頸動脈と頚動脈、2つの記載がありますが、恐らく正式なのは「頸動脈」です。 その道の権威の元で修行していて、「頚動脈じゃない!」と言われ続けたので(頚動脈が間違いだとは言い切れません)

頸動脈を超音波検査で見るとき、私は「血管年齢」「プラーク(血管がホースとしたら、内部にこびりついているゴミ)の有無・性状」「狭窄の度合い(手術の適応、薬物療法で脳梗塞の予防を常に考えています)」「ドップラーを使用し、心臓から頸動脈の端まで、と、頸動脈から脳内部の血管の細さ(詰まっていないかどうか)」を診ています。 椎骨動脈という、頚椎という骨の中を走行して、主に小脳を栄養している血管も診ることもあります。 これを狙って診に行って「描出が困難でした」というレポートを書く人(医師・技師)は、「私の腕は未熟です」と行っているものだと言われています。 なぜなら普通は必ず見つけることはでき(そこまでの技術がないのでしょう)、血流がない、ということは、血流が乏しいか、閉塞している、というレポートになるはずです。 椎骨動脈は人間に利き手があるように、右が発達していて、左はあまり機能していない、ということもしばしばあるので、血流が乏しくても「問題ない」ことも多いのを、頸部や脳のMRI/Aを診た経験が不足しているとわかります。 なので、すべての検査に言えることですが、一回うけたあと、二回目と比べることが重要だと私は思います。 とくに、EPA/DHA製剤という、サプリメントのような薬を飲んでいると、プラークが退縮することや、血管年齢がよくなっていることが分かります。
頸動脈を診ていると、必ず甲状腺もエコー画像に映り込みます。 私は甲状腺癌が疑われたら細胞診を香川の医療センター(四国こどもとおとなの医療センター)でしていたこと、甲状腺(もちろん頸動脈も)エコーの研修に何度も行った経験もありますので、「この画像なら大丈夫」「これは一度専門医に診てもらったほうがいい(きずなクリニックでは細胞診はしていないので)」と診断しています。 これは頸動脈と甲状腺は隣り合わせになっているので、わざわざ甲状腺エコーとしてみて、患者さんの金銭的な負担を増やさないようにしています(ただ異常があった場合は数ヶ月から1年後に、甲状腺エコーを頸動脈エコーのついでではなく、した方がいい、という話をさせていただくこともあります) ※頸動脈エコーがあくまで主体なので、甲状腺エコーをサービスで必ずするわけではありません。

一番大事なのは、頸動脈エコーの結果を、聴診器で想像できるかどうか、だと思います。 日常の診療で頸部に聴診器を当てる医師は今の所、私と師匠しかみたことはないのですが、「問題ない」と言える医師は少ないでしょう、なにせ聞いたことがないのだから。
頸動脈エコーも心エコーも無料ではありません、米国のように「専門」かどうかで金額が変わってくることもありません。 つまり「下手くそ」がやっても、値段は一緒なわけです。 ふだん、かかりつけにしている医師が、持ち運び可能なエコーで、これらのエコーをしているのは、「私はエコーは専門ではありません」と言っているようなものです。 循環器といっても得意分野があるのです。 サボった医師は一つのことしか出来ませんし、その一つを極めれてない人が、非常に多いと、大きな病院で働いていて思いました。 先輩の医師が開業するときに、したこともない「漢方科」や「心臓リハビリテーション科」を詠って開業することがあり、「お前、それやったことないだろう」と、怒りすら感じることがあります。 数年すれば「(開業してからの年数)私は経験が豊富です」と言うつもりなのでしょう。 私には理解しがたい医療行為です。 開業するということは「全責任」を自分で負うことです。 大きな病院では他の医師と相談しながら結論をだせます。 つまり開業してからの経験とは全く違うのです。 もちろん相当状態の悪い患者さんを診療所で診ることは出来ないので、「その経験は?」と問いたくなります。 尊敬する医師は、開業が決まれば、その医療行為を大きな病院で集中的に研鑽します。 なので、標榜に、循環器科、心臓リハビリテーション科、下肢静脈の手術をする、といった行為を周囲の医師が認めるわけですが、患者さんにとっては、エコーの技術、心臓リハビリの技術・知識などは、どのくらい「大きな病院」で研鑽したかどうかわかないことを逆手にとっているのだと思います。 かかりつけの医師にそういった質問も出来ないと思いますし、経歴をみてもそういったことは隠しています。 唯一、知る方法があるとすれば、「大きな病院での学会発表歴」「論文を書いたかどうか」でしょう。

前回、腎臓の検査結果について書きました。 今度はそれの肝臓バージョンです。

医師がどのように見ているかを簡単にご説明します。

肝臓は作られては壊れ、また作られては壊れ、を繰り返しています。 これが原則です。

そして、GOT(AST)とGPT(ALT)が肝臓の壊れて血液中にある数値です。

低いほど良い、となります。 正常値より高い場合は「最悪、ガンができているかもしれないので、超音波検査が必要」と医師なら最悪のことを常に考えます。 少なくても私はそう考えた上で数値を見ていきます。

