循環器内科医であれば、心臓や腎臓の保護効果がある、フォシーガ(ただし10mgという高容量)、ジャディアンスを選択し、そして糖尿病があればカナグルも視野に入れて処方というところだと思います。 逆にフォシーガ高容量とジャディアンス以外は循環器内科医としては使いにくい、というわけです。

ただ、フィルムで内服しなくてもいい、ルセフィは皮膚への移行性が他剤と比べて有意に低く、安全に使えるため使用することがあります。

しかしスーグラは皮膚への移行性だけでなく、停滞性が有意に認められ、重篤な粘膜・皮膚障害を起こすことが証明されている報告もあるので、私は使用しません。

薬剤名 調整後ROR(95%CI) 有意性
イプラグリフロジン 1.667 (1.415–1.963) 有意(CI下限 >1)
ダパグリフロジン 0.514 (0.317–0.835) 非有意(CI下限 <1)
トホグリフロジン 0.149 (0.048–0.465) 非有意
ルセオグリフロジン 0.624 (0.331–1.177) 非有意
カナグリフロジン 0.590 (0.277–1.257) 非有意
エンパグリフロジン 0.293 (0.073–1.187) 非有意

Susceptibility to serious skin and subcutaneous tissue disorders and skin tissue distribution of sodium-dependent glucose co-transporter type 2 (SGLT2) inhibitors (2018年の論文です、イプラグリフロジンがスーグラです)

さらに、2018年の論文ですが、24時間後の皮膚停滞率がスーグラだけが有意にあり、他の薬剤では皮膚移行性はあっても停滞はほぼないとされ、ルセフィだけは皮膚移行性すらほぼない、という結果がでています(動物実験ではなく、ヒトでの研究です)
Susceptibility to serious skin and subcutaneous tissue disorders and skin tissue distribution of SGLT2 inhibitors

一般的な健診では、肝臓の数値(GOT(AST))とその正常上限、また血小板の値が記されていることが多いと思います。

APRI(エープリと呼びます)は、AST to Platelet Ratio Index の略で、これを用いて、肝臓の繊維化度合い(肝障害)や、肝硬変になっていないかを自分で健診結果から算出できます。

(APRIは2003年に初めて論文で報告されています(A simple noninvasive index can predict both significant fibrosis and cirrhosis in patients with chronic hepatitis C.)

APRIは自分のASTの値を、その健診のASTの正常上限値で割り算します。 そして血小板数が20となっていれば、200と10倍にして、上記の数値をさらに割り算し、最終的に100を掛けた数値です。

この値が0.5未満なら肝障害(肝臓の繊維化)の可能性は低く、0.5から1.5未満なら肝臓の繊維化(肝障害)が強く示唆されるため、医療機関で追加の検査がを検討するべきで、1.5以上は高度の肝臓繊維化(高度肝障害)や肝硬変の可能性(感度約70%、特異度約80%)が強く示唆されますので医療機関を受診することが必須です。(ちなみに2.0以上は肝硬変の可能性が極めて高い数値です(感度46%、特異度約91%))

P.S(追記) 感度、特異度は聞き慣れない言葉だと思うので、参考にしてください。

感度(Sensitivity)
 病気の人を見逃さずに陽性と判定できる割合。たとえば、100人の病気の方が検査を受けたとき、感度80%の検査なら80人を正しく「陽性」と判断し、20人をうっかり「陰性」としてしまうイメージです。
病気を見逃すリスク(偽陰性)をどれだけ減らせるかを示す指標ということになります。

特異度(Specificity)
 病気でない人を正しく陰性と判定できる割合。
100人の健康な方に検査をした場合、特異度90%の検査なら90人を「陰性」と判断し、10人を誤って「陽性」としてしまうイメージです。
健康な方を誤って病気と判断してしまうリスク(偽陽性)をどれだけ減らせるかを示す指標となります。

私自身は自分の経験から「強い痛みに耐え抜く修行と思うしかない」から麻酔で「寝て起きたら終わっていた」ということからも、麻酔をして大腸カメラをすることを推奨しています。 これは自分の経験からでなく、盲腸までの到達率、ポリープの見逃しにくさが麻酔をして大腸カメラをすることで上昇することも論文として出されています。 なので基本的には麻酔を進めていますが、起きておきたい、車にその日どうしても乗る、などの場合は選択できるようにしています。

私は大腸カメラを福田心臓・消化器内科で火曜日午後にしています。 私以外にも大学病院から久米先生が金曜日午後に来ているので、久米先生は基本的に麻酔をかけないので、そういう選び方もできます。

私は、私自身が考案した患者さんのお腹を介助者(看護師)が押さない方法、でしています。 お腹を押される不快感がない、介助者も押す力が必要なく、また介助者の技量に左右されない、という利点があります。 統計なども取り、従来の方法でしていた頃よりもいい結果がでています。

「お酒を飲むとすぐ顔が赤くなるんです」
――そんな体質の方、実はがんのリスクが高いことをご存じですか?特に、食道がん・咽頭がんは「アルコールフラッシャー体質」の方に多く、
無症状のまま進行してしまうこともあります。

ヘリコバクターピロリ菌がいなくて、胃のバリウム検査(私はバリウム検査否定派ですが)が問題なしだった、は胃がんの可能性は低い、というだけで、決して胃がんにならないわけでもないし、胃と食道の境目や食道癌にはバリウム検査は不向きです。

アルコールフラッシャー体質とは?

