本格的に暑くなってきましたが、体調はどうでしょうか?

今年の糖尿病学会では、「尿に糖をだす薬」の「しばり」が緩くなり、今までよりも、糖尿病を専門とする医師が処方するケースが多くなると予想されます。 我々循環器専門医の方が先んじて処方をしていた、というのが世界の実情だと思います。 私自身は、この薬が効果を発揮するための処方前の予測因子を論文にし、またこの薬剤が筋力を低下させることはない、ということも報告していますので、処方が適切と思われる方に処方し、糖尿病が良くなった方には処方を中止したりしています。 また、先の糖尿病学会でも報告がなかったのですが、私自身の経験・解析で、よりこの薬剤の効果を引き出す投与の方法を、今回の講演で発表しました。 今後論文にするつもりです。

来週は、「心房細動」について、高知赤十字病院の先生と、一緒に講演会をする予定です。 私の専門の一つである「心臓リハビリテーション」は心房細動とは非常に相性が良いのですが、恐らく医師でも疑問に思っていることを報告して、聴講していただける先生方にとっても意義のある会にしたいと思います。
熱中症の方が何人かおられました。 水分摂取を心掛けてください。

「タバコ」はニコチン中毒でなかなかやめれません。 実は糖尿病もある程度、血糖値が高いままが続くと、「脳」が「あー、血糖は高くていいんだ」と勘違いしてしまい、血液中の糖が高いままになってしまいます。 これを「糖毒性」といって、タバコのニコチン中毒と似ています。

糖毒性の解除には、血糖を急激に下げすぎず、徐々に血糖値を正常に戻すことで、「解除」できます。 新しい糖尿病の薬、尿に糖を出す薬が期待されていますが、一番いい方法は、入院して食事の見直し、血糖値を測定しながら、インスリン注射をして、血糖値を適切にコントロールすることです。 「糖毒性」になってしまっていれば、「膵臓」がインスリンを「脳」からださなくてもいい、と働きかけられているので、正常に機能していません。 そこで、外部からインスリンを皮下注射して、脳と膵臓の機能を回復させる訳です。 ただ、既に膵臓の機能が悪くなってしまっている場合はインスリン治療が生涯必要(でないと死に至る場合があります)なこともあります。 しかし、膵臓の機能が残っていれば、糖毒性の解除でインスリンが必要なくなることもあります。
糖毒性をとるために、入院ができない方のために、当院では外来にてインスリン導入をしています。 低血糖にならないように、3−4回ほど短期間の間に指導をさせていただくと、安全に導入できます。

インスリン治療は膵臓を休ませる効果もある点で、糖病尿の治療薬を多量に内服するよりいいことがあります(コスト面でも実はインスリン治療の方が安いことがあります)。 また、インスリン治療がどうしても必要な場合に外来で導入できれば患者さんの負担も少ないと思います。
一番誤解されやすいのは、確かに生涯インスリンが必要な方もおられるのですが、一時的に使用し、その後は内服薬に切り替えすることが可能、また食事療法や運動療法で「治る」ことも知っておいて欲しいことです。

そして、糖尿病の方は、悪性腫瘍になる確率が免疫力の低下で高くなるので、肝臓をはじめとする、腹部エコーなどのがん検査が重要です。 血糖値イイネ、血圧イイネ だけでは、地域の方の健康を維持することは出来ないと考えています。

私は2050年まで皆様と一緒に健康でいられるように(私も含めてですが)、大きな病気にならない、なってもすぐ治療できる体制を一宮絆クリニックでは、大病院とも連携をとりつつ、頑張って行きたいと思っています。 (2050年を目標としたのは、私の指導医が掲げた目標で感銘をうけたので、書かせていただきました)