γ-GTP(ガンマ・ジー・ティー・ピー)は良く「お酒を飲みすぎると上がる」と思われていますが、それだけでなく、脂肪肝でも上昇します。 つまり、アルコールと過栄養のオーバーラップでも上昇する訳です。

さて、高知は2012年の古いデータではありますが、2位の石川県を抜いて、県民2人がお酒につかう月額のお金がブッチギリで1位でした。 とても不名誉なことです。
γ-GTPは人によって上がりやすい人もいれば(アルコールに弱い)、同じ量を飲んだから同じだけ上がるわけでもありません。 「わしは、1日1合も飲んでない」(それでも毎日飲んで、1合弱とは相当な量なのですが)と言っても200を超す人もいます。 数値だけでいうと、200を越した飲み方は肝癌が突然できてもおかしくないほどの量です。 女性はアルコールに弱いので、40以下、男性は60以下で飲むのが良いでしょう。 そのためには休肝日をつくって、一回のアルコールの量も減らさないといけません。 ※ちなみに日本酒1合毎日は食道癌のリスクを、4倍にします。 そこのタバコが加われば最悪です。 胃カメラで食道癌をチェックするべきです。

さて、GOT、GPTにもどりますが、どちらも正常値より上昇して、GOT < GPTのパターンだと我々は脂肪肝をまず疑います。 理由は慢性的にじっくりと肝臓が壊れているので、血液から出て行きにくいGPTの方が高くなる、ということです。 逆にGOT  < GPTだと、薬剤性かアルコール性を考えます。 脂肪肝+アルコール性はどちらのパターンも取りえます。 めずらしい病気である、「自己免疫性肝炎」なども考えます。

GOT、 GPTが100を超えるようだと肝炎を疑います、ウイルス性肝炎などです。 200以上だと恐らく黄疸(体が黄色くなる)も出ており、本人の「だるさ」の症状もでているでしょう。 超音波検査、(造影)CT検査、腫瘍マーカーなどで問題がなければ、原因(アルコールなど)を中止することで劇的によくなることもあります。 糖尿病がひどく、アルコールも飲んでいた患者様で、禁酒し、インスリンを導入した結果、やせ細っていた体は正常の体型になり、食欲不振も戻り、血糖値も正常になり、インスリンは中止になった例もあります。

最後に、実は血小板数も医師は見ています。 肝臓が悪くなれば、肝臓に血液が行かなくなり(行っても処理できない)ので迂回路として脾臓をまわって心臓に戻ります。 そうすると血小板の数が減ってきます。 昔は10万以下でしたが、最近は12万未満だと、肝炎ではなく肝硬変という肝臓が硬くなってしまって、もう治らない状態になってしまいます。 肝癌の可能性がぐっと上がってしまいます。

こういったアルコール性で肝硬変になる方をへらすために「お酒は土佐の文化じゃき」「返杯は当然」は、「あー、そういや昔そういう文化があったね」とするべきです。 自分だけでなく、他人の健康を害しています。 知事や県会議員にもお願いしたいところです。 本当に恥ずかしい文化です。 大学生のサークルではないのですから。

ちなみに私は「大事な席では飲む」、しかし出来るだけ飲む量は減らす、できれば飲まない、というようにしています。 何をもって大事とするかですが、お世話になっている方が酒好きの場合は断れない、みんなが飲んでいるのでノリが悪いと思われたくない、というのが本音でもあります。 お酒を飲むと、その日勉強を夜できなくなるのが、私にとっては本当に辛いことなのです。 最近はそうしているうちに、酒にも弱くなってきました。 今後は「アルコールは飲めない」と「言える」日がくるかもしれません。

寒さによって(寒冷刺激)、人間の体は熱を逃がさないように血管がギュッと閉まり、熱を逃がさないようにします。 高血圧の人は血管が硬いため、正常の方よりもこの影響を強く受け、血圧が上昇します。

さて、血圧の薬を飲まれている患者様へ。 血圧の薬の説明はうけたことがあるでしょうか? 私は必ず、現在使用が推奨されている薬をすべてあげ、なぜ薬が効くのか、またなぜこの薬を処方するのか、を説明するようにしています。

時間は限られているので、ものすごく細かいところまでは説明しないのですが、大まかに説明している内容を書かせていただきます。 処方が決まったら、その薬の副作用を説明するようにしています。

「現在、血圧の薬は4種類あります。血圧が上がらないようにするホルモンを調節して、さらに心臓やいろんな臓器を保護する作用を持つ中等度の強さの薬(ARB(エー・アール・ビー))、血管を拡張させて血圧を下げる薬(CCB(カルシウムチャネル・ブロッカー))、古い薬2種類が最近見直されてきていますが、尿中に塩分を出して血管をゆるます弱い作用の薬(利尿剤のうち、心不全に使うものではないもの)、脈を下げて心臓から血液が出て行くのをゆるやかにして血圧を下げる弱い作用の薬(β- blocker(ベータ・ブロッカー))です」