お酒を飲んだ時に、顔が真っ赤になってしまう人がいます。
これは「酔いやすい」ではなく、体質による代謝異常です。

この体質の方は、ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)という酵素の働きが弱いため、
お酒の分解過程でできるアセトアルデヒド
という有害物質を体に溜めやすいのです。

このアセトアルデヒドが発がん物質であり、
食道や咽頭、口腔などのがんリスクを上昇させます。

日本人に多い“がんハイリスク体質”

実はこの体質、日本人の**約40〜50%**が該当すると言われています。
そしてこの体質の人が、飲酒を続けると、非喫煙者よりも数倍も食道がんのリスクが高くなることが分かっています。

さらに、タバコを吸う方や、家族にがん歴がある方は、リスクがさらに上乗せされます。

フラッシャー体質こそ「胃カメラ」が必要な理由

胃カメラ(上部内視鏡)は、胃を見るだけの検査ではありません。
咽頭・食道・胃・十二指腸の粘膜全体を観察する重要な検査です。

特に内視鏡の最新機能(色を緑色にして癌をみやすくする機能)を用いれば、
早期の食道がん・咽頭がんを高精度で発見
できます。

がんは早期発見が命を救います。
フラッシャー体質の方こそ、年に1回の内視鏡検査が理にかなっているのです。

追記)日本酒一合で顔が赤くなる人は フラッシャー体質の可能性が極めてたかい(約80%)。 (ALDH2の測定は一部の医療機関でしか測定できず、また自費になります)

エタノール(酒)
↓ ADH(アルコール脱水素酵素)
アセトアルデヒド(有害、発がん性)
↓ ALDH2(主に肝臓のミトコンドリアに存在)
酢酸(無害)

という流れです。

心房細動という定義は持続時間が30秒以上、とされています(2018年のアメリカ心臓協会(AHA:American Heart Association)など) この定義は最新の研究結果として、EHRA(欧州不整脈学会)/HRS(米国不整脈学会)/APHRS(アジア太平洋不整脈学会)/LAHRS(ラテンアメリカ不整脈学会)が合同で2010年代から変わらず、2024年でも公式な見解として出しています。 この30秒という定義は、心房細動のアブレーション治療を受けた後の再発にも用いられます(ただし、治療後90日間は再発とはみなさず、その後の厳格なフォローが必要とされています)

しかし現代でも30秒未満の心房細動は心房細動負荷(AF burden)とされ、明確には記載されていませんが、患者さんの脳梗塞リスクや患者さんの意向を考慮して内服することも検討すべき、というニュアンスで言及されています(Circulationという雑誌に2024年にガイドラインとして記載された論文の一部を抜粋しますと、“In patients with atrial fibrillation (AF), the decision to initiate oral anticoagulation (OAC) therapy should be based on the patient’s risk of stroke as assessed by the CHA₂DS₂-VASc score, regardless of the type or burden of AF.”​ (心房細動のある方にとって、血をサラサラにする薬(抗凝固薬)を始めるかどうかは、心房細動のタイプや出た時間の長さ(心房細動負荷)に関係なく、脳こうそくの危険性をもとに決めます。この危険性は“脳梗塞危険度スコア”という指標で評価します)とされています)

AF burden(心房細動負荷)は30秒未満も含めた超短時間の心房細動がホルター心電図でどのくらいの割合(%)ででているか、を表す指標です。 一つの区切りは0.4%以上だと血をサラサラにする薬(OAC)は、患者さんの背景によって検討されるべき、ということや、4年後に心房細動の定義になっている可能性が極めて高いという報告があります。 もちろん5-10%超えならOACは強く推奨されます。 ちなみに0.1%-0.4%でも推奨度は低いものの、OAC内服は患者さんの意見・考え方はもちろん、脳梗塞リスクによって個人個人によって考えてもいい、とされています。

さらに心エコー図検査指標で、心房機能低下がある場合や、左心房の大きさ なども入れて総合的に判断すべきとされています。

当院ではホルター心電図(だけでなく1週間の心電図を見る装置もあります)を、心房細動があるかないか、だけでなく、最新の知見を持って、将来の予測まで見るようにして説明するようにしています。

※上記のブログ内容はあくまで論文を引用しての内容ですが、今後変わっていくことや、ニュアンスで書かれているようにも(ガイドラインという治療の方針ですが)私には感じたため、全てが正解で正義、とは言い切れない部分もあります。

また上記を含め、当院のブログの引用や転写は禁止させていただいています。