある程度余裕をもたせているようにして、緊急性がない方でも、予約外の方を先に診させていただくこともあります。
私は予約制にしたのには理由があり、予約した人は時間がある程度予測できる、当院では専門的な検査があるので予約をしてないとそういった検査を受ける方が大変なことになる、患者様の1年の計をもって治療にあたるとなると予約制が適している、ということです。 他にもメリットがたくさんありますが、上記が主な理由です。
ただ、お仕事の都合などで、どうしても予約ができない、という方もおられますので、お薬がなくなる前に予約を電話でとりなおしてもらうか、予約なしできてもらうようにご説明させていただいています。 予約の方の間にそういった方をみさせていただくようにしています。
一点、午前・午後の一番早い時間に予約の方よりも早く来院された方については、「早い時間が予約で埋まっていた」ということもありますので、検査がない場合などは予約の方より早く診させていただくように心がけています。 この場合に検査がその方にあったりする場合は、検査に要する時間などもありますので、時間の前後があることをご了承いただけると幸いです。

今年はいろんな事情でワクチンが少なく、かかっているクリニックでうてない、という人がいます。 私はある程度この事情が予想できたので、ワクチンを昨年より多く「一宮きずなクリニック」に納入していました。 多くのクリニックでも予想できていても納入できなかった、というのが実際のところだと思います。 私自身はかなり早い段階で納入の契約をしていたので、他院でうてなかった方が当院ならうてる、という情報をえた方が多く来院され、また当院にかかっている患者様の分も確保することができています。 ただ、先週土曜日からはさすがに納入の時期も不明になってきて、完全予約制とさせていただきました。 ただ以前から予約していた人の分は確保しています。 また当院で乳幼児の2回目の接種もできるように計算はしていますが、状況も変わる可能性があります。

さて、「インフルエンザのワクチンをうっても感染するんだろ、だからうたない」という患者様がいます。 これは間違っていないと現時点(10年前から私の意見は変わっていません)でも言えると思います。 なぜなら、ワクチンで出来る抗体は「IgG」という血液中で威力を発揮する抗体です。 感染するのは、口の中や鼻の粘膜からです。 その部分の免疫を担当しているのは、「IgA」という抗体なのですが、ワクチンではIgAは産生されません。 なので感染率は同じなのです。 ドクターによっては「かかりにくくなる可能性はあるよ」という意見もあると思います。 間違ってはいないかもしれませんが、詳しく論文を読むと、統計学的に少なかった可能性があり信憑性には疑問、と書かれています。 つまり、インフルエンザに感染しても、ワクチンをうっているので普通の風邪と思ったり、病院にいっても、迅速キットも100%の検査ではないので、「陰性」となってしまうケースがあるからです。
理屈的には、「感染」の確率は同じなのです。
ではなぜワクチンを受けた方がいいのか? それは、感染し、血液中にウイルスが入った時に、重症化しにくいからです。 重症肺炎、脳炎などになりにくいからです。
インフルエンザワクチンを受けない、という主義の方もいると思います。 リスクを考えて、それはそれでいいと思います。
ただ、インフルエンザにかかった場合は、ご高齢の方などはすぐに医療機関に受診されることをお勧めします。 昨年、高知新聞のコラムに載せましたが、私は喉の奥をみることで、インフルエンザの可能性が高いかどうか、が判断できます。 これは自分で気づいたことですが、北海道の開業医の先生が論文にしていましたので、先をこされた笑、という感じです。 一般の内科医ではその所見はわからない方が多いと思います。 感染症専門医なら知っていることでしょう。
余談ですが、最近私は、風邪が今猛威を振るっているのか、治りかけなのか、が分かるようなサインが診断できることに気づきました。 このことはまだ誰も論文にしていません。 私は胃カメラをしているので、この所見の理屈に気づきました。 実は「インフルエンザは喉をみてもわからない」と、なんと内科学の教科書に「間違って?」書かれています。 インフルエンザの所見とあわせて、風邪の所見も、きっちりと見ていき、自身のスキルを高めていくことが重要だと思っています。