と説明しています。
実は上記4つ以外にも血圧を下げる薬はありますが、基本は上記4つです。

ARBとCCBは誰が出してもそんなに違いはないだろう、と思うかもしれませんが、ここに循環器専門医のセンスがでてくるところだと思います。他の薬に対してもです。高血圧の患者さんを見ていると、この薬がベストだな、というのがわかってきます。心エコーをしていたりするとより明確にわかります。 例えば、大動脈弁逆流があるのに、血圧をあまり下げなかったり、脈を遅くしたりする薬をチョイスするのはセンスレスです。逆流量が増えるからです。 CCBで代表的なのは、アムロジン、アテレック、カルブロックの3つです。アムロジン標準量が5mgなのですが、同じ標準量でアテレック10mgがありますが、効果はアムロジン3mgでしょう。カルブロックは16mgですが、アムロジン3.5mgくらいです。 ただ、アムロジンは血管を拡げすぎて脈が早くなってしまうことがあるのですが、アテレックとカルブロックはそういうことがありません。 つまり、脈が遅めの人にはアムロジンは良い選択ということにもなります。

5年ほど前、レニン拮抗薬という、発売されて1年で危ないから使わないこと、となった薬を含めた全国の勉強会に参加したことがありました。 なんと、演者は500人の医師が聞く中、一人の開業医の先生でした。 そこで「私は、レニン、アンジオテンシン、アルドステロンを抑制したい。 だから、レニン拮抗薬、ARB、ACE-I(ARBと似た薬)、アルダクトン(利尿剤の一種)の4剤でコントロールできない場合のみ、他の薬を使います」という何ともエキセントリックな内容。 すべて、血中のK値が上がるので、この先生の言いたいことや理論はわかるのですが、その処方に理屈はあってもエビデンス(証拠)がないので、私は賛同しかねました。
私が考える高血圧の薬の正しい処方は、少ない量から処方し、自宅血圧を重要視し、一つの薬だけを増量しないこと、だと思っています。

選挙と重なったり、台風の影響は高知では無視できません。 9月の台風が拍子抜け(高知市内では)だったので、余計に自然の脅威を恐ろしいと思います。 備えあって憂いなし、でしょうか。

さて、この備えは健康にも言えることです。 採血検査を健診や病院で行っても、記号と数字の羅列でわかなない、という方がおられます。 私もその場でたとえ話で説明するのですが、やはり数ヶ月すると毎日携わっていないことには疎くなってしまい、「これはなんだっけ?」となるのは当然と思います。

今日は一つ、腎機能の検査についてご説明させていただきます。

主はCre(クレアチニン)と、eGFR(イー・ジー・エフ・アール)でしょうか? 加えて、BUNもあります。

CreとBUNは血液中のゴミ、と考えてください。 Creが1.0になるとゴミが溜まってきている、2.0になると相当たまっている、5.0になると透析の準備(腕に「シャント」と呼ばれる、透析するときの血管の手術をすること)をしないといけません。 6.0-7.0で透析を開始しないと、心臓が止まってしまいます。
eGFRはCreから年齢・性別から算出された値で、ゴミを押し出す腎臓の力、と思ってもらって良いと思います。90以上が正常、60〜89が保たれている(軽度低下)、31-59は腎機能が中等度悪い、30以下は相当悪い、という感じです。 日本人でなんらかの慢性疾患を持っておられる方は、eGFRが60-89の方が最も多いとされています。 この時点では、あまり症状がでないことも多いので、採血検査で初めて判明することがあります

Creは濃度ですので、脱水のときは高くでます。 測りなおすと、eGFRが70だった人が90以上で正常、ということもあります。
さて、治療ですが、まずは塩分制限です。 その次、または同時に高血圧、糖尿病(、最近は脂質異常症も)などの治療が大事です。 運動は有酸素運動が推奨されています。
なぜ、腎機能が低下したかを、自宅血圧、糖尿病の検査、超音波検査などで腎臓を直接みること、が重要です。
ご不明な点がございましたら、医師に相談してください。

医師によって意見が違うと思いますが、私は、ワクチンをうけても「罹患する(かかる)」確率は同じだが、「罹患しても」重症化しにくい、という意見です。 (※ただ、根強い「罹患しにくい」という意見や報告もあり、確率を全くの同じとは言えず、かかりにくくなる可能性はあるのかもしれません)

ワクチンをうけたのに、罹患する確率が同じ、には明確な理由があります。 医学部の授業を受けて考えればすぐに分かることですが、口の中の粘膜の抗体はIgAというものが担当しています。 ワクチンで出来る抗体はIgGといって、血管内にあるものなので、粘膜への感染は防げないが、そこから血液内に入っても重症化しない、という理窟です。 他の説明や理窟は私は聞いていても、あまり納得ができるものが今の所ありません。 もちろん私は感染症専門医ではありませんが、「なんとなくかかりにくくなるよ」という根拠がない説明をうけて、ワクチンをうけるのと、理窟を聞いてうけるワクチンとでは、その後の生活スタイルが変わるはずだと私は思います。
なので結論としては、インフルエンザワクチンはどこでうけても一緒「ではない」、ということです。

持病を持つ方が、インフルエンザを甘く見ていると(診られていると)非常に危険です。 かかりつけ医も、そういったことを踏まえて考えた方が良いでしょう。