私は常々、医師の説明が不十分で患者さんが本当に納得しないまま治療が進むと、思うように成果が出ないと感じてきました。だからこそ、「医学の勉強」は、知識だけでなく、分かりやすい説明をするために日々研鑽を続けています。患者さんが「納得できた」と感じてくださったときには、診療がスムーズに進み、治療の効果も実感しやすい──そんな手応えがあるからです。 逆に自分が治療を受ける側になった時も、説明されずに何をされているのか分からないままだと治療がうまくいかない感じもしています。

この実感を裏付けるエビデンスとして、2015年に発表された『Impact of Shared Decision Making on Patient Outcomes: A Systematic Review』では、患者さん自身が治療の意思決定に参加したと感じられる共有意思決定(SDM:Shared Decision Making)の介入が、治療満足度や自己効力感の向上、服薬遵守や生活習慣の改善、さらに血圧・血糖コントロールなどの臨床指標改善にもつながることが報告されています。

さらに、2023年に報告された『Exploring Critical Components of Physician-Patient Communication』は、医師が患者さんの疑問や不安を適切に聞き出し、専門用語を平易に伝えることで、患者さんの理解度と満足度を著しく高め、セルフマネジメント行動や臨床アウトカム(治療の結果)の向上にも寄与することを示しています。

こうした知見を踏まえ、やはり私は診療に置いては、何よりも患者さんが納得する説明します。説明後には「ここまでで分からないことはありませんか?」と確認し、「次回までに分からなければまた質問してくださいね」と声かけすることも重要だと思っています。 時間がある時には、今現在の私が理解している患者さんの全身の状態を人間の模式図の紙を用意して、どの部分を見ているか、今後どういうふうに治療をしていくのか、などをしていますが、なかなか時間が取れず渡しきれていないのが現状で、今後の課題でもあると思っています。

肺炎球菌ワクチンには、従来のニューモバックスと、近年接種ができるようになったプレベナーの2種類があります。

プレベナーは一回接種すれば再度摂取しなくてもいい、とされていますが、その理由はニューモバックスと違い、強い免疫を作る効果があるからです。

プレベナーについては1回摂取したらもう一度プレベナーを摂取しなくてもいいという報告があります(What is the new recommendation for 13-valent pneumococcal vaccine in elderly adults? 2020年の論文です。この論文ではニューモバックスを摂取していた人は同じくニューモバックスを続けることを推奨しています)

どちらがいいか? これは非常に難しいことですが、強く免疫が作れることから、プレベナーを以前ニューモバックスを摂取していても選択した方がいいように思われますが、様々な報告があるため明確な正解はありません。 私見ですが、プレベナーを摂取し、次(5年後)はニューモバックスを摂取するのが免疫が強くなるのでいいと思われます これは補助金を使って摂取する場合の話になります。

帯状疱疹ワクチンには、(弱毒化)生ワクチンのゾスタバックスと、不活化ワクチン(厳密には組み替えサブユニットワクチンです。季節性のインフルエンザワクチンが不活化ワクチンです)のシングリットの2つがあります。

どちらがいいか? の問いに対する私の意見ですが、シングリット1択です。なので当院ではゾスタバックスは置いていません。

理由としては、「有効性」「持続性」「推奨度(ACPI(米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病対策センター)傘下の 「予防接種実践諮問委員会」(Advisory Committee on Immunization Practices)の略称です)などで第一選択となっています)」の3点があるからです。 デメリットは金額が高め、ということや、間隔をあけて2回打つこと、となります。 以下に表にまとめたものを示します。

生ワクチン 組換えサブユニットワクチン
ゾスタバックス シングリット
接種回数 1回 2回(0ヶ月と2~6ヶ月後)
リアルワールド(市販後の結果) 10年後には 発症リスクは15% 2年後で発症リスクは70%
帯状疱疹発症予防 効果 51%低減 50–59歳で96.6%低減、≥70歳で91.3%低減
PHN(帯状疱疹後神経痛)予防効果 66.5%低減 88.8%低減
持続性 3~4年で効果減弱 4年以上高い有効性が持続(7年までデータあり)
安全性/忍容性 接種部位反応少ない 接種部位疼痛・発熱など反応性高め(70%以上)だが一過性
推奨度 ACIPで「第一選択」

