現在尿酸を下げるには食事、水分摂取などを改善することが重要ですが、内服薬について私なりに説明したいと思います。

現在、昔からあるフェブリク、と、トピロリック(ウリアデック)が主な薬剤です。 ユリスという薬もありますが、2番手の薬だと考えています(効果を示す場所が違うからです)

どちらも、Xanthine Oxidoreductase(XOR:キサンチンオキシレダクターゼ)という酵素を抑制し、尿酸を下げます。
(酵素とレセプターの違いですが、酵素は家庭なら原材料を変更するミキサー、レセプターは刺激が加わって細胞内に伝える、自動式電子レンジのボタン という感じです)

フェブリクとトピロリックはXORを抑制してプリン体が尿酸に変わるのを防ぐ薬剤です。 大きな違いはフェブリクは1日1回、トピロリックは1日2回という違いです。

これはどちらも血中内で少なくなる時間は同じですが、タンパク質と結合してより長く効果を発揮するのがフェブリクですが、XORに対しての結合はトピロリックの方が強い、という違いがあります。 尿酸を下げる効果はほぼ同じですが、トピロリックは高容量で腎臓からでる蛋白を減らす効果が示されています(Efficacy of topiroxostat on albuminuria in hyperuricemic patients with diabetic nephropathy (ETUDE study): a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. 2014年) また動脈硬化を予防する効果が示されています(基礎研究ではEffects of Xanthine Oxidoreductase Inhibitors on Reactive Oxygen Species Produced In Vitro from Xanthine Oxidase. 2019. と 実際の人間のデータでは、The Effects of Topiroxostat, a Selective Xanthine Oxidoreductase Inhibitor, on Arterial Stiffness in Hyperuricemic Patients with Liver Dysfunction: A Sub-Analysis of the BEYOND-UA Study .2022)
これはフェブリクにはない効果です。 しかしフェブリクは1日一回で24時間後のXORとの結合率がトピロリックよりも高い、という利点があります。

このような違いは、XORに対する両者の結合の違いから生じるものだとされています。 ものすごく噛み砕いて言うと、フェブリクは マグネットシート、トピロリックは強力なステッカー と言う違いです。 24時間経った時に、フェブリクは磁石で緩くくっついているので、少ししか剥がれない。 トピロリックは強力にくっつくけども、剥がれるともう一度張り付きにくい、と言う例えになります。

理論上は尿酸が低く安定している人には動脈硬化予防が証明されているトピロリックがいいとされています(現在のところ1日1回での研究がされていないのですが、逆に1日1回で不利益を被る結果も出ていません。今後1日1回で尿酸が低値安定している場合に動脈硬化予防が理論上ではなく、エビデンスとして確立されることが期待されます)  フェブリクは何せ1日1回で尿酸値を十分下げることができる、と言う飲み忘れなどの煩雑さがないことがいい面です。

すでに1日2回の薬を飲んでいて、動脈硬化が強い患者さんにはトピロリック。 飲み忘れが多い方や尿酸値が高い方には即効性があるフェブリク。 といった使い分けも一つの手段です。

(当院のブログは転用禁止です)

#尿酸 #動脈硬化

私は常々、医師の説明が不十分で患者さんが本当に納得しないまま治療が進むと、思うように成果が出ないと感じてきました。だからこそ、「医学の勉強」は、知識だけでなく、分かりやすい説明をするために日々研鑽を続けています。患者さんが「納得できた」と感じてくださったときには、診療がスムーズに進み、治療の効果も実感しやすい──そんな手応えがあるからです。 逆に自分が治療を受ける側になった時も、説明されずに何をされているのか分からないままだと治療がうまくいかない感じもしています。

この実感を裏付けるエビデンスとして、2015年に発表された『Impact of Shared Decision Making on Patient Outcomes: A Systematic Review』では、患者さん自身が治療の意思決定に参加したと感じられる共有意思決定(SDM:Shared Decision Making)の介入が、治療満足度や自己効力感の向上、服薬遵守や生活習慣の改善、さらに血圧・血糖コントロールなどの臨床指標改善にもつながることが報告されています。

さらに、2023年に報告された『Exploring Critical Components of Physician-Patient Communication』は、医師が患者さんの疑問や不安を適切に聞き出し、専門用語を平易に伝えることで、患者さんの理解度と満足度を著しく高め、セルフマネジメント行動や臨床アウトカム(治療の結果)の向上にも寄与することを示しています。

こうした知見を踏まえ、やはり私は診療に置いては、何よりも患者さんが納得する説明します。説明後には「ここまでで分からないことはありませんか?」と確認し、「次回までに分からなければまた質問してくださいね」と声かけすることも重要だと思っています。 時間がある時には、今現在の私が理解している患者さんの全身の状態を人間の模式図の紙を用意して、どの部分を見ているか、今後どういうふうに治療をしていくのか、などをしていますが、なかなか時間が取れず渡しきれていないのが現状で、今後の課題でもあると思っています。

