今現在、本の執筆業がひと段落したので、論文を書いている。 その際に過去の論文をみて参考にしたり、引用したりするのだが、自分の結果と違っていたり、以前とは結果が全く違う論文が存在する。

そう、例えば、「心臓リハビリテーション」の論文は「生命予後を良くする」という論文が多い2000年頃報告の論文のデータは当然1990年代のものを使用しており、なおかつ解析も怪しい。 最近は「生命予後を良くする」という論文と、「生命予後はよくしなかったが、生活の質は明らかによくした」という論文が2:1くらいだろうか。
もちろん、有名雑誌以外では、心リハは最高! としか書かれてないだろうし、人の講演を聞くだけの人はそうとしか思わないだろう。

そんななか、予後はよくしそうだ、生活の質はもちろんよくする、という論文を2018年発表の分で見つけた。 論文は図が命、という先生もいるなか、今までの論文では、「明らかに治療が違うから、退院後の早期から違いがでている」というような図であり、心臓リハビリをしているから、ではなく、リハビリに来た人濃い治療(利尿剤などの微調節)をしているだけであり、最近のいい論文では、長期間でやっと差が出る、というリーズナブル(腑に落ちる)結果であり、「純粋な心リハ」が長生きにいい、と言うには、自分のデータか、有名雑誌ならこの論文しか使えないのではないかと思った次第である。 心リハも変わってきているわけで、1990年代の心リハを受けていた人と、解析の怪しさがある論文と、15〜20年近くたった論文では考察、といって、なんで良かったか、など考え方も違う(ただ、どの程度、どういったことを個別にしたか、について触れた論文は現時点では「ない」)ので、自分で論文を書かないと「怪しいな」と気づかないだろう。
今更、2000年代の論文を引用して、「心リハはいいんですよ」とは私にはとても言えない。

大腸癌検診といえば、容器をもってきてもらい大便に血がついているかどうか、をみる検査です。 実は1回だけか2回ともかで血がついている(陽性)場合で確率は違うのですが、およそ55-70%の方に大腸癌の存在が示唆されています。 大腸癌検診は40歳以上でうけ、50歳以上で大腸癌の方は非常に増える、といわれています。
ちなみに、2018年も、2019年の今現在も高知県の大腸癌検診を受ける方は10%に満たないのです(全国平均と同じです) なので、70%という高い数字になるわけです。 しかも検査が陽性、とでているのに、大腸カメラや大腸CTをうける方は50%とされています。 例えば50%ではなく、全員に検査をすると4%に癌がみつかる、とされています。

前にも書きましたが「2回のうち1回だけが陽性だから、痔かもしれないから、陰性になるまで検査しましょうか」という、医者がいます。 腹立たしく思います。 そうやって言ってしまうと、患者さんは「あっ、大したことないんだ」と思うでしょう。 便の検査はもちろん悪いものがあっても陰性になることもあります。

もし、検査をしても、大腸癌がみつかる可能性は少ないかもしれませんが、ポリープがあれば全部とってもらえばいいのです。 癌の芽をつんでおけばいいのです。

「勧められたけど、何もなかった! お金を損した!」という患者さんもおられるかもしれません。 しかし、陽性の患者さんに大腸カメラをうけた患者さんには4人に1人は癌ではなくても腺腫(ポリープ)がみつかるとされています。 それをとることも大変重要です。 しかも、4%で癌がみつかる確率を多いと見るか少ないとみるか、私は高いと思いますし、1/4で癌の芽をつむこともできることを考えたら、「無駄なことを勧められた」とは自分は思いません。 むしろ、「うけなくていいよ」と言われる方が恐怖です。
もちろん、検査をうけるかどうかは患者さん次第です。 時間、苦痛(大腸CTではほぼありません)、お金、自分で考える確率、などを考えて、後悔しない決定してもらいたいと思います。

治療うや検査をするかどうかを決めるのは患者さん自身です。 ただ、そのためには我々医師が、胃カメラをしましょう、大腸CTかカメラをしましょう、という提案をしないといけないということです。

暑い日もあり、人それぞれ感じ方は違いますが、ここ2−3週間で血圧が高くなる方もおられます。

そういった方は、夏用の薬から 秋〜冬用の薬に変えて処方するようにしています。

夏服と冬服の違い、のようなものです。

夏は暑く、熱を逃がすため血管が拡張するのですが、冬は熱を溜め込むために血管が収縮するため血圧は高くなる傾向があります。

病院で血圧を測定すると、時間帯、緊張の度合い、などから高く出たり、低くでることがあります。 どうしても自宅で測れない方は仕方ありませんが、当院では、自宅早朝の血圧測定を勧めています。

一度も自宅血圧を勧められず処方されるなら、そこでの血圧の薬は「適当」に処方されている可能性もあります。

現在使用されている薬は、レニベースとタナトリル だけではないでしょうか? たまに、コバシルを使っている先生をみかけますが、私は使いません。 薬には添付文書という薬の効能書きがあり、血圧を下げる以外に、レニベースなら慢性心不全の改善、タナトリルなら糖尿病性腎症 に 効果がある、とされていますが、所詮は薬屋さんが無理やりつけた効能ですのであまり気にする必要はないとおもっています。 それよりも論文の数です。 私自身は心不全に多くの論文があるレニベース(副作用の咳も少ない)を飲んでもらいます。 タナトリル は咳の調節にいい(誤嚥時に咳がでる)、という報告があり、誤嚥性肺炎にはいい適応だと思います。

つまり、ARBという似た新しい薬を使わないのなら、心不全に対してはレニベース、誤嚥性肺炎も考えられた場合にはタナトリル がベストなチョイスだと、徳島大学やその関連病院では教えられ、実際に臨床研究にも参加した経緯や論文からどちらも使用していますが、大きな差はない、という論文もあります。 その人にあった薬が望ましい、と思う次第です。

ほぼ原因が喫煙の、COPD(慢性閉塞性肺疾患) ならないためには禁煙です。

論文の紹介になりますが、なってしまったあとは、BODE indexが、低いほど長生きすることが証明されています。 実はCOPDの患者さんでは呼吸機能だけ、よりも大事なことがあるのです。

B:BMI、やせはよくない、ということです。

O:degree of Obstruction、気流の閉塞度です。「吐く力のことです」

D:Dyspnea(息切れ)、MRC息切れスケールで点数をつけます

E:Exercise capacity、運動能力(体力)

つまり、栄養状態を良くし、吸入薬や内服薬では吐く力をつよめ、DとEに対してはリハビリが重要です。

近年、欧米と同じくアジア諸国でも痩せてない(ここで重要なのは筋力はなく、サルコペニア肥満、になっているということです)COPD患者さんが増えているので、栄養状態、リハビリはそういった方にも効果があります。

また、COPD患者さんには24%に心疾患の合併があるという論文もあります。 安易に呼吸器科だけで、肺疾患だけ、ということにならないように、息切れのメインは心不全、という症例が多く隠れている場合があります。