肺炎球菌ワクチンと同日に接種してもいいか? ですが、基本問題はありません。 同じ場所に注射をしないことが前提です。 しかし、やや副反応が強くでる可能性は示唆されています。

同日に2つのワクチンを打つのに抵抗がある場合は1-2週間明けて打つのがいいでしょう。

当院では頸動脈エコーも甲状腺エコーもどちらもしますが、頸動脈エコー時に偶然甲状腺が見え、経過を見た方がいいような場合があります。 エコー機器の設定を変えなければいけないので別の時に甲状腺のエコーをすることになることもあります。

ただ、頸動脈エコー時に見えた甲状腺結節は機器の設定を変えてもサイズは同じだった、という報告もあるため(The significance of incidental thyroid abnormalities identified during carotid duplex ultrasonography, 2005年の論文です)、小さな結節なら次回の頸動脈エコー時に「ついでに」甲状腺も見ておきましょう、ということもあります。

偶然見える確率についても論文が私が調べた範囲では少数ですが複数あり、1%から45%まで幅が大きなものでした。傾向としては多施設(大きな病院が持ち寄ったデータ)の研究や人間DOCでの報告では低め(Prevalence of Thyroid Incidentalomas from 1995 to 2016: A Single-Center, Retrospective Cohort Study, 2019年の論文で0.84%の指摘率)、単施設(1つの病院でした研究結果)では見つかる可能性が高い傾向(The Significance of Incidental Thyroid Abnormalities Identified during Carotid Duplex Ultrasonography, 2005年の論文で9.4%で偶然甲状腺結節が指摘された結果)があります。 この理由についてまとめた報告はありませんでしたが、おそらく大きな病院で血管を見ている検査なので甲状腺までは見ない決まりがあったり、DOCなどでは評価項目に入っていないのでレポートに書く欄がない可能性があると思います。 大体まとめると10-15%で頸動脈エコー時に甲状腺結節が見つかる可能性があるようです(CT検査などはもっと高確率)

頸動脈エコー時では甲状腺結節の大きさは甲状腺エコーと同じ精度、とされていますが、悪精度(癌の疑いがある所見)は大きさだけではないため、頸動脈エコーやCT検査で「偶然」見つかった甲状腺の疾患は甲状腺エコーをした方が良さそうです(偶然見つかった甲状腺結節について経過をみた結果10%未満で組織をとる検査をすることになった、という報告もあるからです)

循環器内科医であれば、心臓や腎臓の保護効果がある、フォシーガ(ただし10mgという高容量)、ジャディアンスを選択し、そして糖尿病があればカナグルも視野に入れて処方というところだと思います。 逆にフォシーガ高容量とジャディアンス以外は循環器内科医としては使いにくい、というわけです。

ただ、フィルムで内服しなくてもいい、ルセフィは皮膚への移行性が他剤と比べて有意に低く、安全に使えるため使用することがあります。

しかしスーグラは皮膚への移行性だけでなく、停滞性が有意に認められ、重篤な粘膜・皮膚障害を起こすことが証明されている報告もあるので、私は使用しません。

薬剤名 調整後ROR(95%CI) 有意性
イプラグリフロジン 1.667 (1.415–1.963) 有意(CI下限 >1)
ダパグリフロジン 0.514 (0.317–0.835) 非有意(CI下限 <1)
トホグリフロジン 0.149 (0.048–0.465) 非有意
ルセオグリフロジン 0.624 (0.331–1.177) 非有意
カナグリフロジン 0.590 (0.277–1.257) 非有意
エンパグリフロジン 0.293 (0.073–1.187) 非有意

Susceptibility to serious skin and subcutaneous tissue disorders and skin tissue distribution of sodium-dependent glucose co-transporter type 2 (SGLT2) inhibitors (2018年の論文です、イプラグリフロジンがスーグラです)

さらに、2018年の論文ですが、24時間後の皮膚停滞率がスーグラだけが有意にあり、他の薬剤では皮膚移行性はあっても停滞はほぼないとされ、ルセフィだけは皮膚移行性すらほぼない、という結果がでています(動物実験ではなく、ヒトでの研究です)
Susceptibility to serious skin and subcutaneous tissue disorders and skin tissue distribution of SGLT2 inhibitors