依頼内容は、主に血圧治療についてのことのはずでしたので、私も原稿を用意していたのですが、インタヴュワーは私の「いつ開業しても良いように逆算して仕事をしていた」という台詞に興味をしめしたようで、話は脱線気味でした笑
循環器内科にも専門があり、自分の持てる能力をどこに振り分けるか、という話や、その能力の総合値は一つのことをやり続ければ、違う専門についても知識や振り分ける最大の能力値があがること、また異なった科に振り分ける時は能力値が上がる、という漫画を例えにした話も雑誌の記者には良く分かってもらえたと思います。 大きな病院でサボろうと思えば実はサボれます。 しかし、開業を逆算した場合、胃カメラ(大腸カメラ)や腹部エコー、甲状腺エコー、頸動脈エコー、CTの読影技術は必要ですし、心臓リハビリテーション(心リハ)をするには重症例を経験しないと、「ドラゴンクエストで強い敵を倒さないと経験値は上がらない。 スライムばかりを相手にしても、決して到達出来ないレベルがある」という話も興味を持っていただきました。
血液内科・消化器内科・呼吸器内科の腫瘍を抗がん剤で治療し、デノシンという特殊な薬剤も何度も使用経験があり、気管支鏡で吸痰し、肺膿瘍・脾膿瘍(胸に心臓治療用のカテーテルを穿刺して治療しました)の治療、肥厚性硬膜炎による髄膜炎の治療、ネフローゼ症候群の治療をしていた循環器内科医でしたが、それらを「循環器内科」を同時に治療・経験する度に、循環器治療の幅がひろがって行くことが分かりました。
それらの経験が、基礎研究への興味となり、米国のフィラデルフィアに留学となったわけです。 開業後も論文を書き続けていました。 医者になれば、楽出来るのかな? と思っている昔の自分に言いたいのですが、医者になると、より勉強しないといけません。 もっと言うと、医学生の頃から勉強していないと駄目です。 医師になってから、自分を誤摩化すような行為(とくに私が苦労した心リハは奥が深く、経験がないまま、とはいわず、「専門で開業しました」、はサボった証拠ですね。病院時代からしている医師はサボっていません。他にすることがあるなか心リハの勉強をしているからです)は、サボった医師の得意技だと思っています。

この会は呼吸器と循環器(心臓外科)のスペシャリストの先生が毎年きて講演をしてくださる会で、非常に勉強になるため必ず出席して勉強するようにしています。

講演会のあと、講師を務められた京都大学の心臓血管外科の先生を囲む会に誘っていただき、高知大学附属病院の心臓血管外科教授、近森病院の副院長先生方や心臓血管外科の先生、高知赤十字病院の循環器内科部長の先生と一緒に食事をする機会を頂きました。 講演会では聞けないような内容は、非常に私の財産になりました。 こういった素晴らしい先生方との「雑談」を通しての医療の話ほど、日常診療に大事なことはないとすら思っています。
今後、循環器内科の診察や、心エコー検査、心臓リハビリテーションを行って行く上で、私の中では一つ階段を上れたと思えた素晴らしい会でした。

東京で、糖尿病フォーラムがあり、参加してきました。 ちなみに、最近は飛行機内でPCをしていても注意されることがないことに気づきました。

最新の知見を知ると同時に、論文の羅列を話す先生もおられましたが、実臨床はしていないのだな、と感じることも多い会でした。 私が疑問に思っている、論文(実はEditor to letterといって、論文ではないのですが)をスライドにのせて、「この薬は筋力がUPすると報告されています、と言っていましたが、違和感を感じた聴講者も多かったと思います。

筋力は、成長ホルモン、テストステロンという年齢とともに少なくなって行く2つの要因と、アミノ酸の摂取と運動という、いつからでも介入できる合計4つで増強します。 単に、糖尿病の薬を飲んだだけではUPすることはないと思いますし、その筆者も原因が不明で、糖尿が改善されたので、「行動変容」を来たし、生活の中に運動することや食事が蛋白質中心になった可能性がある、と書かれています。 つまり、スライドで話した内容は「過剰広告」となると思います。 これを信じた医師が、各県に戻り、「この薬は筋力も増やすかも知れないよ」と患者さんに話すことは非常に怖い、と思った次第でした。
医師になってから、数年はそのようなことが私にもあったのですが、私は、循環器内科と一般内科に加え、「臨床研究部」に現:四国こどもとおとなの医療センターにセンター長と2人ですが、配属されていたため、論文を書いたり、読んだり、難解な統計学以外などは独学で学んだので、「デビルズ・アイ」といって、「騙されないぞ」という気持ちで論文を読むようにしています。 今でも、自分がしている治療が本当に正しいのか、そういう心構えで、日々精進していく所存です。