私は、全身を診たい、と思い、消化器内科で研鑽した後に、循環器内科で全身管理ができるようになり、心エコー検査を専門としましたが、「四国こどもとおとなの医療センター」では、循環器内科+全ての内科、を診ていました。 消化器内科(がん検査、がん治療含む)、血液内科(がん治療含む)、糖尿病内科(効果的なインスリン治療の導入や、中止も考えた治療まで)、呼吸器内科(カビによる肺炎や、特殊な肺炎、気管支鏡もしていました)、放射線科での研鑽などを、開業することが分かっていたので、「逆算」して、専門性は高めながら、専門以外も研鑽していました。 全ては開業後に、訪れた患者様の全身が診れるように、鍛錬をし、今も勉強する座学だけでなく、自身が「情報発信型」の医師であるように務めています。
かかりつけ医とは、、、 色んな先生の意見もあると思います。 私は、患者様の体の一部だけしか診れないのは、どうも「かかりつけ医」とは言えない、出来るだけ広範囲のことが適切に診断できること、が大事だと思っています。

なぜなら私の専門である、循環器内科には癌がありません。 癌検査や治療を経験(ここで言う経験とは、治しきるところまで、です)したことのある、循環器専門医は少ないと思います。
なので、当院では、「1年の計」を考えて治療することが多いです。 行き当たりばったりの検査などではなく、定期的に検査をすることが重要と思っています。 実際に、昨年は胃カメラで何もなかったかたが、本年は胃がんが見つかりました。 私が、血圧と心エコーだけをみて、薬をだしているのでは、何人もの方が、癌で亡くなっている可能性が高い、、、と思います。
もちろん、自分の守備範囲外のことは、大きな病院に任せたり、患者様の要望で、「私は検査はしない」ということであれば、その意向に沿った治療をします。 ただ、最善の治療を説明した上です。 検査を望まない方について、「手を抜く」治療も絶対にしません。 検査以外で「身体所見」を詳しく診て、治療にあたって行きます。

なので、どのような治療計画なのか、医師には言いにくいかもしれませんが、私の意見だけでなく、患者様の「私」の意見も、聞かせて頂ければ、それにそった治療計画を立てます。
全身を診ることの重要性、専門分野は情報発信型であることでさらに高めて行くこと、患者様の要望にたった治療

の三本柱が大事と思っています。

もし、私が「こうしましょう」と言ったことに疑問や、「したくない」といったことがあれば、忌憚のない意見をおっしゃって頂ければ、と思います。
※ただ、ワーファリンを飲んでいるのに、採血検査をしない、や、心臓弁膜症があり、定期的な検査が必要、胆のうポリープがあり、1年に一回は腹部エコーが必要、という特殊な場合は、医師である「私」の意見、根拠、を聞いて頂き、納得していただければ、幸いに思います。 私は、必要のない検査はしませんし、薬は少ない程いい、と思っていますので。 もし、「必要のない検査をされた」と思ったら、なぜ検査が必要か、できれば事前に、事後でも「なんで検査が必要だったの?」と聞いて頂ければ、お答えします。
恐らく、周囲の人は、その検査を、検診などでしているはずです。 それを私は自身のクリニックで、「検診」(保険がきかないので高く、異常があれば再検査になる)→胃がん、肝臓がんの可能性が高く毎年か2年毎に検査を当院で最初から「医療保険がきく検査」をしているだけの違いです。 検診には、もれがないようで、じつは何点か制約があります。 心電図やレントゲンも、悪くなっている最中の「正常範囲」なのかどうかが分かりません。 クリニックでとった心電図だと、「ここがこうだから、私の意見はこうで、今は異常があるんだけども、正常範囲、といえます」という説明ができます。 レントゲンも同じです。 説明付きか、なしか。
私のモットーは「がん検診を疎かにしない専門的循環器診療」です。 実際に開業後、そのモットーをもっていたから健康寿命が伸びた方をみると、自分がしてきたことは間違いではなかった、と思っています。