肺炎球菌ワクチンには、従来のニューモバックスと、近年接種ができるようになったプレベナーの2種類があります。

プレベナーは一回接種すれば再度摂取しなくてもいい、とされていますが、その理由はニューモバックスと違い、強い免疫を作る効果があるからです。

プレベナーについては1回摂取したらもう一度プレベナーを摂取しなくてもいいという報告があります(What is the new recommendation for 13-valent pneumococcal vaccine in elderly adults? 2020年の論文です。この論文ではニューモバックスを摂取していた人は同じくニューモバックスを続けることを推奨しています)

どちらがいいか? これは非常に難しいことですが、強く免疫が作れることから、プレベナーを以前ニューモバックスを摂取していても選択した方がいいように思われますが、様々な報告があるため明確な正解はありません。 私見ですが、プレベナーを摂取し、次(5年後)はニューモバックスを摂取するのが免疫が強くなるのでいいと思われます これは補助金を使って摂取する場合の話になります。

帯状疱疹ワクチンには、(弱毒化)生ワクチンのゾスタバックスと、不活化ワクチン(厳密には組み替えサブユニットワクチンです。季節性のインフルエンザワクチンが不活化ワクチンです)のシングリットの2つがあります。

どちらがいいか? の問いに対する私の意見ですが、シングリット1択です。なので当院ではゾスタバックスは置いていません。

理由としては、「有効性」「持続性」「推奨度(ACPI(米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病対策センター)傘下の 「予防接種実践諮問委員会」(Advisory Committee on Immunization Practices)の略称です)などで第一選択となっています)」の3点があるからです。 デメリットは金額が高め、ということや、間隔をあけて2回打つこと、となります。 以下に表にまとめたものを示します。

生ワクチン 組換えサブユニットワクチン
ゾスタバックス シングリット
接種回数 1回 2回(0ヶ月と2~6ヶ月後)
リアルワールド(市販後の結果) 10年後には 発症リスクは15% 2年後で発症リスクは70%
帯状疱疹発症予防 効果 51%低減 50–59歳で96.6%低減、≥70歳で91.3%低減
PHN(帯状疱疹後神経痛)予防効果 66.5%低減 88.8%低減
持続性 3~4年で効果減弱 4年以上高い有効性が持続(7年までデータあり)
安全性/忍容性 接種部位反応少ない 接種部位疼痛・発熱など反応性高め(70%以上)だが一過性
推奨度 ACIPで「第一選択」

肺炎球菌ワクチンと同日に接種してもいいか? ですが、基本問題はありません。 同じ場所に注射をしないことが前提です。 しかし、やや副反応が強くでる可能性は示唆されています。

同日に2つのワクチンを打つのに抵抗がある場合は1-2週間明けて打つのがいいでしょう。

当院では頸動脈エコーも甲状腺エコーもどちらもしますが、頸動脈エコー時に偶然甲状腺が見え、経過を見た方がいいような場合があります。 エコー機器の設定を変えなければいけないので別の時に甲状腺のエコーをすることになることもあります。

ただ、頸動脈エコー時に見えた甲状腺結節は機器の設定を変えてもサイズは同じだった、という報告もあるため(The significance of incidental thyroid abnormalities identified during carotid duplex ultrasonography, 2005年の論文です)、小さな結節なら次回の頸動脈エコー時に「ついでに」甲状腺も見ておきましょう、ということもあります。

偶然見える確率についても論文が私が調べた範囲では少数ですが複数あり、1%から45%まで幅が大きなものでした。傾向としては多施設(大きな病院が持ち寄ったデータ)の研究や人間DOCでの報告では低め(Prevalence of Thyroid Incidentalomas from 1995 to 2016: A Single-Center, Retrospective Cohort Study, 2019年の論文で0.84%の指摘率)、単施設(1つの病院でした研究結果)では見つかる可能性が高い傾向(The Significance of Incidental Thyroid Abnormalities Identified during Carotid Duplex Ultrasonography, 2005年の論文で9.4%で偶然甲状腺結節が指摘された結果)があります。 この理由についてまとめた報告はありませんでしたが、おそらく大きな病院で血管を見ている検査なので甲状腺までは見ない決まりがあったり、DOCなどでは評価項目に入っていないのでレポートに書く欄がない可能性があると思います。 大体まとめると10-15%で頸動脈エコー時に甲状腺結節が見つかる可能性があるようです(CT検査などはもっと高確率)

頸動脈エコー時では甲状腺結節の大きさは甲状腺エコーと同じ精度、とされていますが、悪精度(癌の疑いがある所見)は大きさだけではないため、頸動脈エコーやCT検査で「偶然」見つかった甲状腺の疾患は甲状腺エコーをした方が良さそうです(偶然見つかった甲状腺結節について経過をみた結果10%未満で組織をとる検査をすることになった、という報告もあるからです)